表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
224/477

224,放課後の過ごし方

 放課後になってのんびりと廊下を歩いていたら、チリンチリンと鈴の音が近付いて来た。

 振り返るとイザールがすぐそこに立っている。

 いくら鈴の音がするからって背後に立つのはどうかと思うよ?


「せーんぱい」

「ご機嫌だねイザール」

「まあねー」


 そんなご機嫌の状態で私に寄ってきたのは何故だろう。

 何となく見つけたから、とかな気もするけど。

 面倒ごとに巻き込むのはやめてほしいなぁ?


「そんなに警戒しないでよ」

「よく分からない物は全部警戒するでしょ」

「まあ確かに?」

「それで?呼んだだけ?用事?」

「見かけたから寄ってみただけ。用事は……今じゃないかな」

「何その言い方」


 今後イザールから何か頼まれるようなことがあるのかな。

 ちょっとだけ覚えておこう。忘れるころに言われるのかもしれないけど。

 まあどうせ大体暇だからいいんだけどね。何も無いならそれでもいいし。


「先輩は今年も研究室入らないんだ?」

「入らないよ。放課後好きに過ごしてるのに慣れちゃったし。イザールも入ってないんでしょ?」

「俺は自由に動けないとだからね」


 話をしながら廊下を進み、私は図書館に向かうので途中で別れる。

 休みの間に本が増えたらしいので、それを探して借りてこようと思っているのだ。

 まあ、新しい本じゃなくても読んだことのない物はまだまだあるのでそんなに気にもしていないけれど。


 図書館に入ると、いつもより少し人が多かった。

 新入生が多いのかな?私も初日から図書館に行ったので目をキラキラさせて本棚を見ている様子はちょっと親近感が湧く。


「こんにちは」

「こんにちはレースさん」

「返却ね?」

「はい。お願いします」


 とりあえずまずは借りていた本を返して、それから新しく借りるものを探しに行く。

 いつも通りに返却の手続きをしてもらっていたらレースさんが楽しそうに笑った。

 笑うようなことが何かあったかな?


「貸し出しカード、もう三枚目に行きそうね」

「そんなになってましたか」

「ええ。二枚目に行く子も少ないのに」


 多くの人が在校中に一枚埋まるかどうかの貸し出しカードが私だけ年に一枚のペースで使っているらしい。

 そりゃあレースさんも笑っちゃうわけだよね。


 読書への執着心からなのか、私は結構読むのが早いらしい。

 正直自分ではそんなに分かっていないのだけれど、言われるからそうなんだろう。

 しかも複数冊纏めて借りていくからどんどんカードが埋まる。


 これでも借りて行かないで図書館で読んでる本とかもあるんだけどね。

 そもそもの本の数が物凄く多いからここで読んでても借りる量は減らないってのがね。とても素敵だと思う。


「あ、セルちゃん」

「ミーファ。やっほー」


 今日の最後の授業がそれぞれの最優先選択だったので別行動だったミーファが本棚の間から現れた。

 ミーファも結構図書館に居るんだよね。

 読めるようになって楽しい!と言っていた。非常に可愛い。


「なに読んでたの?」

「これ。第六大陸の舞踏文化」

「ミーファは第六大陸の出身なんだっけ」

「うん。小さな村だったから踊りとかも出来る人が居なかったんだけど、どんなのだろうって気になって」


 絵も付いているようで、読んでいてとても楽しそうな本だ。

 ドレスの歴史も描かれているらしい。

 第六大陸には常冬の地もあるので青や白に雪の模様というのが定期的に流行るみたい。これ面白いなぁ。そのうち自分でも読んでみよう。


「セルちゃんは何か借りるもの決まってるの?」

「ううん。読みながら探すよ」

「そっか」


 ミーファは読書スペースに行くようなのでとりあえず手を振って別れ、私は階段を上がって二階の本棚の間を進む。

 最近歴史系ばっかり読んでたから何か別の系統が読みたいなぁ。


 魔獣の観察記録とかないかな。別に魔獣じゃなくてもいいんだけど。

 前にギューヴィルの本があったけれど、あんな感じの物が読みたい。

 何かないかなーと本棚を眺めていたらロゼグレスト、と書かれた本が目に付いた。


「ロゼグレスト……何だっけ、第二大陸の固有種?」


 手に取って内容を確認し、ちょうど求めていたタイプの本だったのでそのまま小脇に抱える。

 もう一冊くらい何か探したいなぁ。

 のんびりと本棚の間を進みながら適当にもう一冊も選んでカウンターに向かう。


 途中読書スペースの端っこにミーファが居るのが見えたけれど、集中しているようなので声は掛けないでおくことにした。

 貸し出し手続きをしてもらって、本を二冊ともカバンに入れる。


「今日は部屋で読書?」

「はい。今年の授業も始まったから復習もしたいし」

「勤勉はいい事だわ。でも、無理はしないようにね」

「はーい」


 レースさんに手を振って図書館を後にし、そのまま部屋に戻る。

 休みの日なら食堂に寄ってクッキーを買ったりもするけど、今日はまあいいか。

 読み始めると止まらないだろうし先に去年の復習から始めようかな。


 部屋に入って杖を立てかけ、本をベッドサイドに置いて机に向かう。

 さて、どれからやろうか。

 去年のテストで点が低かった順にでもしようかな。


「どこに置いたっけなー」


 返却されたテストの他に点数の一覧表も貰ったのだけれど、どこに置いたか。

 テスト自体は家に持って帰ったけど一覧表はどこかに入れておいたはずだ。

 多分引き出しとか棚とかに入れてるはず。それ以外に仕舞う場所ないし。


「んー?あ、あった」


 無事に発見したそれを見て、点が低かった魔物生態から始めることにした。

 魔獣生態は別に悪くないのに、なんかこっちだけ悪かったんだよね。

 先生も不思議そうにしていたし、よく分からない点差の開き方だ。回答を見返してみた感じちょっとずつ混合して覚えている部分があったようなので、復習はしておくべきだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ