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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
201/477

201,卒業式は閉会後が本番

 ダンスパーティーの日は夜まで賑やかだが、夜になると先生たちが魔法で防音壁を張ってくれるので寝る分には一切問題がない。

 その時間になれば誘ってくる人もいないので解散し、部屋に戻って就寝するのが基本になる。


 まあそんなわけでダンスパーティーの日は夜まで私の部屋で喋っていたわけだ。

 ちなみにリオンの避難理由はミーファと大体同じだった。

 リオンも耳が良いからね、たぶん色々聞こえてきて疲れたんだろう。


 なんて、数日前のことに思いを馳せつつ青い空に目を向ける。

 うーん……いい天気。これが用事もないただのお休みならぜひお昼寝としゃれこみたいくらいの晴天だ。まあ、残念ながら今日は卒業式だったりするので寝るわけにもいかないわけだが。


 そんなに興味がないからボーっとしているしかすることがないんだよね。

 終わった後なら、まあそれなりにやろうと思っていることがあるからとりあえずは終わるのを待つことになる。


 なんていうかさ、こんなに大勢に長々話させる意味ってあるのかな。

 最初の方はちょっとだけ意識して話聞いててみたけど、内容ほとんど同じじゃなかった?

 と、そんなようなことを姉さまに話したら「何も考えず聞き流しなさい。そういう天災だからあれは」と謎に悟ったような目を向けられたことがある。


 あれかな、やっぱり最上位薬師様として行かないといけなかった集まりで同じように虚無に至ったのかな。

 姉さま自身は話をかなり短くまとめて切り上げるので、皆そっちに釣られてくれないかなぁと思う次第だ。


「以上を、挨拶とさせていただきます」


 お、また一人の長ーいお話が終わった。

 けれど、また別の人が上がって行った。

 いつまで続くのかなー……暇だなぁー……


 何か暇つぶしになるものはないだろうか、と視線を動かしていると、なんだか毎度のことになっている気がするけれどノア先生と目が合った。

 軽く笑ってどこかを指さしている先生に首を傾げ、その指さした先を見るとそこには一匹の猫が塀の上に座って話している人をじーっと見ていた。


 私よりずっと真面目に聞く姿勢を取っている。

 ……あの猫、先生がモノ君って呼んで餌付け……もとい可愛がっている猫だ。

 なるほど、興味のない人の話を欠伸を噛み殺して聞いているよりも猫の挙動を見ている方が楽しいだろうからそっちに意識を向けていよう。


 ……というか、もしかしてノア先生も話聞くの飽きて暇つぶしを探していたりするのかな。

 毎度毎度私が暇しているのに気付いていると思うんだけど……

 モノ君の来訪も気付いてたし、やっぱり暇なものなのか。


 でも話を短くしようとかは出来ないのか。なんだか面倒なあれこれがありそうだ。

 欠伸を噛み殺しながら猫を眺めて過ごし、寝かけているリオンを見つけて先生をチラ見してみたりしながらどうにか式の閉会を迎えた。


「はぁーっ。終わったぁー」

「セルこの後どうすんだ?」

「先輩に声かけに行ってくる。リオンは?」

「俺も。じゃあ後でなー」

「うん」


 身体を伸ばしている間にリオンが傍に来ていて、軽く話してそのまま解散する。

 式が終わったのだから、ここからが用事の本命だ。

 杖を揺らしつつ卒業生のいる一角に歩いて行く。探し始めてすぐに目的の人たちを見つけたので駆け足でそちらに近付いて行った。


「メイズさん、メリサさん」

「あ、セルリア」

「やっほーセルリア!」

「ご卒業おめでとうございます」

「ありがとう」


 先輩たちは既に合流していたようで、声をかけると揃ってこちらに手を振ってくれた。

 私のそれほど多くない知り合いの先輩なので、ここで縁が切れるのは寂しいなぁとそんなことを思って話に来たわけだ。


 所属してるわけでもないのに割と遊びに行っていた研究室で構ってもらっていたから、居なくなってしまうのは寂しい。

 卒業してもどこかで会えるだろうか。


「先輩たちは卒業後どうするんですか?」

「第二大陸のトルで魔道具の研究を続けるよ。工房のオーナーが興味を持って声をかけてくれたの」

「俺もそこに居るから遊びおいでー」

「はい、ぜひ。冒険者として暮らすんですか?」

「そうなるかな。レウルムも一緒に来てくれるから、冒険者活動しつつメリサの研究眺めてる予定」


 第二大陸のトルといえば、イツァムナー同盟という四国で組まれた同盟の一国だ。

 内海に面しているので色々な物が集まるし、色々なものが出ていく。ついでに他の国と違ってイツァムナー同盟諸国は四国が強く繋がっているから、もし魔道具が完成したら一気に広まる事だろう。


 魔道具の制作工房ってことなら学校よりもやれることが多いだろうし、きっと進展ないし完成するだろう。遊びにおいでって言ってもらえたし足を伸ばすことがあれば顔を出そう。

 メイズさんは冒険者活動を主軸にするらしいからギルドで会うこともあるかもしれない。


「メリサー!」

「はーい!ごめん、私ちょっと行ってくる」

「あ、じゃあ私はこの辺で」

「そっか、じゃあねセルリア。また今度」

「はい。……卒業、おめでとうございます」

「ありがとう」


 何となく、もう一度声に出してから立ち去る。

 これで今生の別れってわけでもないんだし、多少軽くても良いか。

 先輩たちが出発する前にもう一回くらい会えるかもしれないしね。


 とりあえず撤退して杖を揺らしてのんびり歩いて食堂の方に向かう。

 多分リオンとシャムとロイはそれぞれ先輩たちと話し終わったら食堂に行くだろうからそこで待っていよう。


 お茶でも飲みつつ休みのあれこれを考えている間に皆来るでしょ。

 なんて思いつつ食堂には行ってお茶を頼んだら後ろから肩を叩かれた。

 振り返るとそこにはソミュールが立っていた。部屋で寝てるもんだと思ってたけど、食堂に居たのか。


「どしたのソミュール」

「んー?見つけたから?」

「そっか。お茶飲む?」

「飲むー」

「お姉さーん、カップ二個にしてくださーい」

「分かったわ。クッキーおまけしてあげる」

「わーい」

「ありがとうございます」


 一人だらけようかと思っていたけど、ソミュールが居るなら聞きたいこともあるしちょうどいい。

 今日はあんまり眠くもない日みたいだし色々聞けそうだ。

 休みの間の話のほかに、ダンスパーティーの日にミーファから聞いたあれこれも聞きたいので逃がさないぞ。


 照れるから本人には言わないんだってミーファから聞いたけど、それをミーファから聞いた私も結構恥ずかしかったんだからな!

 こら!何かを察して逃げようとするんじゃない!


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