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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
280/477

280,作戦実行

 杖を回しながら手合わせ場の中に降りる。

 今回の布陣は、右にジャン、左に私、中央にニアだ。私とジャンの距離を開けておくことで、魔法はジャンが使っていると思わせたいな、というのが主な理由。


 この円の範囲くらいなら小さな魔法を飛ばすくらい問題なく出来るからね。

 開始の合図を確認して、とりあえず一発風を撃ってからジャンの手のあたりに水の球を生成する。

 私もそれとは別に風を作ってどかどか撃ち込んでいく。


「はぁー!?」

「あははっ。そーれ!」


 風を撃って一人を場外に押し出す。いつもは割と大きめの魔法を一発二発くらい、って感じだけれど、今日だけ連射だと違和感とか持たれるかな?

 まあ、別にいいんだけどね。その気になればいつも通りでも撃てるっちゃ撃てるので、必要そうならそっちも使って行こう。


 ……なんてやっている間に、後ろで聞こえていた楽しそうな声は途切れていた。

 さてはジャン、うっかりやられたな?魔法のタイミング合わせとか、そっちに意識を取られた感じだろうか。


 はたから見たら完全に「新しく使えるようになった魔法を使おうとしてやられた人」だ。

 なんて、考えながら転進して円の中心に向かう。

 私が押し出した人が一人、ジャンとやり合っていた人はニアに抜かれているようなので、それで二人。残りは一人なのでパワープレイでいいだろう。


 いつも割とパワープレイだけどね。結局攻撃が速いってのはそりゃあそう、って感じの当然のことだし。

 起こした風を纏って足元に巡らせていたら、ニアがその場で上に跳んだ。


「はい、どうぞーっと」


 着地に合わせて風を送り、相手に向かって吹き飛ぶジャンプ台を作る。

 慣れたようにそれを踏んで加速していったニアの後ろに再度作った風を送って攻撃の補助に回り、綺麗な裏拳で相手を吹き飛ばしたのを見て思わず歓声を上げてしまった。


 ニアは既に弓をしまって拳を握りこんでおり、何をするかは相手にとっても明確だった。

 というか、もうみんな殴り弓兵見慣れてる感じもあるよね。

 何せ初めて殴り弓兵をやって見せてから、既に何ヶ月かは経過しているわけだし。


 まあ、それでも防げるかというとそんなことは無いようで、私の撃った風は何も無いところを通過して行った。

 ニアも普通に強いよねぇ。服の裾をブンブン振りながらはしゃいでいる姿からは想像出来ない重い拳が飛んでくるから、最近ではニアから逃げる動きをする人も多い。


「そこまで」

「勝ーった!」

「ジャンは……あ、居た」


 飛びついてくるニアをいなしながら、場外で手を振っているジャンの元へ向かう。

 次の試合が始まるので、壁際に移動してから反省会を開始した。


「ジャン、最初にやられてたねー。どだった?魔法使いのふり出来た?」

「出来てたと思うなぁ。すごいびっくりしてたし。セルリア的にはどう?」

「タイミングはばっちりだったと自負してる」


 つまり今回のイタズラ、もとい作戦は成功だったということで。

 ジャンが言うには、驚かせて不意を突く事には成功したが単純に力量で負けた、とのこと。

 相性もあるし、そういうのは仕方ないよね。とりあえず、もう一試合あるようだからそちらでも同じことをやってみよう。


 そういうことで話がまとまって、円の中に目を戻したらミーファが縦横無尽に場内を駆け回っていた。

 わぁ……と思わず漏れた声に、ニアからはセルリアもあんなんだよ、と返事が来た。


「流石にあれには及ばないでしょ」

「いやー……?」

「外から見てると割とあんな」

「うっそだー」


 ミーファは色々計測した結果、クラス内最速であることが判明しているので、私はどうやってもミーファの瞬間最高速度には追い付けないのだ。

 流石に長距離なら勝てると思うけど、あの狭さはちょっと無理。


「セルリアのあれってさー、酔わないの?すーっごいクルクルしてる時あるよね」

「酔わないなぁ。昔はたまに気持ち悪くなってたけどね」

「慣れなの?」

「慣れだね」


 まあ、私は元々酔いには強いタイプらしいんだけどね。

 飛行魔法を練習し始めた頃に、姉さまから「セルちゃん三半規管強いね……」と言われた記憶がある。ちなみに姉さまはその日、私に付き合わされてよぼよぼになっていた。


 申し訳ないことをしたなぁ、と今になって思っているので、どうにも忘れがたい記憶だ。

 姉さまも酔いやすいタイプって訳ではないらしいのだけれど、速いのは怖い絶叫系ダメゼッタイ、とよく呟いている。でもコガネ兄さんは無視して速度を上げている。


「お、次試合になりそうかな?」

「おー」

「よーし、やるかぁ」


 コガネ兄さんがたまに姉さまにやたら厳しいのは何故なのだろう、とか考えていたら試合はとりあえず一周したらしく、二周目の一番目に呼ばれたので身体を伸ばして手合わせ場へ向かう。

 ジャンの疑似魔法もあと何回かはバレないだろうから、バレるまで暴れて貰おう。


「……げっ、リオン」

「げってなんだよ」


 色んな意味でやりにくい相手なので、心の中に留めておけなかった声が漏れた。

 正面から当たると力で押し切られてしまうし、魔視の精度が上がったし、条件が揃えば魔法斬れるようになったし。


「やだー……ニア、リオン殴っといてー」

「まっかせろーい」

「お、やったろーじゃねぇか」

「はいはい、始めるぞー。中入れー」


 ニアの後ろに逃げつつ杖をクルクルしていたら、先生が笑いながら促してきた。

 返事をしつつ円の中に降りて、さっきと同じ場所に立つ。

 試合開始と同時に風を起こして撃ち込みつつジャンの手元に水を作り、とりあえずリオンを抑えに行くことにした。


 暴れられるとしんどいからね、自由にさせないようにしないと。

 風で牽制しつつ別の魔法を練り上げて、ジャンの方に水を作ったりニアの所に防御壁を作ったりあれこれ準備をする。


 ジャンがこっちに来てくれたので補助がてらに風を練り上げていたら、リオンがちょっと首を傾げてた。……こいつ、この数発だけで水魔法の魔力がジャンの物じゃないことに気付きやがったようだ。


 これだからやりにくいんだ、とか内心悪態を吐きつつ水の生成を止めて、全て風に変更する。

 ニアの方の風が残っている間に、全部攻撃しにしてリオンを落としきってしまいたい。


「うお、セルお前ちょっと待て!」

「待たん!おらー!」


 作った攻撃魔法を全てリオンに撃ち込んで、半分くらい避けられたけど一応無事に仕留めきることに成功するのだった。


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