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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
323/477

323,初めての野営

 パチパチと音を立てる焚火を眺めながら、食器や鍋を片付ける。

 イノシシはリオンとロイに解体されて、毛皮なんかは回収してお肉は適当な大きさに切って運びやすくなっていた。


 それを野営予定地についてすぐに鍋と串焼きにしたのだけれど、鍋も串焼きもおかわりを要求されて肉は全て無くなった。

 まさか一食でなくなるなんて思ってなかったんだけど……リオンだけじゃなくロイもシャムも結構食べてたからね。


 ちなみに串焼きの棒は、金属製のものをウラハねえがくれたのでそれを使っている。

 何度も使えるし、金属だから熱湯消毒やりやすくてとても使いやすい。

 ウラハねえが昔まとめて買った物らしくって、十二本あるんだよね。専用のケースもあって、それも貰った。


「……よし」

「何度見ても綺麗な収まり具合……」

「いいでしょ」

「うん!」


 鍋の中に綺麗に収まるお椀は私もお気に入りだ。

 セットで買ったのかと思うほどのフィット感だからね。

 それを纏めて入れる袋には、外側に鍋を吊るす支えを収納できる部分が付いている。


「夜の番は俺がやるから寝ていいぞ」

「いいの?」

「おう。どうせ目ぇ冴えて寝れねえし」


 荷物を纏め終えたところで、リオンが薪を追加しながら寝るように促してきた。

 ロイにも言われたので、大人しく外套にくるまって荷物を枕に横になる。

 シャムが横に来たのでくっ付いて目を閉じると、前の日にあまりしっかり寝れていなかったからかすぐに意識が落ちた。



 外が明るくなったのを感じて目を開けると、ちょうど日が昇ったところだった。

 欠伸を零しながら身体を起こして、ボーっとしながら杖を手繰り寄せていたら木に寄りかかってこっちを見ていたリオンと目が合う。


「……おはよ」

「おう、おはよ。お前ほんと起きんの早ぇな」

「んー……リオンずっと起きてたの?」

「まあな。流石にねみぃわ」

「寝ていいよー。私起きたし」


 軽く目を擦り、杖を緩く振って水を作る。

 顔を洗って……ついでに頭も突っ込んで洗ってしまう。流石に気になるからね。

 水を消したら風を起こして、濡れた髪が絡まないように乾かして一つに纏めていたら目も覚めた。


 朝ご飯にはまだちょっと早いだろうから、お茶でも淹れてようかな。

 実は茶葉もちょっとだけど持ってきてるんだよね。ティーポットとかは流石にないので、鍋で煮出してカップに注ぐときに茶葉を取り除くことになる。


「おはようセルリア。いい香りだね」

「おはようロイ。飲む?」

「うん。ありがとう」


 ロイにカップを渡して、残りは別のカップに注いで蓋をして置いておく。

 シャムが起きたら飲むかな?飲まないようなら私が飲むから、とりあえず置いておこう。

 鍋はこの後朝ご飯を作るのに使うので、魔法で洗って乾かしておく。


「リオンは寝てる?」

「うん、多分。私が起きた時に交代した」

「そっか」


 時計を開いて時間を確認したら、まだ七時前だった。

 寝ている二人を起こさないように小声で話しながらお茶を飲み、先に今日の予定を聞いておく。


「あとはもう真っすぐヘリオトロープまで進むだけだね。昼頃には着くと思うよ」

「もう結構近いんだ?」

「うん」

「方向は……あっち?」

「大体は合ってる。強いて言うならもう少し右かな」


 なるほど、あっちか。

 ヘリオトロープに着いたらとりあえず宿を探して、その後は着いてから考える感じらしい。

 買い物に出てもいいし、買い物は明日に回して宿でゆっくりしてもいい。


「着いた時にどれくらい体力が残ってるかで考えればいいよ。宿に着いた瞬間急に力が抜ける、とかもあるかもしれないからね」

「なるほど。確かにずっと緊張状態だもんねぇ」

「リオンはそのまま寝るかもしれないし」

「それは確かに」


 なんだかんだ一番ちゃんと寝れてないのはリオンだからなぁ。

 夜の間は起きてて周りを警戒してくれてるわけだし、昼間は移動しないとだから休めないし。

 リオンが寝てる間に終わらせられることは終わらせるくらいの方がいいんだろうか。……いやでも、リオン街の散策とか好きだからなぁ。


 まあ、それこそ着いてから決めればいいことか。

 リオンは旅慣れてるし、普通に夜まで起きてそうな気もするしね。

 それに、そんなこと言ったら私が一番慣れていないから最初に潰れる気もする。


「……うし、朝ごはん作るかー」

「何か手伝おうか?」

「ううん、大丈夫。ただ、私は料理に集中して回りの確認はしてないので……警戒だけ、お願い」

「分かった」


 時計を確認して朝ごはんの支度を始めることにした。

 とりあえず鍋に水を入れて火にかけて、沸騰したら具材を入れて煮込んでいく。

 スープを味見して調味料を追加していたらシャムとリオンが目を覚まし、出来上がった朝食に寄って来る。


 シャムは淹れてあったお茶をのんびり飲んでいるようだけど、リオンは寝起きでこれ食べるのか……まあ、食べると思ってたけど。

 寝起きと言っても仮眠程度だし、それも一時間くらいだもんね。お腹も空いてるか。


「出来たけど、すぐ食べる?」

「食う」

「ほい。熱いからねー」

「おう、あんがと」


 中身の入った器とスプーンをリオンとロイに渡し、鍋を火から避けてリオンの方に置いておく。

 自分の分は既によそってあるので冷ましながらちまちまと口に運ぶ。

 さっきまで火にかけていた熱々のスープを、リオンは当然のように飲んでいる。私は特別猫舌じゃないはずなので、リオンの熱耐性がやたらと高いんだろうなぁ。


「私も食べるー」

「お。珍しい」


 ボーっとお茶を飲んでいたシャムが珍しく朝ご飯を所望しているので、軽めによそって器を渡す。

 学校と違って時間制限はないから、ゆっくり食べておくれ。

 なんてやっている間に残りの鍋の中身をリオンとロイが食べつくしていて、空の鍋が渡された。


「「おかわり」」

「そんな声を揃えて……朝から腹ペコかー?」


 荷物になるからこの大きさの鍋がいいって思ってたけど、大きい鍋買った方がいいかもなぁ。


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