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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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267,ひと月ぶりの寮

 のんびりと進む出店に揺られながら、杖を手の中で転がす。

 久々のフォーンはいつも通りで、大通りの端で出店を降りて荷物を抱える。

 ソミュールが起きている間に寮まで戻りたいので、ちょっとだけ急ぎ足だ。


「じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けてな」

「はーい」

「お世話になりましたー!」

「おう。また来い」


 兄さん達に手を振って、浮かせた荷物を引っ張って大通りを進む。

 このあたりは歩きなれているので人混みを避けて別の道を通ったりもして、かなりスムーズに学校まで戻ってくることが出来た。


「荷物置いたら再集合にする?」

「そうだね。どこに集まろうか」

「セルちゃんとリオンがいっつも遊んでるあたり」

「了解。ミーファも来るだろ?」

「うん。ソミュちゃんを部屋まで送っていくから、ちょっと遅くなるかも」

「おっけー。じゃあそんな感じで」


 まだギリギリ起きてはいるけれどこちらの話は聞こえていなさそうなソミュールを連れて、ミーファが最初に寮へ向かって行った。

 それを見送ってから中央施設に預けていた自分の部屋の鍵を受け取り、一ヵ月ぶりの自室に足を踏み入れる。


 当然ながら何も変わってはいないので、荷物を置いて先に出した方がいいものだけは取り出してしまい、残りは後でやればいいので放置して部屋を出る。

 鍵をかけていつも遊んでいる林の前に向かっていると、途中で見慣れた背中を見つけた。


「こんにちはーヴィレイ先生」

「ん?ああ、戻ってきたのか」

「はい。さっき戻ってきました。ヴィレイ先生隈凄いですよ」

「気にするな。この後は何かするのか?」

「とりあえず荷物置いたら再集合です」

「そうか」


 掃除はそのうち行くのでそれまで埋もれないようにしててください、と心の中で付け加え、お疲れなヴィレイ先生と別れて林に足を向ける。

 休み明けなのに先生たちはいつも通りお疲れな感じだなぁ。


 やっぱり人を増やすべきだと思うなぁ。それだけで大分楽になるんじゃないだろうか。

 そう簡単に増やせない事情があるのかもしれないけれど、このままだとヴィレイ先生辺り倒れそうな気もするので早急にどうにかした方がいいと思う。


「お、セル来た」

「リオン来るの早くない?」

「置くだけ置いて来た」

「そっかぁ」


 他の三人はまだ来ていないようなので、とりあえずリオンと並んで木に寄りかかる。

 さっきヴィレイ先生と会ったよーなんて話しながら時間を潰していたら研究職の建物の方からロイが歩いて来た。


 ロイが合流したので三人でこの後何をしようかとのんびり話し合う。

 街に降りることも出来るけれど、それでも何かすることがあるわけではないのでいつも通りただウロウロすることになるだろうし……


 まあ、とはいえ学校で何かやる事があるかと言われると別に無いんだよね。

 普段から予定を決めて動いてるわけじゃないからなぁ……

 なんだかんだいつも通り外で遊ぶことになりそうかな?


「あ、シャムだ」

「やっほー!なんか決まったー?」

「何も決まってないよ。何かしたい事ある?」

「んー……やりたいことは休みの間に大体やったからなぁ」

「そうなんだよなぁ」


 シャムが会話に混ざっても、結局何も進展はしない。

 でもまあどうせなら人が居ないうちに大きく場所を取って遊びたい気持ちもある。

 さてどうするか。とりあえず、先生たちに心労をかけないように、あまり大規模にはしないようにだけ気を付けないといけないかな。


 あとはミーファは来るのを待って決めればいいだろう、と話がまとまり、そこからは特に関係のない雑談に話題が流れていく。

 姉さまからお土産に、と持たされたポーションの事だとか、ウラハねえとモエギお兄ちゃんがノリと勢いで作った服の事だとか。


「おまたせー」

「おっ、ミーファ。早かったなー」

「ソミュちゃんの荷物は置いてくるだけだったから。何するか決まった?」

「なーんにも決まってないよ。何かしたいこととかある?」

「んー……特にはないかなぁ」


 やりたいことはもう大体やったし、とミーファも同じようなことを呟き、だよねぇと声を漏らす。

 何せ今日の朝までは家に居たわけだし、兄さん達と別れたのなんてついさっきだし。

 学校でないと出来ない事、というのも特にはないのでやる事は特に決まらない。


「うし、鬼ごっこしようぜ」

「やるかー」

「飲み物先に買いに行く?」


 結局リオンの思い付きで前にもやった気がする魔法禁止の鬼ごっこが開催されることになり、とりあえず飲み物を買いに行こう、と全員で食堂に移動する。

 食堂のお姉さんたちからも微笑まし気に戻ってきたのねーなんて声をかけられながら各自飲み物を購入して林の前に戻ってきた。


 買った飲み物と杖やらなんやらは木陰に置き、落ちていた枝で逃げられる範囲を決めているリオンを眺める。

 ロイと二人でわちゃわちゃやっていたけれど、範囲は決まったようで枝を置いて歩いて来た。


「やろうぜー」

「最初鬼誰にする?」

「なんなら形式変えない?」

「ルール変更?どんなの?」

「全員捕まるまで鬼の交代なし、とか」

「いいんじゃない?捕まったら枠外待機で、最初に捕まった人が次の鬼」


 どうせなら、とルールも変えて、最初の鬼はじゃんけんで決める。

 ……負けた……別にいいけどさ。いいけど、笑ってるリオンには腹が立ったから全力で狙う。

 杖が無い私は結構身軽なのだ。何せ背丈くらいの杖なので、普通にちょっと重い。


「セルじゃんけん弱ぇよなぁ」

「たまたまだし」

「割といつも負けてね?」

「たまたまだし!」


 いつもなら杖で殴り掛かるところなのだけれど、既に杖は木の下なので残念ながら殴り掛かる事が出来ない。仕方ないので外していないリングで魔力を練り上げ、リオンの首元に氷を落とした。


「うぉ冷てぇ!?」

「油断したな!ロングステッキだけが私の魔導器じゃないんだよ!」


 普段あんまり使わないから油断しただろう。初めて見せるわけではないけれど、いつもは使うとしてもタスクの方だからね。

 なんて言い合いながら、距離を取って合図を出して、鬼ごっこが始まった。


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