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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
243/477

243,殴り弓兵の完成

 場を満たした風を、自分の周りに纏わせる。

 いつもならここでニアの周りにも風を作るんだけど、今日はいらないので残りの風は全部攻撃用に組み立てる。


「回して巡って巻き込んで。巻き込んで、巻き込んで。全部まとめて吹き飛ばそう、クードゥルラガヨン!」

「やっべぇ!」


 ギリギリで旋風を避けたリムレを追うように風を動かしつつ、こっちを狙っている魔法から逃げるために空に上がる。

 もう風の中入っちゃお。自分の風だから私は被害を受けないし、これで大抵のものは防げるし。


「つーかまーえた」

「セルリア怖えよ……」


 風に追いつかれて巻き込まれたリムレが何か言っていたけど、ちょっと風のせいで良く聞こえなかった。まあいいや。そんなに気になるわけでもないし。

 そんなに時間はかからなかったと思うんだけど、ニアたちはどうなっただろう。


 途中こっちに魔法が飛んできたし、ニアには攻撃が行ってないかな?

 考えながら空中で向きを変え、ニアとジャンが居る方を見る。

 ジャンはゲーテの相手をしていて、ニアは……


「あ」

「はぁっ!?」


 ちょうど、アンナを殴り飛ばしたところだった。

 思わず笑ってしまったけれど、やられた側からしたら普通に恐怖だ。

 ニアはどうにでもなりそうな勢いがあるので、背中ががら空きのゲーテを吹き飛ばして場外に送る。


「そこまで!」

「よっ……と。お疲れ」

「お疲れー」


 ゲーテを吹き飛ばしたところでニアも勝ったらしく、先生の声が響いた。

 地面に降りつつジャンに声をかけて場外へ向かっていると横からニアがタックルしてきた。

 何となく分かってたから大丈夫だけど、それ魔法使いにやっていい威力じゃないよ。


「ニアもお疲れ。殴り弓兵決まったね」

「うん!上手くいった!」

「俺は次の試合確認してくるから二人は休んでて」

「ありがとう」


 ニアに引っ付かれたまま壁際に移動し、始まっている次の試合を眺める。

 それにしてもご機嫌だなぁ。楽しそうなのはいい事な気もするし別にいいんだけどね。

 とりあえず頭でも撫でておこう。身長はそんなに変わらないけれど、ニアは今私の腰に腕を回してくっ付いているので頭の位置が低い。


「次からニアは接近され無さそうだね」

「む。それはちょっとつまんない」

「そっちに人飛ばそうか」

「やってみたい!それはそれでみんなびっくりだもんね」


 じゃあやろう。ジャンが戻ってきたらお知らせしないといけないな。

 ニアが接近されないなら普通に遠距離に徹してもらってもいい気もする、っていうか、弓兵なんだからそれが普通な気もするんだけどね。


 まあでも色々やってみよう、ってことで。

 何事も経験だってシオンにいが言ってたし、とりあえずやってみる精神も大事だってウラハねえが言っていた。


「次はミーファ達だったよ」

「わぁ……ニアどうする?」

「むしろやるっきゃなくなぁい?」

「何企んでるの?」


 企んでるって言い方は良くないと思うんだ。

 なんて緩く文句を言いつつニアと話していた事をざっくり伝える。

 止められるかなーとも思っていたんだけど、ジャンは笑っていいじゃん。と乗ってきた。


「ジャンは結構ノリがいいよね」

「そう?」

「ん。普通止めるよねぇ」

「セルリアも乗ったんでしょ?」

「まあそうだけどさ」


 私はほら、割と楽しければ何でもいいかなって感じだし。

 少なくとも学校でやる分には大怪我もしないしむしろ派手にやろうぜ、くらいに思っている。

 外で冒険者活動してるときには出来ないことを今のうちにやっておこう、みたいな、ね。


「あ、ソミュール寝ちゃった」

「あらー」


 試合中だったソミュールが寝て場外に飛ばされたのが見える。

 流れるようにミーファが寄ってきてソミュールを回収して行った。

 そして枕を持たせて壁際で安眠体制を整えている。……手際がいいなぁ。


「サクサク進むなぁー」

「時間制限結構厳しいし、みんな攻撃に転じると防いで一発みたいなところあるよね」

「セルリアは防がせないよねー」

「そんなことないよ」


 リオンとか、普段から私の風で飛んだり飛ばされたりしてるからやけに対処が上手いんだよね。

 飛ばしてるのは私のはずなのに風の上で器用に体勢整えないでほしい。

 なんかもう上手過ぎて腹立ってくるもん。今でこそ自由に飛んでるけど、私は出来るようになるまで割と大変だったのだ。


 そのうち飛んでるところに勝手に付いてくるようになりそう。

 ……ちょっと見てみたいな。でも、そこまで行ったら普通に飛行魔法覚えてるよね。

 現状、空中で並走したり出来るのがソミュールくらいなので、リオンかミーファが飛べるようにならないかなぁとかちょっと思っていたりする。


 まあ、もう少しすればアリアナが飛べるようになると思うので今だけの願いだろう。

 扱える魔法の難易度は、一応先生にも確認して次に進んでいいかどうか判断しているので、本当にあと少し、って感じだ。


「へいセルリー、何考えてんの?」

「可愛い後輩のことかな」

「セルリアは割と後輩と仲良いよね」

「まあ、関りある子少ないけどね」


 その分仲はいい、かもしれない。最近イザールに会ってないけど。

 なにしてるのかなー。たまたま会う以外だと向こうから来るから、探そうと思っても意外と見つからないんだよね。


 なんて話している間に試合はどんどん進んで二戦目の順番が回ってきた。

 既にアップが終わっているミーファは普通に早すぎて対処が追い付かない可能性があるので、私は初手で彼女を抑えに行く。


 そして余裕があったらニアの方に人を飛ばす、と。

 どうなるかはやってみないと分からないけれど、試せることが増えたのは楽しくていいね。

 緩んだ頬はそのままに、試合開始の合図を聞いて杖を勢いよく回した。



 最終的な戦績は勝ちと負けが半々くらいだったが、ニアの殴り弓兵は結構決まったし場が引っ掻き回されて色々あったので楽しかった。満足満足。


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