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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
195/477

195,昼休みの過ごし方

「お疲れー」

「お疲れ……」

「大丈夫か?」

「どうにか……?」


 昼食を食べに食堂に向かうと、シャムとロイが死にそうな顔をして焼き菓子を頬張っていた。

 私も疲れたからミニベリータルト持ってきたけど、こんなに死にかけの顔で食べるものだっけ。

 まあ、何はともあれとりあえずご飯を食べるくらいの元気は残っているみたいで何よりだ。


 席に座って昼食に手を付けつつ、リオンと顔を見合わせる。

 こっちも中々大変だったが、疲れ方が違うというかなんというか。

 頭脳労働、大変そうだなぁ。これがまた午後もあるんだもんね。


「そういえば、試合してたんだよね?どうだった?」

「ソミュールが優勝。リオンが二番目」

「セルちゃんは?」

「ソミュールに負けた」

「それの前にミーファはセルに負けてたぞ」

「見たかったなぁ……」

「そっちは今日も大変そうだね」

「まあ、去年とおんなじだね……難易度だけ一気に上がったけど……」


 大変そうだなぁ……ご飯も食べてるけど、なんというかいつもと違って味わうというか詰め込んでる感じがする。脳に栄養を入れることに全力を尽くしてるのかな?


 卒業式が終わればまた休みに入るのでその前にどこか遊びに行ってもいいかもしれない。

 今回は色々行く場所があるから帰るのは一人で、って姉さまから手紙が来てたしね。

 前の休みに行けなかった場所に纏めていく感じになるのかな。お茶会にも呼ばれてるらしいし。


 皆も今回の休みは村に戻るみたいなので、リオンはまた暇な日々になるのかな。

 ……まあ、ソミュールはいるし、ミーファもソミュールと一緒に居ると言っていたから二人と遊んでいるんだろう。私も遊びに来たいのでそんなに暇にもならないかもしれない。


「……まだ午後もあるのか……」

「んな嫌そうにすんなよ。俺は座学よりずっといい」

「嫌って言うかちょっと休みたいよね」

「わかるぅ……」

「よしよし、終わったらお茶会にしようね……」


 心底疲れた声を出したシャムの頭を撫で、さっさと昼食を食べきってしまうことにした。

 午後の手合わせの場所は屋外運動場なので、早めに移動してちょっと寝よう。

 シャムとロイも午後のテストに向けて早めに移動するらしい。大変だなぁ。


 食事を終えて食器を片付けて、リオンと一緒に屋外運動場に向かう。

 既に移動してきているのも何人かいるけれど、まだ大半は食堂に居るころかな。

 まだ午後のテストが始まるまでは時間もあるし、人も少ない。予定通りお昼寝に興じるとしよう。


「じゃ、私はちょっと寝る」

「おう。先生来たら起こすわ」

「おねがーい」


 芝生の上に寝転がって、杖を抱えて目を閉じる。

 通り抜ける風が心地いい。このまま何にも邪魔されずにただお昼寝をするならとてもいい日だ。

 まあ、そうもいかないので疲労を持ちこさないためにもさっさと眠りについてしまおう。




 寝転がってすぐに寝息を立て始めたセルリアを眺めて、リオンはぼんやり考える。

 よほど疲れていたのか、本人が前に言っていた通りものすごく寝つきがいいのか。というか本当に寝ているのか。そんなことを考えて前髪を救い上げてみたが、全く反応しないので本当に寝ているらしい。


 疲れているのなら寝た方がいいだろうし、セルリアは寝起きもいいのでとりあえず起こさないように剣を抱えて空を眺める。

 徐々に集まってきた人の足音のうち一つがこちらに向いている事に気付いてそちらを向くと、眠っているソミュールを背負ったミーファが歩いて来ていた。


「セルちゃん、お昼寝?」

「おう。ソミュールも寝たか」

「お昼にパン一つ食べてすぐに寝ちゃった。始まったら起こしてーって言ってたけど……」


 よいしょ、と背負っていたソミュールをセルリアの横に降ろして寝かせたミーファは、そのままリオンの前に座る。

 耳が後ろを向いているのは、そちらからする音が何か気になっているようだ。


「午後、どうなるかな」

「個人戦よりやりやすいんじゃねえか?」

「そうだね。よろしくね」

「おう」


 笑い合って、そのまま時間まで雑談していることにした。

 試合の進み方はまだ分からないので、作戦会議なんかは出来ない。なので話題になるのはテストが終わった後のことだ。


 休みの予定や、行きたいクエストなどの話をしている間に時間になったのか、先生が歩いてきているのが見えた。

 セルリアとソミュールを起こそうとどちらともなく話を切り上げ、スヤスヤと寝息を立てる二人を揺さぶるのだった。




 リオンに起こされて、欠伸を噛み殺しながら身体を起こす。

 いつの間にか横でソミュールも寝ていた。うーん、心地よさそうに寝てる。

 私もまだもうちょっと寝ていたい気分だけど、先生も既に来ているようなのでそうもいかない。


「おはよ、ありがと」

「おう。……ソミュール起きねえな」

「ソミュちゃーん!」

「んぅー……」

「駄目そう?流石に午前の魔力消費多すぎたのかもね」


 楽しそうにドッカンドッカンやってたしなぁ……私相手もだけど、リオン相手にもあれこれやっていたのでこのまま今日はもう起きないかもしれない。

 なんて話しながらどうにか起こせないかとあれこれしていたら、ヴィレイ先生が傍に来ていた。


「起きなさそうか?」

「起きないに一票」

「俺も起きないに一票」

「私も起きないに一票……だけど起きてソミュちゃん!」


 満場一致で起きないだろうという事になったけど、どうにか起こそうと頑張るミーファの努力を無下にするわけにもいかないと思ったのか、ソミュールの居るグループの初戦を最後に回してそれまでに起きれば参加、という事になった。


 私たちは普通に試合もあるけれど、まあ空いている時間にどうにか起こせないかやってみよう。

 ソミュールと同じ組の人たちも察して傍に来ているから、彼らにも頑張っていただいて。

 その後場所を移動したりなんなりをやっている間に授業開始の鐘が鳴る。


「ソミュちゃーん……」

「枕取ってみる?」

「取れるかこれ?」


 抱え込んでいる枕を取り上げれば起きたりするのでは、とやってみたが無駄に強い力で抱えているせいで全然取れなかった。

 リオンがやると枕が破けそうだしなぁ……なんて言っている間に対戦表の発表が終わっていて、慌てて確認して準備を始めるのだった。


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