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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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316,美味しい物の共有

 空を見上げて、吹いてきた風にちょっと魔力を乗せて学校内で動く人をなんとなーくで見て回る。

 あ、先生にバレた。ごめんなさいやめまーす。

 なんてやっていたらロイとシャムが歩いてきたので、杖で地面を叩いて魔法は全部霧散させる。


「おはよーセルちゃん!」

「おはようシャム」

「何かしたの?」

「風が吹いてきたからちょっとね。見つかったからやめた」


 あとはリオンだけだけど……まあ、そろそろ来るでしょ。

 一応時計を取り出して時間を確認していたら、シャムが腕に抱き着いてきた。

 おお、急に来たなぁ。ニアと違ってそんなに強い力で来ないから、よろめいたりはしない。


「お?セルちゃん何か持ってる?」

「うん。今日出店リコリス来てるから、ちょっと渡そうかと思って」

「そっかそっか」

「おーっす。何してんだー?」

「あ、おはようリオン」

「おはよー。今日リコリス寄ってから行っていいー?」

「いいぞー」

「よし、行こうか」


 話している間にリオンも起きてきたので、そのまま学校を出てギルドを目指す。

 多分道中で出店リコリスが見つかるだろうから、見つけたら寄って行こう。

 ちなみに学校外活動の書類は図書館から一度部屋に戻る前にロイが書いてくれたので、シャムとリオンは見てすらいなかったりする。


「あっ!あれリコリスじゃない?」

「お、本当だ」


 そのうち見ることも書くこともあるでしょうとか思っていたら、シャムが大通りの端をのんびり進んでいる出店リコリスを見つけてくれた。

 薄く風を飛ばせば、コガネ兄さんがすぐに気付いてリコリスが止まったので、駆け足で寄っていく。


「よぉセル」

「やっほートマリ兄さん」

「こんにちはー」


 トマリ兄さんに軽く手を振って、出店の正面に回った。

 いつも通り座っていたコガネ兄さんにも手を振ると軽く頭を撫でられたので、一旦されるがままになっておく。


「どうしたんだセルリア」

「えっとね、これ」

「ん?蜂蜜?」

「そう。アリアナがくれたやつ。二瓶入ってて、美味しかったからお裾分け」


 紙袋の中には淹れて美味しかったお茶を書いた紙も入れておいたので、家でも楽しんでほしい。

 最初に飲んだ時に美味しくてテンション上がって、これはウラハねえとアオイ姉さまも絶対好きなやつだ!ってなったんだよね。


「そうか。ありがとう」

「うん」

「これからクエストか?」

「そだよー」

「ポーションの数は?」

「五本。いつも通り」


 私がコガネ兄さんと話している間、リオンとロイはトマリ兄さんの方に行っていた。

 シャムは私の横で蜂蜜に興味ありげにしていたので、今度部屋おいで、と誘っておく。

 今日は特に買い物もないのでこれでリコリスでの用事は終わり、続いてギルドに向かう。


 ギルドの中にはそれなりに人がいて、逸れない様に一塊になってクエストボードを見上げる。

 何かいいクエストがあるかなぁーとぼんやり見上げて、人が居すぎて見えなかったので諦めてリオンの服の裾を弄って遊ぶ。


「なんだー?」

「見えないから適当にいいの探して」

「おー」


 シャムも諦めたみたいで、私の手とロイの服の裾を掴んでどこかを眺めている。

 ……もう先に離脱してようかな。ちょっと離れたところで見てる方がいい気がしてきた。

 そんなことを考え始めたところでロイが紙を一枚掴んで離脱を促してきたので人混みから離れる。


「なに取ったの?」

「トータモスの討伐。多分行けるんじゃないかな?」

「トータモスってどれだ?」

「亀だよ。苔生えてるやつ」

「……ああ、あれか」


 トータモスはものすごくでかい亀形の魔物だ。

 基本的に草食で人を襲ったりはしないんだけど、何せでかいのでうっかり森を全部食べたりした事例があるらしい。


 甲羅はとても硬く、大きい個体になればなるほど強度は増す。

 でもまあ、頑張れば砕くことは出来るだろうし、多分リオンなら普通に割るよなぁって感じだ。

 ロイはその辺も考えて取ってきたのかな。相手するの面倒だからって残ってたクエストみたいだし、ちょうどいいかもしれない。


「セルリアの風の槍で砕けると思うよ」

「ダンジョンよりは柔らかいかな?」

「流石にダンジョンより硬い魔物は中々いないよ」

「じゃあ確認にちょうどいいかぁ」


 仮パーティーの手続きをして、クエストを受注してフォーンの外に出る。

 向かう先はイピリアの方。森には近付かず、平原を進んで討伐依頼の出ているトータモスが居る泉を目指す。


「どっちだ?」

「あっちじゃない?」

「こっちだよ」

「そっちかぁ」


 私とリオンは行き先をちゃんと認識しているわけではないので、先に門を出たくせに方向が分からないという事件がよく起きる。

 分かってないことは分かってるので、基本的にあまり遠くまでは行かないんだけどね。


 風で索敵をしつつのんびりと進み、先導しているシャムがリオンと何か話している様子を眺める。

 冒険者活動中は、私はロイと、シャムはリオンといることが多い。

 戦闘職と研究職がそれぞれ固まると非常時に良くないってのがあって、それと同じ理由で魔法使いもバラしたら必然的にこうなるんだよね。


 まあ、関係なく四人で固まってることも多いんだけどさ。

 ……それにしても元気だなぁ。なーにしてんだろ。


「あっ。走り出した!ロイ!」

「あはは。追いかけようか」


 何を思ったのか二人が急に走り出したので、ロイに声をかけて追いかける。

 ついでに追い風も吹かせて速度を上げ、追いついたところで風を止めた。


「意味もなく急に走るなー」

「セルちゃん速いー!」


 一応理由を聞いておいたら、なんか走りたくなったと声を揃えられて笑ってしまった。

 この後に戦闘するんだから無駄に疲れることするんじゃないよ全く。


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