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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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268,休みの間にやるべきこと

 くあぁっと欠伸を零して、身体を起こす。

 目を擦りながら時計を見て時間を確認し、顔を洗って服を着替えて髪を纏め、食堂へ向かうことにした。


 まだ休みの最中、授業が始まるまでは数日の余裕があるので戻ってきていない人も多く、食堂はいつもより人が少ない。

 まあ、普段から早めに来てる方ではあるので違和感は薄いけれど。


 なんて考えながら朝食を用意していつもの席に座る。

 あったかいお茶を飲みながらゆっくりと残った眠気を振り払っていたら、向かい側にロイが腰をおろした。


「おはようセルリア」

「おはようロイ。なんかちょっと多めだね」

「モエギさんたちの美味しいご飯で食欲が、ね」

「んふふ、なるほど」


 しばらくはリオンも早起きになるかなぁ。前は確か、一週間くらいは朝ごはんの時間に起きてきていたはずだ。

 シャムは……休みなら起きてこないのが通常だしなぁ。お昼前にお茶を飲みには来るんだろうけど。


「セルリアは今日、何か用事とかあるの?」

「今日はヴィレイ先生のお手伝いだよ」

「ああ、準備室の掃除」

「そうそう」


 他の先生たちにまで声をかけられているし、休みが明ける前には行かないといけないしね。

 ……いや、私がやる義務はないんだけどさ。習慣みたいになってしまっているのは本当に不本意なんだけどさ。


「ロイは何かすることあるの?」

「今日は特にないから図書館で過ごすかな」

「そっかぁ。……あ、新刊入ったらしいよ」

「そうなんだ。もう行ったの?」

「実はね。レースさんに会いに行ってきた」


 早々に図書館には行ったし、レースさんとひと月ぶりのおしゃべりもしたし、ついでに本も借りてきて寝る前とかに読んでいる。

 荷解きも大体終わっているし、今日の掃除が終われば休みの間にやっておくべきことは全部終わりになるかな。


「……あああ……掃除がやる事に組み込まれている自分の思考が憎い……」

「大変そうだね。……ヴィレイ先生は来年以降大丈夫なのかな」

「私も普通に心配なんだよね。埋もれてそう」


 来年はまあ、今より頻度は下がるだろうけれど私もまだ居るのでどうにか出来るとして、再来年は掃除をする人が居なくなるわけだ。

 そもそも自分でやって下さい、というのは言うだけ無駄なので、どうにかしておきたいのだけれど……


「これを私が考えてるのすら間違ってる気がしてきた」

「そうだね。他の先生がどうにかするのかもしれないし」

「今までどうにかなってたんだから大丈夫ではあるんだろうなぁ」


 なんて話している間に朝食を食べ終え、お茶も飲み切って席を立つ。ロイも食べ終えていたのでそのまま一緒に食堂を出て、向かう先は違うので廊下で手を振って別れた。


 角を曲がってから時計を取り出して時間を確認すると、流石にまだ早すぎる時間だったので一度部屋に戻って荷解きの続きをやる事にした。

 もう少しだし、終わる頃にはいい時間になっているだろう。


 確か箱自体は開けていて、服をクローゼットに入れる所までやって残りは後回しにしたんだったかな。茶葉とかは他の箱に入れていて、それは既に片付け終わっているから残りは……

 何を入れたんだったか。姉さまたちが半分くらいまで物を入れた箱を渡してきた気もするから、私が入れたわけではない物が多そうだ。


「えーっと……」


 部屋に戻って扉に鍵をかけ、壁に杖を立てかけて放置していた箱を開ける。

 やはり入れた覚えのないものが多い。予備のポーション等は有難く貰うとして、何か高価な薬が転がっていないかだけ先に確かめてから他に何が入っているのかを確認することにした。


「髪留め……新品のノート……わ、魔法辞典だ。やったー」


 これを入れたのは多分シオンにいだな。くれるというなら喜んで貰う。

 そんなこんなで流石にこれは不味いだろう、という物は見つからずに荷物整理は終わり、時間もちょうど良さそうなので魔術準備室に向かうことにした。


 杖を揺らしながら廊下を進み、特に人にも合わず魔術準備室の前に到着する。

 軽く扉をノックして一歩下がり、中から出てきた疲れた顔のヴィレイ先生に思わずわぁ……と声を漏らしてしまった。


「先生隈凄いですよ」

「前も言っていなかったか」

「まあ、改善されてないどころか悪化してるので言及はしちゃいますよね」


 話しながら準備室に入り、いつも通り何がどうなっているのか分からない物の山にため息を吐く。

 言いたいことは色々あるけれど、とにかく手を動かさないと終わらないので早速始めることにした。

 まずはいつも通り棚の前の物を退かして棚を開放するところからかな。


「というかまた埋もれてるのか……先生この棚使ってるんですか?もうこの部分机にした方がいいんじゃないですか?」

「一応使ってはいる」

「一応なんだ……」


 棚を開けられるようにするために棚の前の物を退かすための場所を作らないといけないので、机の一部を軽く整えてスペースを作る。

 ヴィレイ先生は……散らばっている紙がいるかどうかを確認しているみたいだ。


「先生、この本なんですか?」

「そんなところにあったのか。私物だ。どこかへ避けておいてくれ」

「避ける場所すらないですよ」


 とりあえず浮かせておけばいいかな。というわけでリングに魔力を通して小さな風を起こし、その上に本を乗せる。ロングステッキは手がふさがってしまうので入口の傍に立てかけてあるのだ。


 その後も数冊先生の私物の本が出てきたので上に重ねて行き、どうにか開けることが出来た棚の中に本をしまう。ガラス張りだし外から見えるからこれで問題ないだろう。

 というか棚の中までごちゃごちゃだな。この書類は……後輩たちの何かしら。見ないでおこう。


「……ん?先生、なんか魔力纏った箱が棚の奥にしまい込まれてるんですが……」

「どれだ?……ああ、これか。触らん方がいいぞ」

「でしょうねぇ……」

「魔術の教室に置いたはずなんだがな。置いてくる」

「はーい」


 箱を持って準備室を出て行ったヴィレイ先生の後姿を見送って、棚の整理を再開する。

 あとは中央の机もさっさと片付けて物の一時退避場所にしたいんだよなぁ。

 ただ、便利な位置にあるせいで他の場所より物が高く積まれているので片付けるのが大変なのだ。


 こっちの棚は一旦これでいいとして、次は本棚に本をしまっていこう。

 なんで本棚があるのに本を机に放置するんですか、と前に文句を言ったことがあるのだけれど、先生からは気付いたらしまうべき本を見失うのだと言われてもう全てを諦めた。


 なんて思い返している間に先生も戻ってきたので、とりあえず居ない間に見つけた謎の物の行き先を尋ねてから整理を再開した。


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