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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
188/477

188,二巡目ですでに大変

 リオンの試合はあっさり終わった。

 最初の一撃で相手がリオンの剣を受けきれずに剣が場外まで飛んでいったのでそれで終わりだ。

 なのに、リオンは別に避けられたり遠巻きに眺められたりしていない。なんでだ。


「おつかれ」

「おー」


 戻ってきたリオンに声をかけつつ、次の試合が始まったのでそちらに目を向ける。

 そろそろ二巡目が始まるなぁ。ミーファ相手だから気合を入れないと。


「……そういえばさっきの話だけど」

「やめろやめろ追及すんな」

「えーなんでー」


 ここまで分かりやすく避ける話題も珍しい。

 けど、私のことだし気になるしまだ次の試合まで時間もあるし、ということで聞き出すことにした。

 気になるからね、仕方ないね。


「……なに、なんか怒ってる?」

「いや怒ってはねぇけど」


 それにしては不機嫌そうというか、なんというか。

 まあ不機嫌ですって顔に書いてあるほど分かりやすくはないんだけど……何なんだろう。

 言葉を濁されれば濁されるほど気になってくる。


「んー……?」

「なんでそんな気にしてんだよ」

「いや気になるでしょそりゃ」

「普段そんな気にしねぇだろ」

「普段そんな態度取らないじゃん」


 私が折れるかリオンが折れるかの押し問答だけど、今回私は折れるつもりはないので気持ち的には勝っている。なんかリオンが逃げ腰だからとりあえず追い詰めてみようの精神だ。


「だぁもう!やめろ覗き込んでくんな!」

「いいじゃん教えてくれても!そこまで避けられたら気になるじゃん!」

「二人ともー。声結構響いてるよー」

「それはごめん!」


 やいのやいの言い合っていたらちょっと声が大きくなっていた。

 かけられた声に謝罪を返して、とりあえずリオンの顔を覗き込むのに前のめりになっていた身体を引っ込めて壁に寄りかかる。


「なんだよーリオンのけちー」

「ケチは関係ねぇだろ」

「そんなに言いたくないこと?」

「そこまで食いつかれるとむしろ言い辛れぇんだよ」


 そうは言われても気になるんだから仕方ない。

 そんなことを考えている間に試合は二巡目に入っていて、そろそろ準備をした方が良さそうな気配がしてくる。


 まあ別に何か特別用意しないといけない物も無いんだけど、ちょっと身体は動かしておきたい感じだ。何せミーファ相手だからね。

 身体を動かし始めた私を見てリオンが明らかにほっとしているのが凄く気になる。そういうあからさまな態度取るから余計に気になるんじゃん。


「はぁー……よしっ」

「おー。頑張れー」

「戻ってくるまでに説明文考えておいてね」

「諦めてねえのか……」


 むしろ諦めると思っていたのか。

 私の興味が他に逸れるまでは問い詰めるつもりなのでなるべく早く諦めて欲しい。

 そんなことを考えながら壁から離れて手合わせ場に向かう。


「よろしくね、セルちゃん」

「こちらこそよろしく。負けないよぉー」


 横に来たミーファに笑いかけ、ちょうど終わった目の前の試合に目を向ける。

 人が居なくなってから円の中に降り、目を閉じてフーっと長く息を吐いた。

 ゆっくりと目を開けて向かい合ったミーファは、既に目つきが変わっている。


「第十九試合、始め」


 かかった声に反応して、一気に風を起こす。

 ミーファの動きを見るより先に左側に動いてスッと息を吸った。

 声を出すより早く私がさっきまで居たところにミーファが斬り込んでいたので内心ちょっと冷や汗をかく。


「舞え、踊れ。我っ!」


 いつもの演唱から始めようとしたところで斬り込まれ、言葉が途切れる。

 手合わせとかでいつも唱えているこれは自分の周りを風で覆う私の通常装備になっている魔法なのだが、ミーファ相手に準備している隙はちょっと無さそうだ。


 仕方ないのでこのまま行こう。

 魔力量にはわりかし自信があるので、ちょっとくらいならゴリ押せる。

 ミーファは速さが何よりの強みだが、風は速さ勝負にはもってこいなのだ。


 無演唱で使える魔法でミーファの攻撃を避けて、カウンターに意識を向ける。

 耳が動いているのは、風の動きを音で判断しているんだろうか。

 これは一旦上に逃げないとジリ貧かな。


 ミーファの短剣を杖で弾いて、身体の間に風を起こしてミーファだけでなく私も吹き飛ばして距離を稼ぐ。

 体勢を整えている余裕はないのでミーファが着地したのを確認するより早く杖を下に向けて身体を上へ押し上げた。


「舞え、踊れ。我風の民なり、風の歌を歌うものなり」


 纏えるなら纏っていた方が絶対にいいのでとりあえず風を纏い、私が飛んでいる位置まで跳んできたミーファを迎撃する。

 流石ウサギの跳躍力は凄いなぁ。こんな所まで一歩で届くのか。


「っせい!」

「あっぶない!」


 ちょっと感心していたら二撃目がきた。

 この高さ普通に届くんだ……まあでも地上にいるよりは一撃一撃の間があるしこのままちょっと魔法の仕込みをしよう。


「踊る風はワルツのように」


 練り終わった魔力に演唱を吹き込んで、杖の先に旋風を作っておく。

 ワルツとか言う割には結構な勢いで回っているけど、まあ風の魔法はダンスとかの演唱多いからあまり気にしても仕方ない。


 仕込みが終わったところでミーファから三撃目の空中攻撃が来た。

 それを交わして、さらに上から風を起こして打ち落としにかかる。


「おっちないんだ!?」

「そぉれっ!」


 当然のように態勢を整えて着地され、ついでに反撃も食らいそうになった。

 もっとしっかり押さえこまないといけないのか……流石、大変な相手だなぁ。


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