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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
238/477

238,ストレス解消クエスト

 外の木陰でゆっくりと身体を伸ばす。

 息を吐きつつストレッチをしていたら建物の方から人が歩いてくるのが見えた。

 手を振られたので振り返し、木に立てかけておいた杖を回収する。


「おはようセルリア」

「おはようロイ」


 今日は休日で、いつもなら朝食を食べるためにロイとは食堂で会うのだが、今日は食堂に行かなかったのでここで朝の挨拶だ。

 ちょっと早めに来てストレッチしてたんだけど、ロイが来たってことはそろそろシャムとリオンも起きてくるだろうか。


「いいクエストがあるといいね」

「ねー。魔法ぶっ放したい」

「抑えてると疲れるもの?」

「意識してると、まあそれなりに。使うのが当たり前だと思ってるからね」


 一年生の魔力暴走は数日前の事で、その件は既に後始末含め終わっている……のだけれど、まだちょっと学校内は通常に戻り切れていない。

 先生たちが忙しそうにしているから、って言うのが一番の理由ではあるんだけどね。


 魔力暴走で学校内の魔力が少し乱れているから魔法授業はちょっと慎重にならないといけないらしく、それを聞いて私も個人で遊ぶのも控えていた。

 普段から魔法を使って遊びまくってるから、それが出来ない状態は割とストレスが溜まる。


「おはよー!セルちゃーん!ロイー!」

「おはようシャム。元気だね」

「とっても元気!」


 走って寄ってきたシャムは言葉通りとても元気だ。

 抱き着かれたのでとりあえずグルグル回しておく。

 シャムは軽いなぁ。ちょっと心配になるくらい軽いなぁ。


 なんだか楽しくなってきたのでシャムを回し続けていたら、いつの間にかリオンが横に居た。

 呆れた顔で何してんだ?と言われたのでシャム回しと答えたら余計に呆れた顔をされる。

 いいじゃんか。楽しかったんだから。


「よし、行こうか」

「うん」

「なに受けっかなぁー」

「やっぱり小型魔獣の討伐とかがいいよね」

「ダンジョン探索とかも行ってみてぇよな」

「そのうち行こうか。準備して浅い所から行ってみよう」

「やったー」

「楽しみにしてる」


 ロイの第一選択授業はダンジョン補佐だから、戦闘の指揮役をやるよりもダンジョンの中の方が輝きそうな気もする。

 まあ、指揮役も様になってるんだけどね。


 道中でリオンが買い食いをしているのを眺めたり一口貰ったりしながらギルドに向かい、人混みの隙間からクエストボードに目を向ける。

 小型魔獣の討伐、全然ないなぁ。もう持っていかれた後だろうか。


「あ、あそこに一枚ある。届かないからリオン取ってー」

「どれだー」

「その横、右、右」

「これか。……アクレクラってなんだ?」

「水辺に生息してる魔物だね。フォーンからだと外海の方に行くんだろうけど、内海にも生息はしてるよ」


 いいんじゃないかな?というシャムの言葉で今日受けるクエストが決まった。

 アクレクラについては多分道中でシャムが教えてくれるだろう。

 仮パーティーの申請はロイが覚えてやってくれたのでいつもより早く終わったし、フォーンの外に出る前に私も何か食べようかな。


 通りに串焼きの屋台があったから後で見てみよう。

 あとはパン買って持っていこう。どうせリオンが出るまでに買い食いするし、それについて行けば欲しいものは全部揃うかな。


「よし、飯買ってくる」

「私も行くー」

「じゃあ私も」

「なら皆で行こうか」


 屋台を巡って各々欲しいものを買い、ゴミを捨ててから門の外に出る。

 向かう方向は外海の方。ちょっと遠いので帰りが遅くなるようなら飛んで帰るのも考えないといけないかもしれない。


 周りの警戒もしながらのんびり歩き、少し進んだところで先行していたリオンが速度を落として寄ってきた。

 あ、またなんか食べてる。いつ買ったのそれ。


「んで、結局アクレクラってなんだ?」

「魔物中位、水妖アクレクラ。体長は三から四メートルくらいで、水魔法を使ってくるよ。基本的に水から上がる事はなくて、たまーに幼い個体が陸で日向ぼっこしてるくらい、らしい。

 動きはそんなに早くないから攻撃は避けれると思うけど、アクレクラは水中にいるから攻撃しずらいんだよね」

「私は自分で飛んでどうにかするけど、リオンどうする?」

「シャムどうにか出来っか?」

「水凍らせて氷で足場作るよ」

「おっしゃ、頼んだ」


 ロイは陸地から状況把握と指揮を行うらしいので、見えやすい高台でもあればそこに居て貰う方がいいかな。

 なかったら適当に足場作ろう。組める程度の何かはあるだろう。


「見た目の特徴とかってあるの?」

「うーんとね、普通の四足歩行の生き物に尾びれ付けた感じ?」

「……ケルピーみたいな?」

「ううん。ケルピーは下半身が魚みたいになってるでしょ?アクレクラは尻尾が尾びれな感じなの。体毛は青で、たてがみもあるけど毛って言うよりは背びれって感じ」

「魔物ってことは馬とかに似てるわけじゃねえのか」

「そうだね。耳無いし、首短いし。馬ではないかなぁ……」


 ちょっとイメージは出来ないけど、まあ見れば分かるか。

 アクレクラは少数の群れで過ごすらしく、今回は海岸沿いで発見された群れを一つ討伐するというクエストになっている。


 大体四体から六体くらいが一つの群れらしいので、そんなに手間でもなさそうだ。

 リオンが氷の上で戦うのが難しいようなら私が一体ずつ岸に打ち上げるのもアリかなぁ。

 面倒くさいけど、海に落ちたりするよりずっといいだろう。


「受付嬢に聞いたけど、釣りに来た人が襲われたからクエストが発注されたらしいよ」

「そうなんだ。大丈夫なのかな」

「自分でクエスト発注したって言ってたから大丈夫じゃないかな」


 再度先行し始めたリオンにシャムがついて行き、結果的にロイと二人で並んで歩く感じになった。

 向こうは何かワイワイやってるなぁ。何話してるんだろ。……カエルの肉がどうとか聞こえるんだけど、本当に何を話してるんだ?


「……カエルっておいしいの?」

「食べたことはないけど、割と美味しいって聞くよ」


 思わずロイに聞いてみたら笑いながら返事が返ってきた。

 誰から聞いたの、カエルの味とかって。研究職では普通の話題なの?


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