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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
218/477

218,調査は一応完了

 シャウラさんにご飯を奢ってもらって、美味しかったなぁとのんびり呟きつつ杖をクルクル回す。

 これからフォーンを出て件の泉に向かうわけだけど、今回他に人は居ないらしいので珍しくシャウラさんと二人での任務になる。


 何回か一緒にクエストに行っているし、今回は調査なので討伐よりも危険は少ない。

 最悪飛んで離脱も出来るから大丈夫だろう。

 考えながら杖をクルクル回す。そんなことをしている間に会計を済ませたシャウラさんがお店から出てきたので壁から離れて傍に寄る。


「おまたせー」

「いえ。ご馳走様です」

「んーじゃ行こうか」

「はい」


 大通りに出て門を目指しながら、詳しい動きを話しておく。

 とりあえずいつも通り私は浮いた状態で周りの警戒をすることになるわけだけど、何か予想していない事態が起こった場合はシャウラさんも一緒に飛ばして離脱する。


 今回は調査だからね、何かあっても必要以上の接触はしないで離脱と報告が優先になる。

 討伐する必要があるのかどうかもちゃんと判断しないといけないのだろう。

 そのあたりは偉い人たちが考えることなので私は良く知らない。


「妙な魔力って言うのは、魔法使いが見つけたんですか?」

「うん。混血の子でね、魔視が常時発動しているから遠くから見えた異常が気になって見に行ったらしいんだ」

「なるほど……」

「獣の方は夜間クエストから帰還中の冒険者が見かけたらしい。疲労が溜まって見た幻覚の可能性もあるって本人は言ってるけど……魔力の件もあったから調査依頼が入った感じだね」


 話している間にフォーンの門は抜けていて、草原を歩いて行きながら風を起こして周囲を探る。

 とりあえずこのあたりは異常なしだなぁ。

 まあ、門を出てすぐの場所に何かあればコガネ兄さんが通った時に無反応なはずがないからそりゃあそうなんだけども。


「何かあったらすぐに言ってね」

「はい」


 泉の方に向かいつつ、広く風を回して魔力を重点的に確認していく。

 特別違和感を感じることはなく無事に泉までたどり着いたが、ここまで来てようやく若干の不自然さに気が付いた。


「シャウラさん、ちょっと待ってください」

「うん、何かあった?」

「……風で感じられる魔力に違和感はないです。でも、魔視を通すと知らない魔力がある……」

「知らない魔力?」

「はい。なんだろう、これ」


 魔視は目に魔力を貯めて魔力のレンズを通して世界に溢れる魔力を色として視る技術だ。

 人の魔力はその人の個性が出るし、魔物の魔力はその種族の特徴が出る。けれど、それはあくまで魔力として感じ取った時であり、魔視での見え方に違いはほとんど出ない。


 魔視で見えるのは魔力の色。なのに、ここには見たことのない色が漂っている。

 私の知らない属性だとしたら、それ自体が異常だ。

 こちとら姉さまが出かけるのについて行ってはコガネ姉さんと一緒に各地を魔視を通して見てきた。


 今現在属性として知られている十五の色は全て見たことがあるし、闇の三種を若干ではあるけれど見分けることも出来る。

 私が見たことのない属性の魔力だとしたら、ここにあるのは十六種目の属性だということだ。


「……そら?」

「セルリア?」

「いや、違う。こんなんじゃない……」

「セルリア!」


 腕を掴まれて目の前が急にクリアになった。

 腕を引かれてその場から少しだけ遠ざかり、じっとこちらを見てくるシャウラさんにどう説明したものかと考える。


 十六種目の属性、と言われてまず思い浮かぶのは姉さまの話だけれど、姉さまの纏っている魔力はここにあるものとは全く違うのだ。

 明らかな別物だと断言できるのでここで姉さまの話を出す必要はない。


「……説明、出来る?」

「考えながらでいいですか?」

「いいよ」

「えっと、魔視で見た時に、属性として認知されている十五種以外の、私の知らない魔力があるんです」

「全く違う?」

「はい。見間違いではないと思います」


 今更だけど、これ思ったより大変な調査なのでは?

 行ってみないと分からない、が調査クエストの大変な所だけど、その中でも特別大事を引いた感じだなぁ。


 なんて呑気に考えながらシャウラさんの様子を窺っていたら、ちらっとこっちをみた青い瞳と目が合った。シアンっていうんだっけ、綺麗な色だ。


「何か攻撃されたとかはないんだね?」

「ないですね」

「うん、じゃあもうちょっとだけ探索してから戻ろうか」

「はい」


 意味が分からなくて混乱しただけで、別にこっちに干渉してくる何かは無さそうなんだよね。

 獣が居るのかどうかも確認しなきゃいけないらしいし、それを調べている間にあれが何の魔力なのか分かるかな?


 全く分からないままは嫌だからあれが本当に十六個目の属性なのかどうかくらいは分かるといいんだけど……無理かなぁ?無理でも出来る所まで調べておきたい。無理はしない程度にね。


「獣の痕跡はないんだよなぁ……」

「泉の中、何かありますよ」

「中?……本当だ、足跡?」

「蹄の跡……ですかね」


 泉で水浴びでもしてたのかな、それにしては蹄の跡が少ない気もするけど。

 滑って落ちたなんて事はないだろうし自分で入ったんだと思うけど……こんな跡見たことないんだよなぁ。


 シャウラさんは見たことあるのかな?

 とりあえず邪魔しないように黙っているけど、帰り道にでも聞いてみよう。

 ……というか、あれ?この泉、こんなに深かったっけ。


「セルリア?どうしたの?」

「シャウラさん、この泉ってどこかに繋がってるんですか?」

「え?そんな話聞いたことないけど……」


 一部だけ底が見えないくらい深くなっているからどこかに繋がっているのかと思ったけれど、シャウラさんが聞いたことないなら違うのかな?

 考えながら他の調査も一通り終わらせてフォーンに戻ることになった。


 ギルドのカウンターの奥にある部屋に通されてお茶を頂きつつ調査報告をして、魔力のこともちょっと聞いてみたけどギルドの職員さんにも心当たりはないみたいだ。

 分からず仕舞いだけど進展があったら教えて貰えるらしいし、報酬も貰えたので文句はない。


 シャムの冒険者登録は終わってるかなーと考えつつシャウラさんと別れて、とりあえずギルド内を見てみることにした。


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