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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
315/477

315,出発前の時間

 杖を揺らしながら廊下を進み、食堂に入って朝食を適当に選ぶ。

 なんかまた新しいお茶が置いてあるなぁ。これ持ってってみよう。

 いつも通り一限に間に合うように起きたけれど、別に一限参加予定無いんだよねぇ。


 ヴィレイ先生が早速渡した受けたい授業リストの授業日程をくれたからそれも眺めてたけど、今日は全部関係ない日だしなぁ。

 考えながらパンを千切り、欠片も口に放り込む。


「ん、おはようロイ」

「おはようセルリア。何か考え事?」

「んー……去年選択で取れなかった授業の日程貰ったから、どのタイミングで出ようかなーって」

「なるほどね」


 今日は学校外活動の書類を一回書いてみよう、ってことで冒険者活動に出る予定になっている。

 いきなり行動範囲を広げるのは何かと危なさそうだから、じわじわ広げていこうって話になったんだよね。


 ちなみに当然のように四人行動の予定を組んでいる。

 全員最初っからそのつもりだったんだよね。まあ、そのうち慣れてきたら別行動も取るとは思うけど、遠出は四人でするだろうしなぁ。


「慣れてきたら一限出てから外活動とか出来そうだよね」

「そうだね、出る時間的に一限だけなら……うん、いけるな」


 シャムとリオンが朝早すぎると駄目なので、何か出たい授業が一限にあったら出てきたらちょうど良さそうだ。

 制服から着替える手間はあるけどそれくらいだし、時間余ると暇だからね。


 話しながら朝食を食べ終えて、移動していく人を眺める。

 去年までならこのまま教室に行くんだけど、行くべき教室が無いからね。

 シャムは起きてこなかったけど多分今年からはこれが普通になるんだろうなぁ。


「はぁ……図書館でも行こうかなぁ」

「……僕この後魔法回路の提出課題やるけど、一緒にやる?」

「え、やる。そんなのあるんだ」

「研究職は冒険者登録してない人も多いからね。その補填らしいよ」

「なるほどー」


 戦闘職は何だかんだほとんど皆冒険者登録してるしそれなりの頻度で活動してるからなぁ。

 それにしても、魔法回路か。実はちゃんとやったことないんだよね。

 姉さまの知り合いに一人本職の人がいるけど……たまにしか会わないしそもそも回路弄ってるところは見たことないな。


 ジーブさんはリコリスには魔石の魔力補充と特殊な薬を買いに来てるだけだからね。

 うちには魔法回路を弄る設備はないからなぁ。ジーブさんが魔法回路を弄っているところを見たければ彼の住まいである第六大陸の常冬の地までいかないといけない。


 そのうち何かしらで用事が出来れば行くこともあるだろうけれど、そうでなければ行くことのない土地だ。あそこはただ遊びに行くにはちょっと危険だからね。

 雪の中を移動するのは何かと大変だ。コガネ姉さんを見失うし、トマリ兄さんは眩しいって言って出てこなくなる。


「そろそろ行こうか?」

「うん」


 人がほとんど居なくなった食堂を出て、そのまま図書館へ向かう。

 普段図書館に行く時って一人だから、誰かと行くのはちょっと新鮮だ。

 研究職組が複数人で調べものをしているのは時々見かけるから、ロイはよくやるんだろうなぁ。


「お?お前ら何してんのー?」

「グラル先生。おはようございます」

「おはようございます。リオン達が起きるまで図書館で課題です」

「なるほど、朝強い真面目組なのね。今日は冒険者活動?」

「はい」

「そっか。気を付けていけー」

「はーい」


 廊下で先生とすれ違い、一年生の実技っていつから始まるんだっけなぁとぼんやり考える。

 一週間とかだっけか。今年も急に知らん人と組まされてゴーレムと戦うことになるんだろうね。

 あれ本当に心臓に悪いからなぁ。まあ、その流れでミーファと仲良くなったりはしたんだけどさ。


「……研究職って林の前に埋まってるゴーレム見たことある?」

「あー……ゴーレムの仕組みとか、魔法歴史とかで出てきた時に見に行ったりしたかな。あと、壊れたゴーレム分解して中の回路調べたりもした」

「なにそれ楽しそう……私たちあれと戦う事しかなかったのに……」

「戦うのはちょっと大変そうだね」

「一年生の時がほとんどだから、そんなに強くはないよ。多分調整されてる」


 ヴィレイ先生が起動させたゴーレムも一回くらい見てみたいよなぁ。

 でもそれって学校の防衛機能を使う時ってことだから、起こらない方がいい出来事なんだよね。

 

「んー……どうにか言いくるめたらやってくれないかなぁ……」

「何が?」

「ヴィレイ先生が起動させればゴーレムもフルパワーが見れるはず……」

「ああ、なるほど」


 見てみたくない?とロイに話題を振ったら、見たい……と思ったより興味ありげな返事が返ってきた。

 これは……ロイが居れば何かしらいい案が出るのでは。


「……普通にセルリアが頼んだら見せてくれるんじゃないかな?」

「えー。必要が無いとか言われるよ多分」

「片付けを人質に取れば……」

「行けるかもしれない……今度やってみよ」


 まさかこんなところで私がヴィレイ先生の準備室を片付けていた事が便利に使えるなんて。

 駄目だったら本気で片付けをバックレれば、他の起動できる先生がやってくれそうな気すらする。

 だって先生たちも私にあの部屋の片付け頼んでくるもんね。


 なんて話しながら図書館に入り、カウンターにいるレースさんに手を振っておくのテーブルスペースに向かう。

 ロイが抱えていた課題を机に置いて、そのうちの一枚を渡してきた。


 どうやらこれが魔法回路の課題の詳細らしい。

 課題の紙に書いてある回路が何の回路であるかを解答するのと、二枚目の紙に書いてある効果を持つ回路を文章で解答するの。

 ……ふーん、なんかよく分からないね。私魔法回路やってないしね。


「D魔道具で遊んでる時も、魔法回路は混線してるかどうかくらいしか分からなかったんだよねぇ」

「混線が分かるのは便利だけどね」

「重宝されてます」


 今でもたまに遊びに行くので、そのたびに魔視で混線を探している。

 なんかもう、後輩たちは私の事を混線探すのに先生が呼んだ魔法使い、くらいの認識をしているっぽいしね。


「これ何からするの?」

「とりあえず、回路の説明からかな。セルリア、魔法陣の本を探してきてくれる?僕は回路の本を探してくる」

「はーい。魔法陣の本、なんでもいいの?」

「なるべく色々載ってるのがいいかな」

「分かった」


 魔法陣の本も必要なんだなぁ。

 詳しいことは多分書きながら教えてくれると思うから、とりあえず魔法陣の本探してこよ。

 それで興味が湧いてきたら、ちょっと本気でやってみてもいいかもしれないな。


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