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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
205/477

205,イピリア王城へ

 ふわふわの服に、いつもより多めな装飾品に、ウラハねえの手によって綺麗に結われた髪。

 休みの序盤のうちに行くことになったカーネリア様とのお茶会は、なんだかいつもより着飾らされてウキウキな姉さまに手を引かれての出発になった。


 なーんでこんなにウキウキなんだろう。

 ウラハねえは久々に私を思い切り飾り立てられるってご機嫌だったけど、それとおんなじなのかな?前回の休みは皆が来ていたからお茶会行かなかったもんね。


 準備の様子を見たトマリ兄さんがあまりの気合の入りようにそっと逃げたくらいなのだけれど、それでもゴテゴテしていないというかなんか上品に見えるのはウラハねえのセンスなんだろう。

 ちなみに姉さまもその波に巻き込まれていた。まあ、楽しそうだしいいのかな。


「セルリア、杖どこかに置いておきな」

「あ、うん」


 ボーっとしている間にイピリアの正門を潜っていて、もう少し進んだところでリコリスを降りるのでコガネ兄さんに言われた通り抱えた杖を横に置いておく。

 姉さまは既にフードを被って準備万端だ。


「……よし、ここでいいか?」

「うん。大丈夫」

「いってきまーす」


 出店リコリスを降り、姉さまの後ろを付いて行って王城へ向かう。

 姉さまは歩きなれているけれど、私はどうにも落ち着かない。使えないの分かっててタスクもリングも持ってきてしまっているのは魔法使いの性だ。


 フードで前が見えにくい姉さまが人にぶつからないように気を付けつつ大通りを進み、お城の門の前で一度止まる。

 城内にはいるとカーネリア様のお付きのメイドさんがすぐに現れた。


 どこかから見てるのかな……いつも入ると同時くらいに現れるんだよね。

 それとも、これくらい出来ないと女王のお付きにはなれないってことなんだろうか。

 特殊技能だと思ってたけど、実はそんなことなかったりする?


 なんて考えながら上着を預けて、案内してくれるメイドさんについて行く。

 行き先は女王の庭。いつものお茶会会場である温室だ。

 前に訪れてから一年ほど時間が経っているので、どんな風になっているかちょっと楽しみ。


「あ、こんにちは、アオイさん。セルリアも」

「あらサフィニア様。こんにちはー」

「こんにちは、お久しぶりです」

「うん、久しぶり。行き先は温室ですよね?僕も呼ばれているので、一緒に行きましょう」


 廊下でサフィニア様に声を掛けられ、連れ立って庭園に向かうことになった。

 先導しているメイドさんの他、後ろから少し距離を開けてついて行きているのはサフィニア様のお付きの人だろうか。


 たしかあの人も物理が強い。イピリアの要人とその周りの人は強くないといけない決まりでもあるのかな?

 それとも守る対象であるはずの王族が皆強いから強い人が周りに残るのか。


 なんて考えている間に温室の前に付いていて、中に入っていく姉さまについて行き花の咲き誇る庭園に足を踏み入れた。

 カーネリア様のお付きのメイドさんは中に入るけれど、サフィニア様のお付きの執事さんは中には入らないんだよね。女王の庭園だからなのかな。


「来たか。久しいな、セルリア」

「はい、お久しぶりですカーネリア様」

「アオイも久方ぶりか?」

「私はひと月前に来たじゃないですか」


 温室の中央に置かれたガーデンテーブルに既に腰を下ろしていたカーネリア様は、なんかこう、ドーン、デデーン、みたいな効果音が付きそうな気配がしていた。

 いつもといえばいつもなんだけどね、カーネリア様は全身から存在感を放ってるから。


「さ、座れ。せっかくだ、セルリアの学校での話でも聞かせてくれ」

「はい」


 椅子に座って出されたお茶に手を付ける。

 美味しいんだよね、このお茶。やっぱり茶葉が良いんだろうか。

 お茶菓子もいただきつつ促されるまま学校でのあれこれを話していく。


 いつもの授業の話でも楽しそうに聞いてくれるので話す側としても楽しい。

 特別授業の話や冒険者としての活動についての話、ついでに、私は結局所属していない遊び場の話なんかもした。


「ほう……虚魔族でも扱える魔道具か」

「はい。研究室を作った先輩は卒業後も研究を続けるらしいです」

「もしかしたらこの国でも使えるかもしれないね」

「……たしかに」


 この国では魔力そのものを弾いているようなのでどうなるかは分からないけれど、もしかしたら他の道具と違い発動するかもしれないのか。

 そう考えると余計に完成形を見てみたくなる。


「まあ完成に期待を寄せておくとしよう」

「そうですねぇ。私も楽しみにしてよー」

「姉さまは必要になるの……?」

「ないかもだけど、そこから何が作られるか分からないからね」


 そういうものなのか。

 姉さまがたまに毒が進化すると薬も進化するし薬が進化すると毒も進化する、って言ってるけどそれと似たような感じなのかな。


 一つの物が完成すれば他のものにも応用されていく、のは、まあ何となく分かる。

 うん、とりあえず考えるのやめよう。

 完成して一年くらい経てば分かるでしょう。メリサさんの熱量なら完成しそうだし。


「カーネリア様はこのひと月何してたんですか?なんかあるって言ってませんでしたっけ」

「ああ、面倒事を片付けておった。それもようやく終わってな」

「長かったですね、今回のは」

「あらあら、お疲れ様です」


 王族の言う面倒事、ものすごい面倒なんだろうなぁ。

 姉さまははぇー……みたいな声を出しているから多分理解していない。

 私からすると姉さまに舞い込む面倒事も相当だけどね。


 なんて話しながらお茶とお茶菓子を頂いて、姉さまとカーネリア様が話し始めたところで許可を貰って書庫に行くことになった。

 サフィニア様もついて来てくれるようだ。……あれ、もしかしてまた背伸びました?


「どうしたの?」

「会うたびに見上げる角度が急になるなぁと」

「……そうかな?あまり自覚はないんだけど」


 久々に会うからだろうか。

 私今日ヒール履いてるのにな。私もこの一年で背伸びたのにな。

 なんて思いつつ、道中でサフィニア様の薬師試験の話などを聞いている間に書庫についた。


 一年ぶりに来たけれど、やっぱりここは希少な本の宝庫だ。

 また増えた気がする。んふふ、なに読もうかなぁ。

 あれ初めて見るなぁ、何の本かなぁ。


 ウキウキしながら本棚を見渡していたら微笑んだサフィニア様と目が合った。

 ついでだから新しく増えた本について聞いてみよう。


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