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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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21,朝は強い方なのです

 朝日替わりの明かりの点灯にゆっくりと目を開けてベッドサイドに引っ掛けてある時計を確認する。いつも通りの時間。いつも通りに、少し眠たい目を擦って身体を起こす。

 サイドテーブルに置いた本は昨日のうちに読み終わったので、荷物に入れて行って放課後に返却しよう。


 考えながら顔を洗いに行き、髪を梳かして上半分をまとめ上げる。

 ここでまとめ方を二つにするとシャムとおそろいになるのだが、お互いやる気はないのでやったことはない。


 授業の内容と荷物を確認して、着替えている間に鐘が鳴って朝食の時間を知らされた。

 荷物は戻ってきたら回収するので、杖だけ抱えて移動する。

 朝食は、四人揃わないことも多い。私とロイは基本居るが、あとの二人は居ないことがあるのだ。


 特にリオン。寝坊したと言って一限のぎりぎりに来ることも多い。

 シャムは時々いないこともあるが、基本は起きてきている。ただ、朝は食欲がないと言ってお茶だけのことも多かったりする。


「おはようセルリア」

「ロイ。おはよう」

「シャムはまだ来てないんだね」

「うん。リオンもまだ」


 私も朝からがっつり食べれるタイプではないので、軽食程度の物をもって座る。

 鐘が鳴ってすぐに移動すると、まだ人はまばらだ。

 一人朝食を食べ始めたところで、私よりは多い朝食を持ったロイが現れる。ここまでが、基本的ないつもの流れ。


「戦闘職の一限は?」

「騎乗。何に乗るのかは知らないけど。そっちは?」

「魔道具に関する基本知識」

「楽しそうだね」


 話していると、まだ脳が覚醒していなさそうなシャムが無言で横に腰かけた。

 トレーに乗っているのはお茶と小さなパンが一つだけ。それで足りるのだろうかと毎日の心配になるが、しっかり授業は聞いているようなので良いのだろう。


「おはようシャム」

「おはよ……ふあ……」

「眠そうだね。どのくらい寝たの?」

「六時間くらい?ちゃんと寝たよ」

「それはちゃんと寝てるねぇ」


 朝には強くないらしいのだ。

 そもそもエルフは時間の感覚に疎いのだと言っていた。が、彼女はハーフエルフである。

 どちらに寄っているのかは知らないが、人の感覚も持っているはずなのでその言い訳は通用しない。


「セルちゃぁん。今何時?」

「んー。七時四十七分。急ぎなー」

「リオンは駄目そうかな?」

「ねー。パンくらい持ってってあげるべき?」

「騎乗ならお腹も空きそうだよね」


 シャムの朝食を少し急かして、結局現れなかったリオンをどうするか相談する。

 相談と言っても、私がパンを持って行くかどうかの話なのだが。

 持っていくかはその日の気分だ。そもそも起きてこないのが悪いし、当てにされても困る。


 懐中時計を閉じてポケットに仕舞い、杖をクルクルと回してどうするかと考える。

 ロイは優しいので持って行ってあげれば?と言っているが、先も言ったように起きない方が悪いので。……でもまあ、姉さまも朝に弱い人だったのもあってあまり責める気にならないのも真実だ。


「持ってってあげるかぁ。そんなわけで、先に行くね」

「うん。じゃあまたお昼に」

「お昼に。シャム、あと七分だよ」

「んー……ロイ、パン半分要らない?」

「いいよ、貰う」


 ……本当に、優しい青年である。

 トレイをもって杖を抱えて先に席を立ち、トレイを片付けて適当なパンを一つ手に取る。

 それを綺麗な布でくるんで持っていき、部屋に戻って荷物を抱えたところで朝食終了の鐘が鳴った。


 早めに移動して待機していると、徐々に人が集まってくる。

 ぼんやりと眺めていたら、真っ白なうさ耳がぴょこぴょこしていることに気が付いた。

 何を頑張っているのかと最初は疑問にも思っていたが、もうそれだけで何をしているのか認識できる。


「おはよう、ミーファ」

「あ、セルちゃん。おはよう」

「手伝おうか?」

「お願い!どうにかぴっぱり出したんだけど……」


 ミーファがぴょこぴょこしながら引っ張っていたのは、ほとんど起きていないソミュールだ。

 入学からほどなくして仲良くなったこの二人は、寝起きの良いミーファが朝食を手早く済ませて絶対に起きていないソミュールを起こしに行くところまでが朝のルーティーンになっているらしい。


 ひどい時には着替えるのすら手伝うらしく、一限にソミュールが現れているのはミーファの努力の結晶である。

 ちなみに、起こし方は部屋の扉をひたすら叩いているのだとか。


 防犯的な問題があるのだろうが、ミーファにはソミュールの部屋の合い鍵くらい作ってあげてもいいのではないだろうか。

 教師陣もミーファの努力は知っているはずである。


 その話を聞いてから、出来るだけ運搬は手伝うようにしていた。

 いくら小さいウサギだと言っても、彼女は獣人であり筋力は人よりもある。

 それでも自分より大きい存在を運ぶのは大変なことだ。


 私ならとりあえず浮かせて運びやすくするくらいはできるので、私が浮かせる係でミーファが引っ張る係。になっている。

 ソミュールの周りに風を起こして身体を浮かせ、そのまま安眠に入ろうとする彼女の頭を軽く叩く。


「誰のためにこんな苦労してると思ってるんだい?」

「んへへ、ありがと……おやすみ……」

「寝ないでー!ソミュちゃん!」


 ミーファの必死の訴えを聞きつつ適当なところにソミュールを下ろす。

 とりあえずここに転がしておけば出席と見なされるだろう。

 ミーファは朝から一仕事終えた疲労感に襲われているようだ。


「あっぶね!セーフ?」

「おはようリオン。ギリギリだね」

「はー。焦った焦った。腹減った」

「自業自得。パンを一つだけ確保してあるけど?」

「セルリアは最高だぜ」

「全く……」


 調子のいいことを言うリオンの頭を杖で小突いて、鐘の音を聞く。

 本当にギリギリだったようだ。間に合うように走ってきたのだろうが、まさかまた窓から外に降りたりしていないよな?


 危ないからやめろと散々言われているのに、時間がギリギリだと最短距離を行くために窓から飛び降りる生徒は意外と多い。

 リオンもそのうちの一人である。まあ、どの道を通っていようが道を通っていなかろうが私には関係ないので、遅刻しなかった時点で上々だろうと思ってしまうのだが。


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