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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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237,後処理の時間

 教室に入ると他のレイピア選択者と数人の生徒が座っていた。

 すやすや眠っているソミュールを見つけて髪を弄っていたら扉が開いてリムレが現れ、私を見つけてこっちに寄ってきた。


「よっ。ソミュールは寝てんの?」

「うん。多分ずっと寝てるんだと思う」

「……ちなみに、何があって集められてんの?」

「一年生の魔力暴走。沈静化と他の保護は終わってるよ」

「わあ、見て来たかのような話しぶり」

「まあ、見てきたうえに壁張ってきたからねぇ……」


 はあ大変だった、と声を上げるとリムレは困惑をそのまま声に出した。

 疑ったりしないのがリムレの良さだよねぇ。

 悪い人に騙されそうでちょっと心配になるレベルだよ。


「そういえば、リムレはさっきの時間はテイムの授業か」

「うん。そっか、魔力暴走か……みんなが騒ぐから、早めに抜けなって先生に言われたんだ」

「ドラゴンは?落ち着いてた?」

「……そうだね、他よりは」


 話しながら二人してソミュールを眺めていたら、扉が開いて一気に人が入ってきた。

 連絡がいきわたってみんな自分の教室に戻ってる感じなんだろう。

 リオンとミーファがこっちに来るのと同時にリムレはサヴェールを見つけたらしく去って行き、とりあえず座ろうという事になったので席に着く。


「セルなんかしてたのか?」

「してたけど……なんで?」

「なんかいつもとちげぇ気がする」

「え、なにが?魔力の残量とか分かるわけじゃないでしょ?」

「なんだろうなぁー。風?なんかいつもと違わね?」


 確かに今回壁を張るのに使った魔法は加護持ちじゃないと扱えない物なので、その関係上ちょっとだけ風の質が変わっていたりするけど、それに気付いたの?

 なんでぇ?ソミュールとかならまだ分かるけど……いやでもリオンはやたらと魔力に敏感だったりするからなぁ。


 魔視を習得して魔力操作に慣れてきてから余計に感じる。

 最近は鬼人の魔力なのか目が光ってることがあるんだよね。

 まあ知られても困りはしないからいいんだけどさ。


「はぁー……今日の日程、この後全部自習な気がする……」

「流石に仕方ないよね、先生たちも忙しそうだし」

「何するか今のうちに決めようぜー」

「リオンは勉強しな」

「うへ……」


 ゴチンと音を立ててリオンが額を机に打ち付ける。

 そんなに嫌かい、そうかい。でもシャムにギーバのことを聞いたりはしてたから、やり方の問題なのかなぁ。……私が考えることでもないんだけどさ。


「でも、他に出来ることもないよね」

「教室内で魔法使って遊ぶのもどうかと思うしねー」

「セル普段部屋で何してんだ?」

「お茶飲みながら読書したりノート纏め直したりしてる」

「真面目……」

「あとは魔力操作とか風の制御とかくらいだよ」

「部屋で出来んのか」

「木箱浮かべるだけとかだからね」


 カバンから木箱を出して見せると、リオンは手の中でそれをクルクル回し始めた。

 特に何の仕掛けもないよ。重石を入れられる面があるだけで他には何もないただの木箱だ。

 ずーっと使ってるけど意外と丈夫でまだまだ練習に使える。


 今はアリアナ用にちょっと軽くしてあるので、リオンにとっては小石くらいの重さにしか感じないだろう。

 普段は結構色々入れて重くしているがそれでもリオンにとっては軽いだろう。


「……あ、先生来たかな」

「お?」

「流石耳がいい」


 耳をピコっと動かして入口の方を見たミーファの頭を撫でながらそっちに目を向ける。

 眺めていると、疲れた顔をしたヴィレイ先生がそっと扉を開けて現れた。

 おお、ものすごく疲れていらっしゃる。あの短時間で一体何があったのか。


「セルリア」

「あ、はい」

「来い」

「はーい」


 この後の指示かなぁとか思ってのんびり構えていたら呼ばれてしまった。

 まあ、発見から防御までしたんだから呼ばれもするか。

 ゴネても仕方ないのでさっさと行こう。


「荷物置いてってもいい?」

「いいぞー」

「移動するようなら回収しとくね」

「ありがとう」


 快諾されたので荷物は置いて杖だけ持っていく。

 小走りでヴィレイ先生の所に行くと、先生は手に持っていた何かを渡してきた。

 中央に大き目の魔法石がはまったネックレスだった。


「つけておけ。魔力の放出を抑えるものだ。外部からの影響も受けにくくなる」

「保険ですか?」

「そうだ」


 ん、と出された手に杖を渡し、渡されたネックレスを付ける。

 おお、制御されてる感じが凄い。

 これ特殊な体質とか種族の人とかは体調悪くなったりするかもしれないなぁ。


 私はちょうど魔力も使っていたし発散しなくても別に大丈夫なので問題はない。

 というかこれ可愛いなぁ。中央の魔法石、今は透明だけど多分私の魔力を吸って最終的には明るい緑色になると思う。


「状況の確認と、お前への影響の有無を調べる」

「分かりました」


 杖を受け取って、歩いて行く先生について行く。

 どこに行くのかなぁー。中央施設かなぁー。

 どのくらいの先生たちが対応に当たっているのか分からないけれど、保健室も教務室も待機出来る部屋もあるから中央施設が安定だろう。


「暴走してた子、どうなりました?」

「今は寝ている。今後どうするかは今日の職員会議で決まるだろう」

「わあ、お疲れ様です」

「お前たちの代と一つ下は誰も暴走事件を起こさなかったからな、久々の事で職員が慌ただしいが心配するな」

「上の代ではあったんですか」

「ああ」


 話しながら歩いて来た先はやはり中央施設だった。

 二階の空き部屋に入って行った先生の後を追い、変に注目されるよりは、とヴィレイ先生の背中に張り付くように中に入る。


 怒られるわけじゃないってことは分かってるんだけど、どうしても緊張するからね。


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