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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
310/477

310,早めの寮帰還

 荷物を確認して、中に謎のものが混入していないかを確かめる。

 ついでに置忘れがないかも確認して、鏡の前で服やら髪留めやらも確認して、杖を持って窓から部屋を出た。


 荷物を浮かせて屋根の上を滑るように降り、下に止まっている出店リコリスに荷物を下ろす。

 気付けば早くも休みは終わりに近付いて来ており、学校の寮が開放されたので戻ることにしたのだ。

 今回の休みはシオンにいと第五大陸に行った以外は大陸間の移動はしていないし、かなりのんびり過ごした。


 フォーンには二回ほど遊びに行って、ミーファとソミュールとも会って遊んできた。

 二人はギリギリまでヴェローさんの所に居るだろうから、次に会うのは授業再開の頃だろうな。

 まあ、ミーファは冒険者活動も普通にしてるらしいしギルドで会うかもしれないけど。


 なんて考えながら出店リコリスに乗り込み、見送りに出て来てくれた兄姉たちに手を振って家を出た。その後はいつも通り空を見上げたりボーっとしている間にフォーンについていて、大通りを少し進んだところで荷物を浮かせて出店リコリスから降りる。


「じゃ、行ってきまーす」

「ああ。行ってらっしゃい」


 軽く伸びをしながら大通りを進み、人が多かったのでちょっとわき道に逸れて学校へ向かう。

 杖を揺らしながらのんびり歩いていたら、前からシャムが歩いてきたのが見えた。

 こちらに向かって走ってくるので、ちょっとだけ風を起こして受け止める準備をする。


「セルちゃーん!」

「やっほーシャム。どこか行くところ?」

「ううん、セルちゃんが来るなら今日だろうなって思って迎えに来たの!」


 確かに出店リコリスの出店日程は渡してあるし、それを見れば私が学校に戻ってくる日は一目瞭然なんだよね。確信があったとはいえわざわざ来てくれたのはとても嬉しい。


 シャムを抱きしめ返してぐるっと回り、一緒に学校に向けて歩き出す。

 近況を聞くほど久しぶりでもないのでとりあえずリオンとロイは何かしているのかと聞いてみたら、いつも私が飛んでいる辺りで手合わせをしていると言われた。


「へぇ、リオンとロイが」

「うん。流石にそのままだとリオンの圧勝だから、リオンは槍で重しつけてやってるよ」

「それでやり合えるようになってるのか……」

「なって……る、かな?どうだろ、リオンがちょっと手を抜いてギリギリ?」

「戦闘職でもリオンとやり合える人全然居ないから、研究職でそれだけ出来てれば充分かなぁ」


 話しながら学校に入り、まずは荷物を置きに行くので中央施設で預けていた部屋の鍵を受け取る。

 とりあえず荷物はおくだけでいいか。

 何となく荷物の中からレイピアだけ出してベルトを腰に巻き、杖を持って部屋を出る。


「あっ、セルちゃんのレイピアちゃんと見るの初めてかも」

「そうだっけ?今後は冒険者活動でも持ってようかな」

「いいね、似合う!」


 去年は練習でしか使わなかったレイピアだけど、今年からは戦闘でも使って行きたい。

 メイン運用は難しくても、非常用になら十分使えることはテストで分かったからね。

 休みの間にシオンにいとコガネ姉さんにレイピアの扱いも教わったりしたし、実戦導入もしていいだろうって言ってもらえてるからね。


「おーい」

「おっ。来たか、セル」

「来たよー」

「久しぶりって程でもないね。お疲れ様」

「ロイの方が疲れてない?大丈夫?」


 ロイが地面に座り込んでいたので声をかけたら大丈夫だよと手を振られた。

 単に休憩中だったらしい。リオンはケロッとしてるので、そんなに長い時間やっているわけではないのかな。


「セルもやるか?」

「やるー。レイピアで混ざるからリオン一人ね」

「いいぞー」

「私は見学かなぁ」

「あ、ねえシャム。ヘヴェイト使える?」

「そんなに重くなんないけど使える!」


 私とロイが組んでも、リオンは多分まだまだ余裕なんだよね。

 なのでシャムも巻き込んで三対一にしてしまう。まあ、でも多分平気なんだろうなぁ。

 私が魔法使うとただのリオンとの個人戦だしね。やってるうちにガチになりそうだし、そうなると学校の手合わせ用魔法陣が無いと怖い。


「ヘヴェイトってなんだ?」

「相手の身体を重くする魔法!術者の技量でどんくらい重くなるかが決まるよ」

「へぇー」

「リオン、ソミュールの雷魔法でも普通に動くからなぁ……三対一でも勝てなさそう」

「えっ。私のヘヴェイトくらいじゃどうにもならなそうだね!?」

「いや、あれ普通に痛ぇし動き辛ぇし面倒だぞ」

「受けた側の感想って初めて聞いたかもしれない」


 属性としては無属性魔法になる。妨害系の魔法としては、最初の方で覚える魔法になるかな?

 私は闇魔法の第二種をシオンにいが色々教えてくれたので、ヘヴェイトは無属性魔法で使ってみたいのが出てきた時についでに覚えたんだよね。


 まあ、そんなわけで私も得意な魔法ではない。

 魔法使い、自分が使いたい魔法以外は発動する以上の結果を求めないからね。

 発動したから次の魔法!それも終わったら目的の魔法!って勢いでやってる。


「まあ、負荷かけるくらいにはなるかなぁ……?私の練習にもなるし、やるだけやってみよっか!」

「よっしゃ、やってこーぜー」

「ロイもいける?」

「うん。大丈夫」


 杖を置いて、レイピアを抜いて構える。

 リオンの槍は先端に革製の鞘を付けたまま、ロイの剣は練習用の刃を潰した剣だった。

 ……うん、私だけ何の対策もしてない訳なんだけど、レイピアって鞘つけたままじゃ使えないから抜くしかないんだよね。


 なので、レイピアの先端にモフモフの球を刺してうっかり刺さらないようにしておく。

 このモフモフ、中心は硬いからこれ以上深くは刺さらないんだよね。

 練習の時はつけておくと安心。というか付けないで練習はしようと思わないよね。


「おー……セルちゃんカッコイイ!」

「わーいありがとー」


 キャーっと楽しそうに手を振ってくるシャムに手を振り返して、改めてレイピアを構える。

 とりあえずロイの動きを見ようかと思ったけど、ちょっと疲れてるみたいだから私がガンガン行く方が良さそうかな。


 レイピアで攻めに出る練習ってことでね。

 なんてあれこれ考えつつ、槍を構えるリオンと向かい合う。

 ……さて、どうしようかな。実は槍使ってるリオンと戦うのって初めてなんだよな。


 私が風の槍の威力上げをしてた時に一緒にアガット先生の所に行っていたので使っているところを見たことはあるんだけど、リオンは普段大剣以外使わないからな……

 でもリオンも何だかんだレイピア使ってる私と戦った事は無いのか。


 条件は一応対等、なのかなぁ?なんて考えながら、シャムの魔力がリオンに向かったのを確認してリオンに接近する。槍相手に距離を取りたくはないよね。

 そんなわけで始まった三対一の手合わせは、話を聞きつけたグラル先生がやって来るまで続いた。怒られたわけではないけれど、普通に疲れたのでその時点で今日は終わりにする。

 結果はリオンの独り勝ちだった。流石に一勝も出来なかったのはちょっと悔しい。


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