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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
304/477

304,思考が脳内をグールグル

 ベッドの上でぬいぐるみと膝を抱えて、ボーっと空を見上げる。

 中々に星がきれいな夜だ。シオンにいが貸してくれた星読みの物語を読むにはいい日だな、と思ってその本もベッドに持ってきていたのだけれど、どうにも読書は進まなかったのでサイドテーブルに置いてある。


 私は、星を詠むことは出来ないのだけれど、シオンにいが教えてくれたからいくつかの星だけは見つける事が出来る。

 魔法歌も教えて貰ったんだけど、発動はしなかったんだよね。こればっかりは仕方ないけどちょっと残念。導きの星は、誰であっても導いてはくれるらしいけども。


「……はぁ。駄目だ。寝よ」


 ぼふ、と枕に倒れ込んで、そのままもぞもぞと掛布団を引っ張り上げる。

 猫のぬいぐるみは抱えたままでいいか。昔から割と抱えて寝ていたので、抱えていると落ち着くんだよね。普段は机の上に置いてるけど。


「なんか適当に魔法の練習しようかなー……何がいいかなぁ……」


 考えたくないことをグルグル考えてしまう時は、なんかしらの魔法を練習するのが一番だ。

 集中しないと成功しないし、やってるうちにそっちに集中できるからね。

 読書はちょっとしばらく集中出来なさそうだ。もう何日かしたら落ち着くだろうから、そうしたら読もう。


「水傘は出来るようになったしー……雷はとりあえずひと段落だしー……」


 寝っ転がってダラダラと独り言を呟きながら、明日の予定を考える。

 明日は何にもない日なので、兄姉の誰かしらは暇してると思うし、構ってもらえるだろう。

 魔法、何がいいかなぁ。トマリ兄さん辺り捕まえて闇魔法教えて貰おうかなぁ。


 なんて、考えながらゴロゴロしている間にいつの間にか眠りに落ちていた。

 起きたら朝日が昇っていて、抱えていた猫のぬいぐるみは机の上に移動していたので、誰かが寝ている間に部屋に入ってきてたみたいだ。


「……ふぁ……シオンにいかな……」


 別に誰が入ってこようと気にしないんだけど、夜にわざわざ私の部屋に来るのはシオンにいくらいなので多分そうだろう。

 一応聞いてみようかな、と考えながらクローゼットを開けて適当に服を選んで着替え、一階に降りて朝食の支度をしているウラハねえとモエギお兄ちゃんに声をかける。


「おはようセルちゃん。よく眠れた?」

「おはよー。寝れたー」


 サクラお姉ちゃんが手伝っているので今日は私は特にすることもなさそうだな。

 あれ以上人が増えると流石にちょっと手狭だからね。こういう時は、配膳とかで手が居る時までのんびりしている方がいい。


「おはようシオンにい。昨日私の部屋来たのってシオンにい?」

「せやでー。起こしてもうた?」

「ううん、ぬいぐるみが動かしてあったから」


 起きてはないよ、と告げると手招きされたので、近付いて行ってソファに座る。

 いつのまにやらシオンにいの手にはヘアブラシが握られており、そういえば何にも髪留めを持ってこなかったなぁと気が付いた。


 まあ、家に居る時は割とおろしっぱなしにもしてるから良いんだけどね。

 魔法の練習とかする時に纏めればいいかな。そのままで出来るならこのままにしよう。

 なんて、考えている間に終わるかと思っていたのにシオンにいはまだまだ手を止める様子はない。


「絡まってた?」

「んや?いつも通りサラサラやで」


 じゃあなんでだろう。嫌じゃないから、まあ別にいいんだけどさ。

 私が逃げなかったからか、いつもの倍くらいの時間をかけて髪を梳かし終えたシオンにいはなんだか楽しそうだ。


「何してんだ?」

「あ、おはようトマリ兄さん。今日暇?」

「おぅ」

「何でもいいから闇魔法教えてー」

「雑だな……系統くらい考えとけ」

「はーい」


 マグカップ片手に現れたトマリ兄さんの服の裾を捕まえて、教えてーと雑にねだると今しがた梳かし終わった髪を混ぜるように撫でられた。

 あー!と私の後ろでシオンにいが声を上げているが、トマリ兄さんは流れるように私の手を離させて移動していく。


「おはようセルリア。これから梳かすところ?」

「終わったのをトマリ兄さんに乱されたところだよ。おはようコガネ姉さん」

「おはようコガネ。マスター起こしてきて大丈夫よ」

「分かった」


 続いてコガネ姉さんがやってきて、こちらは優しく頭をポンポンと撫でていく。

 結局髪を梳かしてもらってる間に朝ごはんの支度は全部終わっちゃったな。

 まあ、姉さまが起きてくるまではまだ少しだけ時間があるので配膳くらいは手伝おう。


 量が多いからね、配膳の人数は居れば居るだけ早く終わる。

 そんなわけで大皿を机に運び、お茶を飲むか聞かれたので頷いて自分のカップを棚から出しておく。

 姉さまのカップも出したところでコガネ姉さんが降りてきたので、同じようにお茶を飲むか聞いてカップを出す。


「ふぁ……おはよー」

「おはよう姉さま」

「なんか凄いいい香りするね。お花?」

「お茶じゃないかしら。はいどうぞ」

「ありがとーう」


 ふわっと笑った姉さまは、そのままカップを受け取って自分の椅子に座る。

 今日はもう目が覚めてるみたいだ。私もカップを持って椅子に座り、全員が揃ったので朝食を食べ始めた。


 朝食の時間は全員の今日の予定の確認タイムでもあるので、口いっぱいにサラダを詰め込みつつそれを聞き流す。

 モエギお兄ちゃんが家の中を掃除して回るらしいので、今日は早々に外に出た方が良さそうだ。


 幸い天気はいいし、トマリ兄さんが来るまでは空でも飛んでいようかな。

 その間に教えてほしい系統を考えておこう。トマリ兄さんは闇の第三種だけど、私三種下手なんだよね。そこの補完でもいいんだけど……


 なんて考えている間に朝食は食べ終わって、食器の片付けを手伝ってから杖を持って外に出る。

 風を起こして森の木の頂点辺りまで浮いて、一度クルリと回った。

 ひっくり返って風に乗り、そのまま何度か回って仰向けに落ち着いて、考え事を再開する。


「……どうしよっかなー。テストの話とかしてみようかなー」


 あの時使った闇魔法は第二種だ。シオンにいは闇魔法なら第二種が好きらしく、色々教えてくれたので咄嗟に思いついて実行した。普段使う闇魔法は第一種だし、やっぱり三種の補完が一番かなぁ。


「セル、降りてこい」

「はーい」

「何やるか決まったか?」

「うん。闇の第三種魔法、何でもいいからやってみたいな」


 地上から呼ばれて、すぐに降りていくとトマリ兄さんに軽く頭を撫でられた。

 やりたいことを伝えて、言われた通り杖を構える。さて、形くらいにはなると良いんだけど。


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