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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
216/477

216,思ったより早い集合

 出店に揺られてぼんやりと空を見上げる。

 今日は学校再開の大体五日前、つまりは私が寮に戻る日だ。

 なんだかんだ一回しか遊びに来れなかったからまたリオンが暇してたりしそうだなぁ。


 まあ、ミーファとソミュール居るし大丈夫か。

 なんて思いつつ空を飛んでいる鳥を眺めていたら視界の端に灯棒が見えてきた。

 流石にもう三年目に入るからね、姉さまとシオンにいも慣れたのか引き留められることも……そんなに長くはなかったのでスムーズな出発だった。


 なのでここまで来るのにもそんなに時間がかかっていない気がして、もうこんなところかぁーと呟きつつ伸びをした。

 コガネ兄さんがこっち見てるけど、何でもないから気にしなくていいよ。


「おら、ついたぞ」

「はーい。じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい。気を付けて」

「うん」


 フォーンの中に入って大通りの端で止まった出店リコリスから降り、荷物を浮かせて歩き出す。

 コガネ兄さんとトマリ兄さんにはまた休みの日とかに会うだろうからそんなに長々別れを惜しむこともせず、さっさと学校に向かう。


 リオンはもう寮に戻っているだろうから多分会えるだろう。

 なんてのんびり考えながら大通りを進み、学校の門を潜ったところで木陰で何かしているリオンとロイを見つけた。


「あ、ロイももう戻ってきてたんだ」

「お!セル!来たか!」

「久しぶりセルリア」


 そういえば休み半ばにはフォーンに戻ってくるって言ってたな。

 ってことは後半はロイと一緒に居たのか。

 なんて考えていたら、後ろから大きな声が響いて来た。


「あー!みんないるー!」

「わあ、シャム!」


 振り返ったらシャムが立っていた。まさかの全員集合である。

 話し始めると盛り上がるので先に荷物を置きに行き、一ヵ月ぶりに部屋に入って荷物を下ろす。

 整理はまた後でいいや。どうせ夜には部屋に入るんだし。


「お、早かったなー」

「置いて来ただけだからね。二人は何してたの?」

「そこの木の上に何か光ってて、気になって」

「えー?なんかあるの?」

「セルなら飛んでみれんじゃねえか?」

「二人も登れば見れたと思うけど……」


 まあ、気になるから飛ぶけど。

 見てみると、木の枝に何かが引っかかっていた。なんだろうこれ。

 意図的に置いてある感じではなかったので枝から外し、着地してからロイに渡す。


 何かのパーツにも見えるけど……よく分かんないや。

 ロイは知っているのか手の中で転がしてるけども。

 リオンも分かっていないようで、首を傾げている。


「ロイ、それなんだ?」

「魔道具のパーツだよ。なんでこんなところにあるのかは分からないけど」

「外して大丈夫だったかな?」

「これだけで何かするってことはないから多分大丈夫。先生に渡しておこうか」


 落とし物、と言っていいのかは分からないけれど、落とし物は中央施設に持っていくのが手っ取り早い。

 ロイが行ってくれるらしいので私とリオンはここでシャムを待つことにした。


「休みの間何してたの?」

「ロイが来てからは採取系のクエスト行ってた。流石に薬草は見分けれるようになったぞ」

「お、やったじゃん」

「ミーファとソミュールは二日前くらいに戻るってよ」

「そっか」

「……お?セル前からそんなの着けてたか?」

「え?どれ?」

「耳の」

「ああこれ。作ったんだよ。耐火用に」


 テストでソミュールと当たった時に髪を焦がされた話とかを家でしていたら、引火すると普通に危ないから何か対策をした方がいいかもしれないという話になり以前ヴィレイ先生に貰った炎の魔石を加工して防火の魔道具にしたのだ。


 再装填が出来るタイプの非常に質のいい魔石だったので常に発動していて私の魔力をちょっとだけ吸い取る循環仕様だ。

 綺麗に半分に割れれば問題なく使える、という事だったのできっちり両耳に付いている。


 そのまま片耳に付けるには大きすぎるサイズだったしちょうどいい。

 魔道具部分も大きくないから飾りとしてはシンプルで結構気に入っている。

 そんな感じの話をしたら、リオンはほーっと感心したような声を出した。


「……ん?でもセルお前、指輪一個防火用じゃなかったか?」

「よく覚えてるね……まあ、こっちは頭守る用かな。髪長いから燃えそうだし」

「なるほど……?」

「指輪より性能いいしね」


 ま、使い分けだ使い分け。別に分けてないけど。

 なんて話している間にロイとシャムが揃って戻ってきた。

 何も話し合ってはいないのに全員街に出られる格好なので、そのまま遊びに行くことになる。


 まだあと五日間は授業も再開しないし、話す時間はいっぱいあるからね。

 どこに行くか話しながらとりあえずは大通りに向かう。

 これいつも通り市場をうろつく流れだなぁーと思っていたら、ロイがあっと声を出した。


「そうだ、剣買いたかったんだよね」

「まだ買ってなかったんだ」

「皆が居る時の方が心強いなぁって思ってね」

「じゃあ今日の予定決定だね」

「……よし、トマリ兄さんを連れてこよう」


 行ってきます(キリッ)とかやったばかりだけどまあいいだろう。

 居てくれた方が安心なんだから意地を張る必要はない。

 それに、今日を逃したら次に休みと噛み合うまでちょっと時間かかりそうだし。


 全員賛成らしいのでまずは大通りで出店リコリスを探し、何だ忘れ物か?とのんびり聞いてくる兄さん達に事情を話してトマリ兄さんを借りていく。

 向かうのは当然、リオンの大剣を買った店もある職人街だ。


「片手剣なら専門の店もあるから場所覚えとけ」

「はい」

「お前は武器買わなくていいのか?」

「私は実は持ってます!てってれーん」


 話を振られたシャムが荷物からタスクタイプの杖を取り出した。

 持ってるんだろうなぁとは思っていたので別に驚かないけれど、綺麗な杖だったから後で見せて欲しい。


 道中でシャムも休みが明ける前に冒険者登録を済ませるつもりらしいと聞いて、今年は本当に四人でクエストに出られそうだなぁと笑う。

 話している間に店に到着し、ロイが剣を選んでいる間は店の中を眺めて時間を潰すことにした。


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