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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
275/477

275,ダンジョンの中

 ダンジョンに入ってすぐに、細い分かれ道が出てきた。

 地図を描きながら一つずつ通って潰していくらしく、とりあえず右から行ってみよう、と道を選んで奥に進んで行く。


「このダンジョンは物理型、最下層は三階。二階層目の途中にセーフエリアがあるから、そこまで行ったら一回休憩しようか」

「分かった」

「物理型ってなんだ?」

「リオン……?」

「まてやめろ杖を振りかぶるな」


 なんで分かったんだ。というか、リオンは先頭で私はしんがりなんだから振りかぶったところで何が出来るわけでもないだろう。

 まさか知らないなんて思わなかったから反射で振りかぶってしまっただけだ。


「座学でやったでしょ」

「そう……か……」

「今度ダンジョン系の勉強会でもしようか?」

「え、私が気になるからやってほしい」


 ダンジョンに行くって話は前からしていたんだから、基礎の部分くらいはやっているかと思っていたのだ。

 全く覚えていなかったらしいリオンの反応にロイが笑いながら勉強会の提案をしてくれた。


 私も気になるし、まだ半年後ではあるけれど年度末のテストのこともあるので勉強会は早くからやりたいな。

 なんて考えていたら、後ろに置いておいた風に何かが引っかかった。


 勢いよく振り返って杖を構え、攻撃用に風をもう一つ練り上げる。

 索敵に引っかかったモノをまずは目視で確認して、魔物なのを確かめてから攻撃用に作った魔法を飛ばして串刺しにした。


「大丈夫かな?」

「……うん。他には居ないみたい」

「よし、じゃあ進もうか」


 薄くなった風を少し補充して、ゆっくりと進むロイについて行く。

 ……ゆっくり進む、と言いはするけど、地図を描きながら進んでいると考えると結構な速度なんだろうなぁ。


 何やら便利そうな道具がいっぱい用意されているし、ギルドの一角にある道具屋でダンジョン内で使うあれこれを売っているのを見かけたこともあるので、開発もされているんだろう。

 毎回やらないといけないなら、そりゃあ専用の道具も出来るよねぇ。


「お?行き止まりだぞー」

「ちょっと待ってね。……うん、じゃあさっきの分かれ道まで戻ろうか」

「おーし。……うお、すっげぇ密度でセルの風がある」

「そんなに厚くないよ」


 どうやら別の分かれ道が正解だったようなので、前後を入れ替えてきた道を戻る。

 戻るだけなので行きよりは速いがけど、さっき後ろから襲ってきた魔物がまた現れないとも限らないので警戒はしながら進まないといけない。


 それに、まだ後ろから襲われる可能性が消えたわけでもないしね。

 風はしっかり移動させて背中側に壁を作ってあるしこれで恐らく問題ないだろう。

 油断は良くないけど、気を張りすぎても疲れちゃうからね。


 まだまだ始まったばかりだし、あまり気負うと緊張で魔力の消費が増えたりもするからほどほどの緊張感というのは大切だ。

 リオンが居るから大丈夫だろう、と思っているくらいならちょうどいいんじゃないかな。


「戻ってきたぞー」

「じゃあ左を進もう」

「おーう」


 戻ってきた道を、今度は左に曲がって進んで行く。

 するとそれほど歩かずに下に降る階段が現れ、二階層目へと進むことが出来た。

 二階層目も見た目は一階層目と変わらないけれど、ちょっとだけ魔力が濃くなっただろうか。


「うお、なんか居る」

「ゴー!リオン!」

「狭ぇなここ!」


 階段を降りきって周りの魔力等を確認していたら、前の方が何やら賑やかになっていた。

 なにやら魔物がいたようだけれど、私が確認する暇もなくリオンが倒したようだった。

 というか、そっか。リオンはここでは戦いにくいだろうなぁ。


 前を窺うと剣を鞘に戻さずに握ったまま進んでいるようだったので、やっぱり狭いのはちょっと大変みたいだ。

 まあ、シャムのサポートも入っているし問題はないんだろうけど。


「また分かれ道だ」

「ロイー、どっちだー?」

「右から行こうか」

「おー」


 前の方では再び道が分かれたようで、少し進む方向が変わった。

 何となく選ばなかった左の道に目を向けると、壁の隙間から魔物が一体顔を出してこちらを見ている。反射的に風を起こしつつロイに声をかけて足を止め、攻撃用に魔法を練り上げる。


「……セルリア、一発軽いのを撃って次の攻撃の準備をして。後ろから後二体くらい出てくると思う」

「分かった」


 指示を聞いて、作った攻撃魔法を複数に分けて一つだけを飛ばす。

 我ながら見事に顔面に当たり、悲鳴を上げてこちらに走ってきた。

 その後ろには、ロイの言う通りもう二体ほど同じ魔物が駆けてくる。


 残しておいた攻撃魔法を一気に飛ばして、念のためもう一度攻撃魔法を練っておく。

 待ってみたけれど飛びついてこないので風に意識を向けて索敵をし、全て倒せたことを確認して魔法を霧散させた。


「おっけ、倒せた」

「よし、じゃあ進もう」

「放置でいいのか?」

「うん。素材が欲しければ取って行ってもいいけど、ダンジョンで生まれた魔物は魔力になってダンジョンに吸収されるからね」

「ほー……よく分かんねぇけどすげえんだな」


 そのあたりのことは私も知らないので、そのうち図書館で書いてありそうな本でも探してみたらいいかもしれない。

 なんて思いつつ進んで行くロイの背中を追いかけて、ついでにちょっとだけ削れた後ろの風を補充しておく。


 しばらくまっすぐ進んで行くと、何かあったのかリオンが大きめの声を上げた。

 何かと思ったら、狭い通路から広い空間に出たようだ。

 ……ここは、二階の途中にあるって言ってたセーフエリアかな?


「……うん、セーフエリアだね。少し休憩していこうか」

「休憩だー。気を張ってるの思ったより疲れるー」

「お疲れシャム。ここは明るいみたいだし、一回明かり消しとく?」

「そだねー。消しとこ」


 ぽわん、と可愛らしい音を立ててシャムの明かりが二つとも消えた。

 私も一度風を消して、杖を持ったままグッと伸びをする。

 ここはちょうどダンジョンの中央にあるらしく、行きはもう半分まできたらしい。帰りもここで休憩をしていくことになる。お昼ご飯はその時かなぁ。


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