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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
233/477

233,平和な授業風景

 朗々と響く声と紙の上をペンが走る音で満ちた教室は、人によっては絶好のお昼寝会場になる。

 私はせっせとメモを取りつつ聞いているが、リオンなんかは既に夢の中だ。

 ソミュールも夢の中だけど、あれはまた別なので何も思う所はない。今日は実技の時に起きる予定らしいからむしろ今寝ておかないといけないまである。


「また減点者が一人増えた……ってことで今起きてる子だけに便利な相対図をあげようねぇ」


 のんびりと言いながら教科書を置いて、先生は起きている人の所に手渡しでプリントを配り始めた。

 寝ていた人に教えるかどうかは好きにしなさい、という事なので、私のこれは最終的にリオンのテスト勉強の時に使われることになりそうだ。


 ……なーんで私は今からリオンのテストの心配をしているんだか。

 なんかもう癖みたいになってるんだよなぁ、リオンのテストの心配とヴィレイ先生の研究室の状態予想が。


 まあ、研究室入ってない分他より暇だから余裕はあるんだけどさ。

 なんて考えながらプリントに軽くメモを書き込んで、教卓に戻って再度教科書を開いた先生の方を見る。


「さて、じゃあ続き……の前に、さっき配った相対図の補足をしようか」


 そう言って、先生は配られたプリントと同じ図を黒板に書き始める。

 先生ってみんな字とか図とか書くの早くて綺麗だよなぁ。

 やっぱり慣れなのかな。とかなんとか関係のないことを考え始めている時点で集中が途切れている。


 まあ、もうすぐ終わりの時間だし多少は仕方がない。

 メモはちゃんと取ってるしサボっているわけではないから許してほしいな。

 寝ている人とかと比べたら私はものすごく優等生なので集中できてないくらいで怒られたりはしないだろうけど。


「よし出来た。注目するのは、こことここね。この二つをちゃんと覚えておくと他の理解度が一気に上がるから、まずここ覚えて」


 黒板に書かれた文をそのままプリントに書き込んで、教科書の説明文を流し読む。

 ……このあたりは今日の夜にでも纏めておこうかな。

 今はやるにはちょっと時間が足り無さそうだし、先生の話は次のページに行っているし。


 そんなわけでメモだけ残して適当な紙を教科書に挟んでおく。

 これで良し。残りは後でやろう。

 急いで教科書を捲って先生が読み上げている部分を探す。


「さーて、じゃあ次……に行きたいけど、行くと変なところで切れちゃうな。ここまでにしておこうか。誰か何か質問あるー?」


 教科書を閉じてゆったりと言った先生に、すぐに何人かの手が挙がる。

 質問の内容と回答をメモして、それがある程度落ち着いたところで授業終了の鐘が鳴った。

 教室を出ていく先生を見送ってから席を立ち、机に突っ伏して寝ているリオンの首に小さな氷を当てる。


「うおぉ!?」

「おはようリオン。授業終わったよ」

「おお……」

「放心してないで次行くよー」


 リオンが起きたので自分の机に戻って荷物を回収し、欠伸を零しているリオンの背中を押してとりあえずソミュールの所に行く。

 ソミュールの荷物は既にミーファが回収していて、私がソミュールを浮かせると荷物はリオンに渡して手の空いたミーファがいつも通りソミュールを背負って移動を始めた。


 この流れ、いつもやってるからすごい手慣れてるんだよなぁ。私含め全員が。

 クラスの人たちも見慣れてるから何も言わないもんね。

 たまに外の実技帰りとかで知らない人が見ると驚いて凝視してきてたりする。


「リオンちゃんと起きて授業聞いてなよ」

「起きてようとは思ってんだけどな……なんか気付いたら寝てる」

「寝ない方法とかあればいい、のかな?」

「なんかあるかー?」

「私授業中寝ないから分かんない」

「私も……」


 ミーファと二人でそんな眠くもなんないよねぇーと言っていたら、リオンが真剣に悩み始めてしまった。

 すまんが本当に知らんのだわ……眠くはならんのだわ……


「授業前にお茶を飲んでみる、とか?」

「お茶?」

「あー、物によっては寝れなくなるから夜飲むな、とかあるもんね」

「へー。そんなのあんのか」

「シャムに聞けば分かる気がする」


 のんびり話しながら屋外運動場に移動し、荷物を降ろしてソミュールを起こしにかかる。

 今日は起きる気がするんだよね。先生が来る前に起こせればいいんだけど……まあ最終的に起きていればそれでいいので急ぐ必要はない。


 最近の実技は個人かパーティーか、パーティーなら一年の時に組んだものか最近先生の指定で組んだものか、でざっくり三パターンある。

 今日はどれになるのだろうか。最近ミーファと一緒に戦ってないから旧パーティーの方で何かしらやりたいなぁー。


「ソミュールゥー」

「ソミュちゃーん」

「ソミュ……うお、グラルせんせー」

「おつかれー。起きそう?」

「今日は起きる気がする」

「私も、今日は起こせる気がする」

「じゃあ多分起きるな。まだちょっと時間あるから頼んだ」

「はーい」


 いつの間にか後ろにグラル先生が立っていた。

 今日の実技、グラル先生か。一年生の実技受け持ってるから学年が上がると選択授業以外ではあんまり会わなくなるんだよね。


「そういえばセルリア、ベルベティんとこ行った?」

「あ、まだ行ってないです」

「あれ、そうなの?なんかはしゃいでたからセルリアが行ったのかと思ったのに」


 話しながらソミュールを揺すり、うにゃうにゃ言いながらぼんやりと目を開けたソミュールに授業だぞー実技だぞーと再度寝ないように声をかける。

 まだぼんやりしてそうだけど、カバンを漁って取り出した小瓶の中身を一気飲みしているので起こすのは成功したみたいだ。


 一気飲みしていたのは姉さまが作った眠気覚ましだろう。

 ちゃんとした名前が付いているのか、実は確認してないんだよね。

 今度手紙で聞いてみようと思いつついざペンを取ると書きたいことが多すぎて忘れてしまうのだ。


「起きたなーよしよし」

「せんせー、今日何すんだ?」

「古い方の組で石兵討伐タイムアタック」

「お、久々」


 やったー楽しいやつだーと声に出してみたら、リオンと先生からお前はいつでも楽しそうだよと言われた。そんな二人揃って言わなくても良くない?

 まあ、確かに大体楽しんではいるけどさ。それでもやっぱり対人戦よりはこういう形式の方がやりやすいし楽しいんだよね。


 そんなことを言い訳みたいに呟きながら、授業開始の鐘を聞いて杖を揺らした。


実技以外の授業風景ってあんまり書いてないなと思って書こうとしたら、授業何やってるのか正直分からないからものすごく曖昧な書き方になりました。

まあ授業してるからいっか(脳死)

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