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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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167,回復・攻撃合同授業

 天気がいいなぁ。なんてのんびり考えながら晴天の空を見上げる。

 昨日の朝は雨が降ってたけど、昼には晴れて今は地面も乾いているし座っててもいいかなぁ。


「セルリア?」

「あ、エマさん。おはようございます」

「おはよう。何してるの?」

「いい天気だなぁ、って」


 選択授業なので特別仲のいい同級生は居ないのだけれど、飛行魔法の一件以来一つ上の学年のエマさんが声をかけてくれるようになった。

 そのまま授業開始まで話していることも増えた。エマさんは右手で杖を持っているのでお互いに危険がないように流れるように私の右側に来てくれる。


 杖の大きさが一定以上ある魔法使い同士が話す時、皆流れるように自分と相手の杖の間合いを計って立ち位置決めるんだよね。

 私とエマさんだとこうして横に並ぶのが一番安全だけど、人によっては向かい合う方が安全だったりもする。


「授業を始めますよー。今日は回復魔法担当のアリシア先生が急用でいらっしゃらないので、攻撃魔法と回復魔法の合同授業になります」


 ノア先生が鐘の音と共に現れ、それに反応してばらけていた生徒たちが先生の元へ集まり始める。

 私とエマさんはそれほど離れていなかったのでこのままでいいだろう。

 ……というか、なんか人が多いと思ったら回復魔法の人たちが居たのか。


 回復なら補助の方が相性いい気もするけど、攻撃と一緒にやるんだな。

 ……あ、もしかして補助の方が人数が多いとかあるのかな?気にしたことがないから分からないけど、それなら納得。


「どうせなら普段出来ないことがしたいですねー」


 出席確認をしているノア先生がご機嫌だ。

 先生は本当に魔法が好きなんだなぁ……なんかもう回復魔法見たい欲が目に見えてる感じがする。

 というか今日の内容全く決まってないんだ。まあ、確かにアリシア先生が急用で居ないって言ってたし今日か昨日くらいに急に決まったんだろう。


「……とりあえず小グループに分かれましょうか。攻撃魔法の生徒は二人か三人、回復魔法の生徒が一人の三、四人組を作って下さい」


 こういう組を作るの苦手なんだよなぁ、と思いつつエマさんを見ると優しい笑顔を向けられた。

 そしてそのままの流れで組みましょうか、と言ってくれる。

 エマさんは本当にいいお姉さんだなぁ……戦闘時以外は本当に優しいお姉さんだ……


 戦闘時は強くてかっこよくてちょっと怖いお姉さんだけどね。

 単独戦向き魔法使いとか言われているだけある。

 二個目の専攻授業は体術らしいし、近付くと杖でぶん殴るタイプの魔法使いなのだ。


 私も杖を振り回すことはあるけど、本気で殴ろうとは思わないからなぁ……

 エマさんの杖は一から作ってもらっただけあって乗るためのステップの他にも核の魔石を守るために魔石の付いている先端の飾りは裏側がしっかり覆われていて、それで何か殴っても問題ない作りになっている。


「やあ、エマ。混ざってもいいかい?」

「あら、アゼル。私はいいけど、セルリアはいい?」

「いいですよ」

「ありがとう」


 声をかけてきたのはプラチナブロンドの髪をポニーテールにした男の人。

 エマさんの知り合いみたいだし、一つ上の先輩かな?

 とりあえずエマさんの斜め後ろくらいに立っていよう。


 エマさんは私が人見知りするのも知ってるから何も言わずに間に入っていてくれるし安心だ。

 これで指定された組も作れたから後は他が組み終わるのを待つだけだしね。

 組むの早かったからちょっと待機時間が出来たけどそれはまあいいだろう。


「時間もあるし、自己紹介でもしておく?」

「えっ」

「セルリアもそのままじゃ授業に支障が出ないとも限らないし」


 エマさんに背中側から引っ張り出されてしまった。

 力が強い。全く抵抗できなかった……これが単独戦向き魔法使いかぁ。

 私も単独戦向き魔法使い目指そうかな。そうすれば大抵の事には抵抗できそうだし。


「初めまして、僕はアゼル。よろしくね」

「セルリアです。よろしくお願いします」


 私が逃げると思ったのかエマさんが肩に手を置いている。

 流石にそこまでの人見知りではないから逃げたりはしませんよ……

 ただちょっと、エマさんの後ろが安心するだけであって別に知らない人が全員怖いとかそんなことも無いわけなので。


「アゼルは回復と補助の魔法使いだから、何か聞きたいことでもあれば今のうちに聞いておいてもいいかもね」

「両方魔法授業なんですね」

「うん。取っては居ないけど、攻撃もそれなりに使えはするよ」


 魔法以外の攻撃手段を、とか考えている私とは違って全て魔法でこなす完全なる魔法使いだった。

 回復と補助のツルバミさんな感じかぁ……いや、あの人が攻撃以外に特化することはないんだろうけども。


「君のことはエマから時々聞いてるよ。風に愛された魔法使いだって」

「エマさんそんなこと言ってたんですか」

「嘘じゃないでしょ?」

「まあ嘘ではないですけど……」


 なんで私が話題になるんだろうか。というか二人は結構仲が良いみたいだ。

 そんな話をしているうちに全員が組を作り終わったのかノア先生が手を叩いた。


「組は作れましたね?それでは改めて回復、攻撃の複合授業を始めましょう」


 ニコニコと笑う先生に何やら嫌な予感がしてくる。

 ノア先生の笑顔が怖い。これはあれだ、去年の巨大氷の時と同じ感じだ。

 つい反射で杖を構えつつ様子を見てしまう。


「回復魔法の中には物の復元を行うものもあります。なので、今から作る的を回復魔法の生徒は復元し続け、攻撃魔法の生徒は壊してください」


 思わずうわぁ……と声が出た。

 これ、人数差があるから回復の人の方が辛いやつだ。

 まあでも壊せって言われたしなぁ。的が何かによるけど、全力で破壊するとしよう。


 なるべく風で壊しやすいものがいいなぁ、と思いつつ先生を見ていたら、何やらバキバキと大きな音が鳴り始めた。

 ……ついでに、地面の一部も捲れて行っている。


 そうして出来上がったのは木の箱の中に岩が詰め込まれたもの。

 木は燃やせるけど岩は燃えないし、岩は水で崩せるけど木は水では崩しにくいという何とも面倒な的に出来上がっているようだ。


 まあ、私は風なので大体なんでも関係ないんだけどね。

 物理力低いんだよ風って。ところであれ風穴開けたら破壊判定になるかなぁ?

 まだ開始の合図もないけれど、とりあえず杖をブンブン回していく。


 全組の頭上に的が浮かび、エマさんが杖を勢いよく地面に当て、アゼルさんも懐から黒いタスクを取り出して構える。

 それと同時に開始の合図がかかり、全員が一斉に魔法を練り上げ始めた。


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