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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
247/477

247,久々に二人でクエストへ

 姉さまが特別授業にやってきた週の週末。今日は全休の日で、長期休み前最後の休日だ。

 そんな日に私は一人、門の手前の木陰で空を見上げていた。

 まあ、特別なことなんて何もなく、リオンを待っているだけなんだけどね。


 休みは皆でうちに行くことになったので、休みに入る前に冒険者活動にでも出ようかという話になったのだ。

 最初はシャムとロイも一緒の予定だったのだけれど、二人は休み明けに提出の課題を少しでも進めないと不味い、と不参加になった。研究職って大変。


 そんなわけで一人風に吹かれながらリオンを待っているのだけれど、中々起きてこない。

 いつも通り集合時間をちゃんと決めたわけではないので別にいいのだれど、起こしに行こうかどうか悩んで既に十分くらい経っている。


 行ってもいいんだけどなー、行き違いになったら嫌だしなー。

 なんてダラダラしているわけだ。左手で杖をクルクル。右手で時計をクルクル。

 やっている間にまた時間が経ったらしく、建物の方からリオンが歩いて来た。


「おーっす」

「おはよう。寝癖ついてるよ」

「気にすんな。行こうぜー」


 リオンはもうちょっと気にした方がいいと思う。

 まあ、いつもの事なので私もこれ以上気にはしないで街に向かうことにした。

 クエストに出る前に何か軽く食べておきたいし、屋台なんかも見ながら行こう。


「いいクエストあるかなー」

「小型の討伐くらいがいいよな」

「カセラビの大量発生ってどうなったんだろうね」

「流石にもう終わってんじゃねえか?」


 話しながらギルドに入り、クエストボードを眺める。

 今日は特別採取系が多い気がする。パッと目に付いた討伐クエストは大型のものだったし、微妙かなぁ?


「……あ、カセラビ残ってる」

「最後っぽいな。行くかー」


 詳細を確認して、問題がなかったので受注受付に持っていく。

 カセラビは群れを作る小型の魔物で、この前何が原因かは知らないけどものすごい大量発生をしていたらしい。


 討伐のクエストもかなり多く出たようで、フォーンだけではなくイピリアとスコルからもクエストの受注者が集まっていたらしい。

 そんなわけで、ほとんどは既に討伐された後なのだ。私たちが受けたのは本来の生息地から溢れてきている分を少し間引くクエストなので、数はそれほど倒すことにもならないだろう。


「飯買ってこうぜ」

「そうだね、ちょっと食べてから行こう」

「……セルお前、今日ポーション少なくね?使ったのか?」

「よく見てるな……昨日お風呂場で滑って足捻ったから一本使った」


 いざという時に出しやすいように、ウエストポーチの外側にポーションを着けているから見えはするんだけど、普段着けてる個数と違うのに気付かれるとは思わなかった。

 おかげで私の地味な失敗が明らかになってしまった。誰にも気付かれないと思ったのに。


 今日はリコリスの出店日ではないから補充は出来ないけど、休みも近いし別に平気だろう。

 ……あと、リオンは笑い過ぎだから。私が風呂場で滑ったのがそんなに面白いかい。

 ポーション開けるレベルの捻り方だったのがそんなに面白いかい。


「……笑うな!」

「すまん……っくっふふ」

「もー!」


 堪えようとはしている、ってあたりがムカつく。

 ムカつくのでリオンの顔面に風を吹かせて、そのまま進むことにした。

 ……あ、あのサンドイッチ美味しそう。


「悪かったって」

「本当に思ってる?」

「おう。セルでも滑る事あんだなーって思ったら自分でも思ったより笑いが」

「悪かったとは思って無さそうな言い草」


 でも一応風は止める。風吹かせたままご飯買いに行ったらお店にも迷惑になりかねんからね。

 そんなわけで昼食を買い、大通りを進みながら串焼きの肉を買い食いする。

 串を捨てて国外に出たら向かうのは迷いの森の方向だ。


 カセラビの生息地は迷いの森の浅い所。森の外にまで出て来ているのが過剰分になる。

 元々数の多い魔物だけど、普通森の外には出てこないからね。

 出てきたとしても一体、二体くらいだけで、群れが丸々出て来ているのは異常事態だ。


「……ちなみにリオン、魔物と魔獣の差って分かってる?」

「獣っぽいかどうか」

「テストにそうやって書いたの?」

「おう。三角付いてた」

「そっかー」


 完全に間違っているわけではないから先生も悩んだんだろうなぁ。

 一番の差別化点は魔力だよ、と緩い解説をしながら歩いていたら森の前に到着したので、話すのはやめて周りを警戒する。


 今回は空には上がらず地上から集まっている魔力を探す。

 ……このあたりには居ないかな?居ないのなら、移動しながら探すことになる。

 そうなると、問題はどっちに進むか、だ。森に沿っての移動なので二択だけどどうしようかな。


「リオンどっち行きたい?」

「あー……こっち」

「オッケー行こーう」


 考えたってどうにもならない問題はリオンの勘に頼るのが一番だ。

 そんなわけでリオンが指さした方に進む。ずーっと進むとイピリアがある方向。

 風で索敵しつつ進んでいると、向かう先に魔力が集まっているのを見つけた。十中八九カセラビの群れだろう。やっぱりリオンの勘はよく当たる。


「居た。この先約五百メートル」

「気付かれてるか?」

「……今気付かれた。急ぐ?」

「おう。セル先行っていいぞ」

「はーい」


 リオンは魔力の体内循環が上手くなって、簡易的な身体強化が出来るようになったので走ってくるのだろう。とはいえ私が飛んだ方が早いので、森に逃げられる前に足止めに向かう。


「お、いたいた」


 飛べば五百メートルくらいすぐなので、飛び始めてすぐに見つけたカセラビの群れに向けて風を飛ばす。倒すのではなく捕まえる用だ。

 そのまま真上に移動して、飛びかかって来るのを避けつつ地面に叩き落していく。


 あわよくば倒せないかなーなんて思いつつふわふわしている間にリオンが到着したので、討伐自体は任せる形で逃げないように、一度にリオンに襲い掛かれないように風で動きを制限する。

 リオンがぶっ飛ばした個体の確認もしているから、結構忙しい。


 討伐自体はそれほど時間もかからずに終わったので、リオンが後処理をしている間に別の群れが居ないかの確認を行っておく。

 時間いっぱい探したけれど、私の索敵範囲には引っかからなかったから今日はこれでおしまいだ。

 いやーよく働いた。非常に満足の行く結果なので、あとは無事に帰るだけだね。


いいねの合計数が100を超えていました。

とても嬉しい……いつも読んでいただいてありがとうございます!

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