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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
246/477

246,終了後の雑談

 授業が終わった後、先に教室から去って行った姉さまを追って中央施設に向かう。

 何か用があるわけではないけれど、せっかくだしもう少し話しておこうかなーとか思ってるのだ。

 あとは休みのことも話したいし。


 そんなわけで気軽に追いかけてきたわけなんだけど、視線の先では姉さまとヴィレイ先生が謎の攻防を繰り広げていた。

 ……なーにあれ。私まだ近付かない方がいい感じ?


「あ!セルちゃん!」

「えー……何してるの……?」

「よしセルリアもキャラウェイと話したいのだろう俺はこれで失礼する」

「セルちゃんヴィレイさん捕まえて!」

「本当に何してるの!?」


 あんな早口なヴィレイ先生は初めて見た。

 なんて考えながら、反射的に先生の退路を塞ぐ。

 わあ、睨まれた。ごめんなさい先生。何だかんだ私は姉さまに従う生き物なので……


「ありがとうセルちゃん」

「うん。ところでこれ、何してるの?」

「お話」

「……コガネ兄さん?」

「あー……まあ、ある種話し合いではあった」

「ぼかす必要もねえだろ。ヴィレイの体調不良にアオイが首突っ込もうとしてるってだけだ」


 後ろからトマリ兄さんが頭の上に腕を乗せてきた。

 なる、ほど?ヴィレイ先生は突っ込まれたくない、アオイ姉さまは薬師的に気になるから首を突っ込んで解決したい、と。


「というかヴィレイ先生、体調悪いんですか?」

「別に悪くはない」

「ヴィレイさんのそれはただの慣れでしょう。放置するの良くないと思いますよー」


 なるほどこれは平行線。姉さまと先生は何かしらで争っていないといけない運命なのかもしれないなぁなんて、そっと現実逃避をする。

 だってこれ、どっちに味方しても私は地獄なのでは?って感じだし。


 とはいえヴィレイ先生の体調が悪いっていうなら心配だ。

 先生なんか猫みたいなところがあるし、体調不良を隠すのも上手そうだし。

 その点姉さまなら原因究明まで出来るからなぁ。


「ヴィレイさん絶対腕痛いじゃないですか」

「その件はお前の仕事内容と関係ない話だろう」

「今後私の事をアオイと呼ぶことを約束してくれるなら、私も今後自分から首突っ込むことはしないと約束しますよ」


 悩むように目を逸らしたヴィレイ先生は、結局約束はしなかった。

 そんなに嫌なのか……呼び方にそんなにこだわりがあるとは思えないんだけどなぁ。

 何か他に理由があるのか、なんなのか。考えながら頭の上の腕を退かそうと頑張ってみたけどびくともしなかったので諦める。


「後で腕見せてくださいね。薬作って送り付けるので」

「分かったから待機室に移動しろ。そろそろ人が来るぞ」

「はーい。セルちゃんはこの後暇?お話したいな」

「暇だよ。姉さまと話そうと思って来たし」


 どうやら話がまとまったようだ。トマリ兄さんもようやく腕を退かしてくれたので、移動する姉さまについて行く。

 リオンに姉さまと話してくるーって言ってあるし夕飯までは好きに動ける。


 姉さまたちは夕方まで学校に居て、夕食が始まったくらいの一番生徒が少ない時間に帰ることになっているらしい。

 来るときも昼休みでまだ食堂に多くの人が居るくらいの時間に来ていたし、人目を避けているんだろうなぁ。姉さま目立つからね、仕方ないね。


「学校の先生たちと姉さまが知り合いなのって、毎年授業してるからだったんだね」

「うん。ケイさんから頼まれて、二年目くらいから来てるの。あとはまあ、一応薬も卸してるから結構会う機会ある、かな?」


 待機室で向かい合って座り、慣れた様子で勝手にお茶を淹れているコガネ兄さんを眺める。

 やたら慣れてるのは毎年やっているからなのだろうか。

 普段は三人で話してるんだろうな。先生が混ざることもあるのかもしれない。


 なんて考えている間にお茶が差し出され、トマリ兄さんが影の中からクッキーを取り出した。

 コガネ兄さんは既に姉さまの横に座っているし、トマリ兄さんはいつの間にか私の横に腰を下ろしていた。

 ……本当に手慣れている。くつろぐまでがやたら早い。


「そうだ、今度のお休み、もしよければ皆で遊びに来ない?来年は忙しくなるだろうし、学生のうちに呼べるのは今年が最後かもなーって思うんだ」

「確かに。来年からは学校にもあんまり居ないかもしれないし……誘ったら確実にリオンは来ると思うし、聞いてみるよ」

「うん。返事は急がないから、決まったら手紙で教えてね」


 私が話題に出す前に、姉さまから休みの話が出た。

 そろそろ前期末だからね、姉さまもどうするか考えていたんだろう。

 あとは、単純にみんなの事を気に入ってる感じがする。みんな最終的には姉さまにも慣れていたから嬉しいのかな。


「セルリア。シオンから一つ物を預かってきているんだ」

「シオンにいから?」

「ああ。これだ。中身は知らない」


 渡されたのは小さな箱で、揺らすと少し音がする。

 なんだろう。コガネ兄さんに預けたくせに中身を教えていないなんて、シオンにいにしては珍し……くもないか。結構適当だしな、あの人。


「開けちゃお」

「おう。開けろ開けろ」


 中身を教えなかったのは何となくか、説明が面倒だっただけだと思うのでもうこの場で開けてしまうことにした。

 横からトマリ兄さんも乗っかってきたしね。


 綺麗に結ばれたリボンを解いて箱を開けると、中には綺麗なブローチが入っていた。

 ついでに手紙も入っていたので確認すると、ウラハと合作した結晶が綺麗に出来たからブローチに加工した、似合うと思うからぜひ着けてね、的なことが書かれている。


「魔力結晶の希少性について私はここで語るべき?」

「やった奴らが聞いてねえんだから意味ねえな」

「まあ、持っていて困るものでもないから着けておくといいんじゃないか?」

「あら綺麗。流石シオンは趣味が良いねぇ」


 もうこれは貰って着けておくしかないやつだ。誰も持って帰ってくれないという事を理解出来てしまった。

 まあ、綺麗だから良いんだけどさ……でも魔力結晶ってそんな気軽にブローチにして人に渡すものじゃないと思うんだ。


 ついでに言うと暇だからって合作するようなものでもない。

 感覚が狂いすぎている。このブローチ見られたらまたヴィレイ先生が頭抱えるぞー。

 ぜひ着けてね、って言われてる以上私は飾りとして普通に着けるしな。


「……渡すの、休みでも良かったのに」

「思いついたんだろう。出る直前に預けられたから」


 もう本当、うちって自由人が多いよね。人は私と姉さまだけだけどさ。


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