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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
207/477

207,数日振りの再会

 朝日を浴びてぐーっと伸びをする。

 今日もいい天気だ。雲はうっすらとしか掛かっていないし、風は非常に穏やか。

 何となく窓を開けてみたりしつつ着替えて下に降りると既に朝食の準備が始まっていた。


「おはようセルちゃん」

「おはよう、ウラハねえ」

「あ、セルちゃん。おはようございます。今日はフォーンに行くんですよね?」

「うん。リオンとミーファとソミュールに会ってくる」


 先に連絡してあるので今日は出店リコリスに乗っかって行って遊びに行くだけだ。

 一人でもリオンの泊っている宿は分かるので遊びに行く分には問題ない。

 お土産にポーションでも持っていく?と姉さまが言ってくれたので貰っていくことにした。


「おはようセルちゃん!」

「おはようサクラお姉ちゃん」

「二人ともお皿並べるの手伝ってくれる?」

「はーい!」

「はーい」


 ウラハねえに呼ばれてサクラお姉ちゃんと一緒にキッチンの方へ足を向け、出来上がっていく朝食を食卓に並べていく。

 そうこうしている間にアオイ姉さま以外が揃い、進捗を見てコガネ姉さんが姉さまを起こしに二階に上がって行った。


「おはよ……」

「おはよう姉さま」

「主おはよー!」

「マスター、ほら席について。お茶は?」

「飲む……」


 今日はまたいつも以上に眠そうだなぁ。

 時々こういう日はあるのであまり気にせずに朝食を食べ始め、今日の予定などを話す。

 トマリ兄さんとコガネ姉さんは今日出店リコリスでフォーンに行くので、買い物の確認なども行われていた。


 まあ、私は今回勝手に遊んでくるから関係ないしこのあたりは聞き流しだ。

 リオン起きてるかなぁ、という懸念がずっと脳内にあるせいで他の話があんまり入ってこない。

 起きてなかったら宿の中に風を吹き込ませて起こすという作業が入る。


 それならそれで別にいいんだけどね。

 なんて考えながら朝食を食べ終え、出発準備を進める出店リコリスを眺める。

 シオンにいが寄ってきて髪を弄り始めたのでここから動けなくなった、とも言う。


「まだー?」

「まだー」


 なんか凝ってない?そんなに時間かかること今からやるの?

 と、思っている間に終わったらしくシオンにいが離れる。

 ちょっと触ってみたら何やら髪が編み込まれてポニーテールに纏められていた。


 シオンにい、器用だよなぁ。というかうちには不器用な人はいない気がする。

 大体みんな何か作ってるからね。トマリ兄さんも必要なら道具を作ったりするらしいし。

 なんて考えている間に出店リコリスの出発準備が整ったようだ。


「行くぞ、セルリア」

「はーい。行ってきます、シオンにい」

「気を付けてなぁ」


 シオンにいに手を振って出店リコリスに乗り込み、いつもの場所に座って窓の外を眺める。

 森の中に入ったので空は見えないけど、木漏れ日が非常に心地いい。

 このままずーっと揺られていたら寝るだろうという確信が持てるくらいの心地よさだ。


「シオンにいお昼寝してそう」

「するだろうな」

「だよね。私も何もなかったらお昼寝してただろうなぁ」


 頷いている辺り、今日が出店日じゃなかったらコガネ兄さんもお昼寝してたんだろう。

 天気がいいとみんなで外でお昼寝とかもするからなぁ。

 たまに動物団子が完成してるし。あれを見ているとそれだけで眠くなる。


 ぼんやりしている間に森を抜け、気付けばフォーンの中に入っていた。

 リオンとはとりあえず大通りの噴水に集合、という事になっているので出店リコリスを降りてそちらに向かう。


 これでしばらく待ってみてリオンが来なかったら多分寝てるから起こしに行こう。

 なんて考えつつ杖を揺らして噴水の傍にあるベンチに腰を下ろす。

 ふぅ……と息を吐いて空を見上げていたら、なんだか人が近付いてくる気配がした。


 正面に視線を戻すと、思っていたよりずっと近くに知らない少女が居た。

 え、誰だこの子。なんかすごいキラッキラな目でこっち見てきてるけど、見覚えのない子だ。


「も、り!」

「えっ?」

「違うぞ、それは森ではなく風だ」


 別の声も聞こえてきて、そちらを見ると男の人が立っていた。

 ……いや、声からして多分男の人だろうなってだけで姿は外套で隠れていて見えないんだけれども。

 森じゃなくて風、って言うのは私のことなのか、何なのか。


「行くぞ」

「ん」

「すまなかったな」

「え、あ、いえ」


 少女を連れて去って行く後姿を見送り、何だったんだろうかと首を傾げる。

 考えてみたけどやっぱり知らない人だし結局何も分からなかった。

 んー?と首を傾げていたらリオンが歩いてくるのが見えた。


「よぉ。何してんだセル」

「あ、おはようリオン。いや、まあ何でもない……かな?」

「なんだそれ……まあ、何もねえならいいけどよ」


 とりあえず右手を上げるとペチッと手が叩き合わされる。

 そのまま手を引かれてベンチから立ち上がり、忘れないうちにお土産のポーションをリオンに渡してしまうことにした。


「はいお土産」

「おー。ありがとな」

「寝ぼけた姉さまにメガポーション渡されそうになったのを食い止めたから誉めていいよ」

「助かったわ。ありがとなセル」

「うむ」


 朝一の事件だった。いやあ、咄嗟に食い止めた私は偉かった。

 リオンからもより一層心のこもったお礼が来たので大げさに頷いておく。

 それでやっと目が覚めた姉さまからソミュール宛にも薬を預かってきてるんだよね。


 なのでとりあえず予定通りソミュールとミーファが居るヴェローさんの家に向かう。

 並んで歩き出しつつ休みに入って数日間の話をしていたのだけれど、リオンは割と冒険者活動に精を出していたみたいだ。


 私の方は流石に王城のお茶会の話をするわけにはいかないので身体強化の魔法の話だけしておいた。

 リオンが髪切ったことに気付いてちょっとびっくりしたりしつつのんびり歩く。

 意外と気付くんだなぁ。そんなに長さ変わってないと思うんだけど。


 なんて話している間にヴェローさんの家に到着し、家の前で手を振っているミーファを見つけて手を振り返した。


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