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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
254/477

254,のんびりした朝

 朝日を浴びて目が覚めて、数秒ほど天井を見上げてから欠伸を零す。

 すっかり学校の部屋の方が見慣れた天井になってしまったなぁ、なんて思いながらベッドから降りて、クローゼットから適当に服を出して着替えを済ませる。

 杖を片手に下に降りれば、ウラハねえとモエギお兄ちゃんは既に朝食の準備を始めていた。


「おはよう、ウラハねえ。モエギお兄ちゃん」

「おはようセルちゃん。お茶、飲みますか?」

「んー……その前に外見てこようかな。ロイとか起きてるだろうし」

「分かりました。お茶は淹れてあるので、欲しければ持っていってくださいね」

「はーい」


 外に出ると湖の傍にロイが立っているのが見えたので、そちらに足を向ける。

 声をかける前に、近付く足音で気付いたのかロイが振り返ったのでとりあえず手を振ってみる。

 ……律儀に振り返してくれるんだよなぁ。ロイは。


「おはよう」

「おはようセルリア。……髪下ろしてるの珍しいね」

「そう?まあ、そのうち結ぶよ」


 家だと結ばずに放置してたら誰かが結んでくれるんだよね。

 邪魔になったら自分で適当に纏めるし、朝のうちにきっちりまとめる必要があんまりない。

 学校じゃ部屋を出る前にちゃんとセットしてるから、ただ下ろしてるのは確かにちょっと珍しいかもしれないなぁ。


「ミーファも起きてる?」

「うん。ソミュールの荷物を解いてると思うよ」

「昨日は結局起きなかったもんね。今日は起きると思うけど……姉さま時間あるのかな」

「アオイさん、学校に来てた時と雰囲気違ったなぁ」

「外面モードの方が珍しいよ」


 話しながら意味もなく湖の周りを一周し、客間から出てきたミーファと合流する。

 ソミュールは起きなかったらしいけど、多分昼には起きるんじゃないかな。

 今日は天気もいいし、起きて来ても外でお昼寝するような気もするけど。


「……お茶貰ってこようかな。なぜかちょうどテーブルに椅子が三つあるし」

「手伝おうか?」

「いや、大丈夫。座ってて」


 朝ごはん前なのでお茶請けはないけれど、待ってる間にのんびりモーニングティーは優雅でいいんじゃないかな。

 そんなわけで、店の方の入口には回らず貯蔵庫の方からキッチンに入る。


 ウラハねえとモエギお兄ちゃんの邪魔はしないように棚からカップを三つ取り出し、置いてあるポットからお茶を注ぐ。

 それをトレーに乗せて、再度貯蔵庫を通り抜ける。


「そこ、通れるんだね」

「うん。外から物を直接入れれて、キッチンから取り出せて、って作った結果便利な通路になってるんだ」

「なるほど……」

「はい、どうぞー」

「ありがとう、いただきます」


 ガーデンテーブルにトレーを置いて、空いている椅子に腰かける。

 普段は出しっぱなしにはしてないと思うんだけど……もしかして、前に泊まりに来てた時、私たちが朝ごはんまで三人で話してるのを見てて置いてくれたんだろうか。


 椅子三つだしなぁ、もしかしたらそうなのかもしれない。

 あとでウラハねえに聞いてみよう、なんて考えながら、欠伸を零しながらお茶を啜って落ちてきた髪を耳にかける。


「……あ、トマリ兄さん」

「よぉ」

「おはようございます」

「おう」


 のんびりお茶を飲んで朝の心地よい風を浴びていたら、家の影からトマリ兄さんが現れた。

 わざわざ来るなんて、何か用でもあるのかな。

 そう思って目で追っていたら、頭の上に肘をつかれた。


「重い……」

「お前ら、今日は何すんだ?」

「特に決まってはないけど……何かあるの?」

「魔力操作、今日はやんねぇなら俺はヘリオトロープまで行ってくるんだが……」


 なるほど。やらないなら出かけてくるけど、やるようなら出かけないで付き合ってくれるのか。

 早い方がいいよなぁ。みっちりやったらそれだけ上達するだろうし。

 ミーファを見てみると、耳をしっかり立ててこちらを見ていたのでとりあえずトマリ兄さんの腕を退かそうともがいておく。


「や、やりたいです!」

「じゃあ朝飯の後な。コガネはアオイの手伝いで動けねぇから俺と……シオンでも連れてくっか」

「シオンにい動くかなぁ」

「動かすんだよ。お前が帰ってきて機嫌いいからすんなり出てくんだろ」


 腕はどうやっても退かせなかった。これが筋力量の違いか……

 というか、わざわざ寄ってきて私の頭を肘置きにするのは何でなんだ。

 可愛がり方を改めてほしい。もう何年も言ってるのに一向に改善してくれないけど私はあきらめないぞ。


「ご飯ですよー」

「はーい。……トマリ兄さん!」

「おう、吠えんな吠えんな」


 なんで私が悪い感じになってるんだ。

 ロイとミーファが笑いながら客間の扉を開けに行ってくれたので、トマリ兄さんへの文句は一旦置いておいて朝食を取りに行く。


 ついでに空いたカップを持っていって流しの中に置き、トレーを片付けて朝食を持っていく。

 外でロイが待っていてくれたので手伝ってもらって全て運び、客間のテーブルに並べて椅子に座る。

 シャムがそのうち起きて来るかな……私の横に来るだろうから、お茶はそこに置いておこう。


「パンもお家で焼いてるんだよね?」

「うん。そうだよ」

「凄いなぁ……お店のより美味しいくらいだよ」

「ウラハねえは何でも作るからなぁ」


 昨日買ってきた第一大陸の果実は今日の夜あたりデザートになって出てくるだろうし、夕食が終わった後とかでもウラハねえはキッチンに居ることが結構ある。

 作るのが楽しいから寝る前に仕込みをしたり朝早くからご飯を作ったりも苦ではなくて、本心から楽しんでやっているらしいのだ。


「それも才能だよねぇ」

「そうだね。たまにお手伝いする、とかなら楽しいけど……」


 話しながら朝食を食べ進めていたら扉が開く音がしてシャムが起きてきた。

 ポヤポヤしながら椅子に座ったシャムが危うげな手付きでお茶を注ごうとしているので横からポットを支えたりしながら朝食を食べ進める。


 その後リオンの前にソミュールが起きて来て、欠伸を零しながらお茶を飲み始めた。

 昨日は起きなかったけれどぼんやり声が聞こえるくらいの覚醒はしていたらしく、とりあえず姉さまと話してこようかなぁと席を立った。


 リオンが起きてきたのはリオン以外が全員朝食を食べ終えて、残りは置いておくか母屋の方に持っていくか、と考え始めた頃合いだった。

 ……寝起きで残り全部食べたリオンの胃袋はやっぱりちょっと理解が及ばないな。


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