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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
30/477

30,何の変哲もない朝の風景

 朝、点灯と共に目を覚まして身支度を済ませ、朝食を食べるために食堂に向かう。

 適当に軽食を持って席につくと、少ししてからロイがやってきた。


「おはよう」

「おはよ。……量多くない?」

「昨日夜までいろいろやってたらお腹空いちゃって」


 ロイはそれほど食べる印象がなかったのだが、普通に育ち盛りの男子であった。

 私の朝食の三倍くらいの量が乗ったトレーを携えて斜め向かいに座ったロイは、躊躇いなくパンを千切っている。


「今日そっちの一限は?」

「魔法の回復分野の基礎。研究職は?」

「ダンジョン基礎」

「楽しそう」


 そんな話をしていたらお茶だけを持って眠そうに歩いてくるシャムを見つけた。

 眠そうではあるが、落とすことはなさそうなので大丈夫だろう。


「……ロイがお腹空かせてる」

「そ。昨日の内容纏めたら遅くなったんだ」

「んぅーん。セルちゃんおはよぉ」

「おはよう。眠そうだね」


 フニャンと笑ったシャムは、お茶を啜りつつロイのトレイを眺めている。

 自分では持ってこなかったのに見ていたらお腹が空いたとかだろうか。


「んあ、リオンだ」

「え、本当だ。起きたんだ」

「なんだよその言い分は。俺だって偶にはちゃんと起きるんだよ」


 そんなことを言いながら持ってきたトレイには誰よりも多い朝食が乗っている。

 その量を今から食べるのは時間的に大丈夫なのか疑問に思ってしまうくらいなのだが。

 まあ、リオンは食べるのも早いので大丈夫なのだろう。


「ロイがそんなに食うの珍しいな」

「みんな言うね。僕そんなに食べない様に見える?」

「だって細いし」

「研究職だし」


 言いながら食後のお茶を啜ると、ロイは何か悩むようにスープを飲み切った。

 そして、何か言いたげにこちらを見てくる。

 何も言わないでこちらを見てくるのは珍しい。どうしたのだろうか。


「……筋肉つけるべき?」

「つけなくていいと思う」

「ロイはそのまま行こう。今後こっちがむさくるしくなりそうだからそのままで」


 シャムと二人で言い募ると、余計に何か言いたげな顔をされた。

 リオンだけは同情のまなざしで肩に手を乗せていた。

 ……分からない。私に分かるのは今の時間くらいだ。


「ところで二人はそれ食べ終わるの?」

「え、時間終わる?」

「あと十分。急げー」

「やべぇ。ちょ、セルお前置いてくなよ!?」

「知らないよ。遅れそうなら置いてくよ」


 自己責任、自己責任。カップに注いだお茶を飲み干して食器を片付ける準備を始めると、リオンが慌て始める。

 ロイはもう食べ終わるようだ。流石朝早かっただけある。


 問題はリオンの方だが、この速度なら間に合うだろう。

 先に行ってもいいけど、置いて行くなと言われたのでもう少し待つことにした。


「荷物持ったの?」

「一回部屋戻るわ」

「……先行っていい?」

「あと二分!」

「二分だけね」


 時計を取り出して二分間を計っているふりをして、ちらっと横目でリオンを窺う。

 本当に、食べるのが早い。ちゃんと噛んでいるのだろうか。

 今度喉に詰まらせたら杖で叩こうと思っているのだが、詰まらせないということは噛んではいるということだと思うけど。


「じゃあ、先に行くね」

「うん。またお昼に」


 研究職の二人が去って行き、それを見送って手を振っている間にリオンは食事を終えたようだ。

 食器を片付けてリオンが荷物を取りに部屋に走るのを見送りつつ、先に一限の教室に向かう。

 どうせ走って追いかけてくるので待つ必要はないだろう。


 なんて思って廊下を歩いていたら、ソミュール運搬中のミーファを見つけた。

 今日も今日とてソミュールは引きずられても気にせず寝息を立てている。


「おはよう」

「あ、おはようセルちゃん!ありがとう!」


 声をかけつつ風でソミュールを浮かせると、ミーファはこちらを見上げてニコーっと笑った。

 授業開始までまだ少し時間があるので、この速度なら大丈夫だろう。

 なんて思っている間に後ろから足音が近付いてきた。


「おはようリオン。今日は起きたんだね」

「さっきまで朝ごはん詰め込んでたんだよ」

「おはよ。ソミュールは今日も起きてねえのな」


 私の横で急停止したリオンはミーファに引きずられるソミュールを見て笑う。

 たとえ寝ていても愛用の枕だけは手放さないソミュールは、話題にされていることも知らずになにやらむにゃむにゃ言っていた。


「セル、時間まだ平気か?」

「このままなら大丈夫。ちょっと急ぐ?」

「急ぐかー。ミーファの荷物持つぜ」

「ありがとー」


 移動中のミーファの荷物は、その場にいた他の人が持っていることが多い。

 理由は単純にミーファはソミュールを運搬しているから。

 義務でもないだろうに毎回しっかり運んでいるので、何となく手伝ってしまうのだ。


 そんなこんなで小走りに移動し、教室に入ってソミュールを席に座らせて落ちないように頭の位置を調整する。

 見慣れた光景なので誰も何も言ってこないのが、改めて考えると少しばかり面白い。


 ミーファはリオンから自分の荷物を受け取って席についており、リオンも朝食をしっかり食べた後で目が覚めているのか授業の準備を進めている。

 私も席に座って授業の道具を取り出し、もう少しだけある時間が暇で杖を弄っていた。


 時間を知らせる鐘が鳴るのと同時に教室に入ってきた先生は、青い目を楽し気に細めて教室内の人数を確認する。

 そのまま持っていた手帳に何か書き込み、それを教壇においてこちらに向き直った。


「さあ、始めましょうか。今日は回復魔法の基礎なので、ちゃんと覚えてね」


 そんな言葉と共に授業が始まる。ちなみにこの先生は、シャムが私と初接触を起こすことになった情報の元、ハーフエルフのアリシア先生という。


こうして彼らの一日が始まる……みたいな。

何の変哲もない日常も入れたくなったので入れました。趣味です。

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