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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
182/477

182,小型魔獣の討伐

 フォーンの門を潜り抜けて外に出ると、森の香りを乗せた風が吹いていた。

 うーん、いい天気だ。青空と遠くに見える森の深い緑がとっても綺麗。

 こういう日は上空を思いっきり飛びたくなるんだよねぇ。


「さて、じゃあササッと移動しようか」

「はーい」

「あっちだよな?」

「うん」

「セルリア、薄っすらでいいから風を吹かせて索敵しててくれる?」

「分かりました」


 左手で持った杖をクルリと回して風を起こし、元々吹いていた風に混ぜてあたりに広げていく。

 魔力探知とざっくりした地形把握のための風だけれど、最近精度が上がってきて把握できる範囲が広がってきている。そのうち遠視もこれに混ぜれるようになりたいなぁ、なんて思っていたり。


 風は大体どこにでも入り込めるから索敵用の魔法としてはかなり優秀なんだよね。

 遠視の精度も上がってきているし、攻撃魔法の授業を選択しているはずなのに私はどんどん索敵能力が上がっている。


 属性的にそういう魔法も多いし文句はないけれど、やっぱり派手さは炎や雷の方が上だよなぁ、なんて思ったりもする。

 いいんだけどね、風好きだから。


「目的地はここから大体二キロ先、小さな泉が湧いていて、動物や魔獣がよく立ち寄るからそこを見て痕跡がないか確かめよう」

「はい」

「おう」


 居場所が分かっている魔獣の討伐よりもこうして目的の魔獣を探すところから始まるクエストの方が多いから、慣れている人の探し方を知れるのは嬉しい。

 シャムが授業選択を魔物研究にしてるから、痕跡とか見つけるの得意なんだよね。


 冒険者登録したら一緒に行こうね、とは言っているからそのうち登録して一緒にクエストに出ることもあるかな。

 ロイはロイでダンジョン補佐取ってるから登録するだろうし、四人でクエストを受ける日もそのうち来るだろう。


「……あ、泉の近くに魔力反応があります」

「数は?」

「三……あれ?違う、もっと多いな」


 泉の近くに魔力を見つけて、数を数えてみたけれど何か違和感がある。

 足を止めてよくよく探ってみると、どうやら三つの固まりに分かれているだけで魔獣の数はもっといるみたいだ。


 移動よりも索敵優先の指示が出たので風の量を増やして詳しい数を数え直す。

 私の風に気付いたのかちょっと動きが変わったけれど、逃げる様子はないのでとりあえず大丈夫。

 というかじっとしていたのが動き出したおかげで数の把握が楽になった。


「八体、七体、八体。合計で二十三体の群れですね」

「逃げてはいないね?」

「はい。気付いて警戒はしてるみたいですけど、場所までは分かってないと思います」

「オッケー。リオン、剣抜いておきな」

「うっす」

「セルリア、別行動で空から離脱する個体が居ないか監視しててくれる?見つけたら倒すか足止めするかしてほしい」

「分かりました」


 索敵の風は少しだけ残して霧散させ、足元に風を起こして空に上がっていく。

 シャウラさんとリオンは泉を挟み込むように動いているのでその隙間を埋めるようにあらかじめ風を飛ばしておく。


 左手のブレスレットに杖を固定してあるので杖を回して魔力消費を誤魔化すことは出来ないけれど、まあこのくらいなら余裕だろう。

 これでも魔力量はものすごく多いって太鼓判押されてるからね。


 すいすいと空を進んで先に泉の上に到着し、私を見て一気に騒ぎ始めた小型魔獣を見下ろす。

 ちょっと長めの垂れ耳に額から伸びる一本角、仔馬くらいの大きさでこげ茶色の身体。

 馬と違ってたてがみは無く、尻尾が長くて針金くらい硬くて結構攻撃力がある。


 これが今回の討伐対象であるアンプラという魔獣の特徴だ。

 基本的に群れで行動していて、同種同士では争わない。まあ、序列を決めるのに威嚇合戦してることはあるらしいけど。


 そんなアンプラは群れの個体数が増えるごとに気が大きくなっていくというちょっとゆか……いや面倒な特性がある。

 数が少ない群れは人の来ない森の奥とかでひっそり暮らすんだけど、数が多くなると村を襲ったりし始めるのだ。


 今回のクエストは二つの群れが一つに纏まって大きな群れになったので、人的被害が出る前に討伐するという内容だった。

 多少の討ち漏らしは許容されるらしいけど、まあ出来ることならしっかり纏めて討伐しきりたい。


「……あ、逃げてる」


 逃げようとしている個体を見つけて風を起こし、上から切り伏せて他が居ないか確認する。

 とりあえずこの個体だけだったみたいだ。他に逃げようとしている個体が現れるまで私は上空待機なのでリオンの動きを見ていることにした。


 リオンは重量武器だから小型魔獣の討伐は不得手のはずなんだけど、あの重い大剣を軽々扱って危なげなくアンプラを斬り飛ばしていた。

 ……宙を舞ってるよ仔馬くらいの大きさはあるはずのアンプラが。


 シャウラさんは言わずもがなだし、私は私で逃げ出そうとしている個体を見つけては足止めして倒してを繰り返している。

 空から見ていると二人の動きの違いが見えて面白いなぁ。


 シャウラさんは片手剣、リオンは大剣なのでこれはそのまま武器の違いでもあるんだろう。

 というかリオンの筋力本当にすごくない?持たせてもらったことあるけど、あの剣本当に重くて両手でどうにか持ち上げられる感じだったのに、なんであれ片手で操れてるの?


「……ん?シャウラさん!」

「どうしたのセルリア」

「上空になんか居ます!」


 観察と監視に勤しんでいたら急に空が暗くなった。

 見上げると何か大きなものが上空を飛んでいる。

 何が居るのか分からないけれど、とりあえずシャウラさんに報告しておく。


「本当だ、なんだろう……」

「とりあえず討伐は終わったぜ!」

「討伐完了の証に角取らないといけないし……でもまあ、安全第一だし警戒しつつ一旦退避しようか」

「はい」

「おう!」


 少し距離を取って空を見上げていたら、そこに居た何かはどこかへ移動していった。

 ……なんだったんだろう、あれ。一応魔力は感じられたし、なんかじっと見られている感じはあったから生き物だったと思うけど……


「……うん。角を回収して素材はぎ取って、クエスト完了の報告と一緒にさっきのも報告しておこうか」

「おう!セルは周りの警戒か?」

「そうだね。リオン剥ぎ取り出来る?」


 杖を回して風を起こして、周りの警戒とさっき空にいた者が飛んでいった先をちょっとだけ覗き見る。……本当にあれ、何だったんだろう。


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