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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
266/477

266,豪華な夕飯

 今回の休みももう終わりが近く、明日出店リコリスがフォーンに行くのでそれに乗って学校に戻ることになった。

 なので今日の夜はウラハねえとモエギお兄ちゃんが非常に張り切って作ったらしいご馳走がテーブルを埋め尽くしている。


 それを手伝いながら、あとはこの休み中にあったあれこれをのんびりと話す。

 一番大きな出来事はミーファとリオンの魔力循環が上達というか、別次元に行ったことだろう。

 あとは直近だとスコルでロイが買った水筒が精霊の加護付きだった、というのが大きめの事件に入るだろうか。


 買って帰ってびっくりだ。合流後にソミュールが何やら楽しそうにしているなぁと思ったら、コガネ兄さんが教えてくれた。

 ついでに、店主のおじいさんは恐らく人ではなく、姉さんたちに近い何かの種族だろう、と言っていた。なるほどなぁ……統一前のお金……なるほどなぁ……


「セルちゃん、オーブン確認してくれるー?」

「はーい。……お、いい感じかも」

「ならテーブルの方に運んでおいて」

「はーい」


 皿を並べ終わったところで次の指示が来たので、オーブンから美味しそうな焼き色がついたミートパイを取り出す。

 テーブルには既に置き場が作られているので、魔法で浮かせてそっちに運んでいく。


 凄い量だ……このうちどれだけのものがリオンの胃に吸い込まれ、どれだけの物がトマリ兄さんの胃に吸い込まれるのだろうか。

 二人合わせて半分はいくんだろうな。とんでもない吸収率だ。


「おっいい香りー……っていうか凄い量だね」

「あ、姉さま。お話終わった?」

「うん。ソミュールちゃんは寝ちゃったので客間の方に居ます」

「分かったー」


 姉さまとソミュールはさっきまで薬のあれこれについて話していたのだ。

 この感じだと、大きな副作用とかも無いし大丈夫、ってことになったのかな?

 私は姉さまに圧倒的信頼があるので、最初に渡した時点でそのあたりの心配は一切していなかったのだけれど、姉さまは意外と心配性だからなぁ。


 失敗してるところ、見たことないんだけどな。

 ……いや、むしろ心配性だから確実に成功するまでやってるのかもしれない。

 姉さまに聞いてもふわっふわな解答しか返って来ないから、そのあたりは永遠に謎のままだ。


「うお、すげぇ」

「おー。豪勢やなぁ」

「あらシオンいいところに。ちょっと手伝ってくれるかしら?」

「げぇ、捕まった……」


 リオンとシオンにいが揃ってリビングに現れ、シオンにいが捕まってキッチン内に連行されていった。夕飯の準備はもうほとんど終わっているので、何かしら別の用事な気がする。

 なので手も口も出さないでおこう。呼ばれない限り行かない。結局それが一番だ。


「セル、ロイたちどこ居るか分かるか?」

「客間の方に居るんじゃないの?」

「居なかったぞ?」

「え、居ないの?」


 リオンと疑問符だらけの会話をして、同じ方向に首を傾ける。

 私はここで夕飯の支度を手伝っていたので他の動向は知らず、リオンはシオンにいと二人で手合わせなどをしていたので他の動向は知らないらしい。


 ……だとしても敷地のどこかには居るだろうし、外に出るわけはないから客間に居るだろうと思ってたんだけど……

 どこに行ったんだろう。まあ、探せばすぐに見つかるだろうけども。


「あ、ソミュールは客間で寝てるって」

「そうなのか」

「セルちゃん、行ってきていいわよ。お手伝いありがとう」

「分かったー」


 シオンにいに指示を出し終えてこっちに微笑んだウラハねえに手を振って、リオンと一緒に外に出てとりあえずは客間を見に行くことになった。

 外から見てても明かりが点いている感じがしないし、本当に居ないみたいだ。


「おーい」

「誰か居ねーかー?」

「……居ないね」

「他に人が居そうなとことかねぇの?」

「家の中に居ないなら、湖の向こうとか、木の方とかかなぁ。誰かと一緒に居るんだと思うけど」


 あっち、と私が指さした方向に、リオンは素直に歩き始めた。

 その背中を追いかけて行き、湖を迂回して畑なんかを見て回る。

 ウラハねえとモエギお兄ちゃん、あとはシオンにいか。その三人以外が一緒に居るってなると、このあたりに居るような気がするのだけれど……


「あ、いた」

「何してんだあれ」

「さあ?」


 見つけたのは良いのだけれど、何やら全員で円を作るように地面にしゃがみ込んでいて何をしているのかが全く分からない。

 一緒に居るのは……サクラお姉ちゃんとコガネ姉さんかな?


「あ、セルちゃん!おいでー!」

「お姉ちゃん、これ何してるの?」

「お花植えてる!」

「お花……」

「セルリアには前に見せたことがあるかな。これ」

「……ああ、マリマーゼ」

「なんだそれ」

「球根にちょっとだけ魔力を込めて植えると、その魔力によって花の色が変わるっていう花」


 籠に入れたマリマーゼの球根をひとつ受け取り、軽く魔力を流す。

 それだけで少し色が変わり、それを見たリオンが目を輝かせているので、もう一個とってリオンに渡すとさっそく魔力を流し始めた


「おお、変わった」

「ここに植えて!」

「うっす」


 楽しそうなサクラお姉ちゃんを手伝って、残り少しだった球根を全て植えて家に戻る。

 手を洗ってリビングに顔を出すと既にアオイ姉さまは席に座ってお茶を飲んでいた。

 準備ももう完全に終わっているようなので、椅子に腰を下ろして人が揃うのを待つ。


 誰が居ないんだろう。トマリ兄さんかな?

 なんて思っていたら店の方からトマリ兄さんが現れ、サクラお姉ちゃんも戻ってきたので夕食の時間になった。


 明日の予定やら持っていく物やら、話す内容は尽きない。

 ウラハねえとモエギお兄ちゃんが何やらまた服を作っていたり、前に渡したワンピースドレスに合わせて作った小物があったりするらしく、シャムとミーファはちょっと荷物が増えそうだ。


 ついでにソミュールの分も作ったらしい。そういえば何か二人でやっていたなぁ、と思いだしつつ夕食を食べる。実は何品か私が作ったものもあるのだけれど、誰も気付いてはいなさそうだ。


 この中に混ざっていても気付かないって言うのが何よりの誉め言葉だなぁと一人で笑い、学校の方に戻ったら何をしようかと話しているシャムたちの会話に混ざることにした。


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