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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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241,連絡と作戦会議

 朝の教室でのんびりと読書をする。

 ミーファとソミュールは教室に来るまでに会ったけど、リオンは今日起きてこないかなぁ。

 昨日の時点でヴィレイ先生から一限は各種連絡事項があるから遅れるな、と言われていたのに、しっかり寝坊したみたいだ。


 どうするつもりなのかなぁ、とか考えながら読み終わった本を閉じる。

 読み終わりそうだったからもう一冊借りてあるんだよね。

 こういう隙間時間って暇になるとものすごく長く感じるから、暇つぶしの方法はいくつか用意しておく方がいいってこの二年で学んだのだ。


 そんなわけで二冊目の本を開き、十ページくらい読んだところで鐘が鳴った。

 顔を上げるとちょうど扉が開いてヴィレイ先生が教室に入ってきていた。

 リオンは……やっぱり起きて来てないや。出席の確認をしていたヴィレイ先生がため息吐いてるから後で怒られるんだろうなぁ。


「……はぁ、始めるぞ。メモを取りたい者は勝手に取れ。

 今日行うのは合同授業の事前連絡だ。前期の終わりの頃に合同授業があることは年間予定で知っている者も居るだろう。

 その件についてが今日の連絡事項だ」


 急に言葉を切ったヴィレイ先生が呆れた顔で出入り口を見るので何かと思ったら、明らかに走っている足音が近付いて来てそっと扉が開いた。

 中を窺うように顔を覗かせたのは、リオン。……起きたみたいだけど、ちょっと遅かったね。


「……出席にはしないが、説明を聞こうとした姿勢は評価してやる。座れ」

「うっす……」


 そそくさと席に着くリオンに、とりあえず良かったねえと念を送る。

 途中で間に合わないことは分かっただろうに、それでも教室に来たから一応許された、って感じだ。

 これでもう授業始まってるしーと諦めたら後から怒られるんだろう。


「では説明を続ける。行なう場所はいつも通り、生活施設の教室だ。間違えないように。

 前日にもう一度通達するが、詳しくは言わん。

 それと、今回の合同授業は午後に行われる。寝坊等はしないと思うが、その分欠席した場合の損失は大きいものと思っておけ」


 これまでにも合同授業は時々あったけど、大体は午前中だった。

 今回は午後なのか。何か違いがあるのかな。

 ……一応、クリソベリルが来た時は丸々一日合同授業だったけど、あれは特別だろうしなぁ……


 まあ当日になれば分かる事だ、今考えても仕方がない。

 今日は他にも色々とあるみたいだからね、とりあえずメモを取ることに集中しよう。

 そろそろ休みが来るからね、その前にやる事が詰まっている感じだ。


 ……今回の休みはどうなるのかな。またみんなで過ごすのも楽しいと思うんだけど、私が決められることでもないからまだ分からないところだ。

 次に出す手紙で聞いてみよう。特別行かないといけない用事がなければ皆を誘ってもいいはずだし。


「次の連絡事項だが……近頃、消灯時間後に部屋の外にいる生徒を見かけたという報告が何件も来ている。校則違反だと知っていながら行っている馬鹿は見つけ次第連行するのでそのつもりで居ろ」


 そんなことをしてる人が居るのか……何か理由があれば先生から許可を貰ったりも出来るだろうから、普通に遊びに出てるのかな?

 夜にやる事ってそんなに無いと思うんだけどなぁ。


「ここまでで何か質問等ある者は?居なければ次に行く」


 挙がった手と質問に答え、ヴィレイ先生は淡々と話を進める。

 各種連絡事項とか今週の予定とか、全て伝え終えて時間が余ったら自由時間になる。まあ、自由時間と言っても普段の自習とかと違ってヴィレイ先生が居るのでそんなに騒がしくはならない。


 私ものんびり読書再開かなぁと思っていたのだけれど、トトトッと誰かが近付いて来た。

 ミーファとは違う近寄り方だなぁと思って顔を上げるとニアが机の横に立ってこっちを見ていた。

 後ろからはジャンもこっちに来ている。……ああそっか、今日はこの後新規の方でパーティー戦闘だったっけ。


「へいセルリー。作戦会議しようぜ」

「いいよー」

「俺はニアに引っ張って来られたんだけど、作戦会議ちゃんとやるの珍しいね?」

「やりたいことがあるんだー」


 なにやら楽しそうなニアに、とりあえず防音魔法張るから待ってねーとストップをかける。

 周りに丸聞こえなまま作戦会議は出来ないよね。

 誰と当たるのかは分からないけれど、ミーファとかは教室内なら普通に聞こえてるだろうし対策するに越したことはない。


 ヴィレイ先生がこっちを見ているけど、何も言わずに手元に目線を戻したので別にやってもいいみたいだし。机の周り、三人だけが中に入るように風ベースの防音魔法を展開し、ニアに目線を戻す。


「……お、もういい?」

「いいよ」

「二個目の選択授業も結構やってるじゃん?だからそろそろ実戦に移ってもいいかなーって」

「なるほど?ついに殴り弓兵するの?」

「おぅいえーす」


 ニアは第一選択が弓なのに第二選択が体術という結構変則的な取り方をしている。

 ……まあ、第一選択攻撃魔法で第二選択レイピアの私が言えたことではないかもしれないけど。

 とにかく今は作戦会議だ。何をしたいのか具体的に、ね。


「じゃあ今回はニアも前に出るの?」

「んーん。とりあえず後ろにいる。んで、近寄られてもカバーはいらない。殴る」

「なるほどね。セルリアの壁は?」

「それもいらない。だから、セルリアにはバリバリ攻撃しててほしい」

「分かった」


 私が攻撃に行ってるからニアの守りが薄い、って状態を作っておくのね。

 ニアに攻撃が向けばそれでよし、私が押し勝ったならそれはそれでよし、と。

 ジャンは状況を見て浮いてるところの対処をしてくれるらしいので、私は本当にただ攻撃しているだけで良さそうだ。


 それなら私も楽だし異論はない。

 個人的にはニアに接近して殴られて唖然とする誰かを見たい気持ちが物凄くあるんだけど、いい感じに見れないかな。


「やるぞー殴るぞー」

「体術って殴るのメインなの?」

「んや?受け流したり受け身取ったりがメインな感じ?」

「でも殴るんだね」

「殴るのもちゃんと授業でやるよぉ。手刀より殴るの優先だし、張り手より殴るの優先だよ」


 それでも受け身とかが優先なはずだけど、ニアはどうしても殴りたいらしい。

 なんでそんなに、と思う気持ちと、加減とかしなくていい場所で思い切りやりたいんだよね、分かるぞ。という気持ちが同時に押し寄せてきた。


 他に決めることは特にないし、あったら授業の時で良いだろうという話になったのでとりあえず解散する。

 魔法も解いて残滓を消していたら今度はリオンが寄ってきたので顔面に風を当てておいた。


「なんだよ」

「おはよう」

「……おう」


 寝坊の件、割と気にしてるのかな?

 今日だけじゃなくて毎日ちゃんと気にしているならもっとちゃんと起きる気もするんだけど……

 まあ、どうしたって朝が苦手な人は居るしね。反省しているみたいだしこれ以上つつくことはしないでおこう。


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