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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
153/477

153,近接戦闘体験

 良く晴れた空の下、ゴッと鈍い音が響いた。

 近接戦闘をやってみたいと言ったらシオンにいが相手をしてくれることになったので、みんなで庭に出たのが二時間ほど前。


 私とロイがやってみたいと言い始めたので最初は二人で相手をしてもらっていたのだけれど、疲れたから交代して今はリオンとシオンにいが手合わせ中だ。

 リオンはいつもの大剣を持っていて、シオンにいは硬い木の棒でそれをいなしている。


「こうして見てるとやっぱりリオンって凄いんだなぁって思うよね」

「そうだねぇ。まずあんな重い剣持てないもんね」

「あんなに軽々振るものじゃないよね」


 ロイと二人で木陰に座って観戦しながらダラダラと話していたら、横にウラハねえが腰を下ろした。

 手にはお茶を持っていて、ひとつずつ渡してくれたので受けとって口を付ける。

 運動をした後だからか、氷入りなので思わず一気に半分くらい飲んでしまった。


「ぷは」

「アイスがオススメの茶葉を貰ったから淹れてみたの。どうかしら?」

「美味しいです」

「さっぱりしてて飲みやすいね」


 貰い物ってことはレヨンさんあたりから来たものかな。

 まあそれ以外からも姉さま宛の贈り物は結構来るから分からないけどね。

 何気なく飲んでたお茶が物凄い高級品だった、とかもあるから油断できない。


「これなんてお茶?」

「何だったかしら……ダラシャだったと思うわ」

「ダラシャ……初めて聞いた。ロイ知ってる?」

「第一大陸のどこかで作られてるお茶じゃなかったかな」

「あら、詳しいのね」

「流石ロイ」


 まさか本当に知っているとは思わなかった。もしかして有名なお茶なのだろうか。


「何飲んでんだー?」

「あ、リオン。お疲れ」

「淹れてきましょうか。シオンは?」

「貰うー」


 リオンとシオンにいの手合わせも一旦終わりになったのか二人が歩いて来た。

 ウラハねえがお茶を淹れるために家の中へ戻っていき、リオンが私の横に腰を下ろす。

 息が上がっているのはリオンだけでシオンにいはケロッとしていた。


「どうだった?」

「全然敵わねぇ。本気出されたら追えねぇわ」

「なんや、気付いてたんか」

「まあ、流石に」


 本気のシオンにいはびっくりするほど素早いので、リオンが追えるギリギリで動いていたのは本人にもバレていたみたいだ。まあシオンにいがいかに素早いかは私が散々話してたしね。


「セルちゃんは剣扱うん?魔法だけで行くんかと思っとったわ」

「んー……やってみたいなあとはずっと思ってたよ?剣に魔導器機構組み込んであるのとかすごい好きだし」

「モクランの剣もえらい熱心に見とったもんなぁ……なるほどなぁ」

「魔導器機構?」

「剣で魔法撃てるように、ってこと」

「そんなん出来んのか」


 色々面倒だから普通の魔導器や剣と比べるとかなり値が張るんだけど、憧れの品なのだ。

 いつか入手したいと思っているし、どうせなら剣としても使えるようになっておきたい。

 そんなわけで今回やってみたいと騒いだわけだ。


「扱うならレイピアがいいと思うわ。セルちゃんは風の槍も使えるし、応用で速度も上げられるから」

「そうなんだ」

「魔導器機構が入るならちょっと短めになるやろうし、ちょうどええな」


 追加のお茶を持って戻ってきたウラハねえがシオンにいの横に腰を下ろす。

 うちで一番武器系に詳しいのはトマリ兄さん……と、思いきやこの二人なのだ。

 トマリ兄さんは武器とか使わないからそこまで詳しくはないらしい。


 逆に戦わなそうなシオンにいとウラハねえは武器を使うから結構詳しい。

 暇なときに武器の歴史とか聞かせてくれたくらいだ。


「ロイ君は使いたい武器とかあるん?」

「そういうこだわりはあまりないですね。自衛が出来ればそれで」

「それならあんまり値が張らない物がいいわね」

「替えが聞くって意味では片手剣が種類も多いし楽やろなぁ」

「盾は駄目なの?」

「わあ、コガネ姉さんどこから……」

「屋根から」


 当然のように言ってるけど屋根でお昼寝しながら見られてたらしいってだけで結構驚くからやめて欲しい。

 気になる話題だから降りてきたんだろうけど、ロイもリオンも驚きで固まっちゃってるからね?


「反撃も自衛のうちやろ?」

「攻撃できる盾とかなかったっけ」

「あれはもう廃れたわよ?」

「そうなんだ……好きだったのに。ちょっと残念」


 なにやら雑談を始めた三人をよそに固まっていた二人の硬直が解けた。

 うちの兄姉たちは突然現れることも多いから流石に慣れたんだろう。

 最初のころはもっと長く固まっていた、気がする。


「結局、ロイの武器は何がいいって話になったの?」

「片手剣でええやろなぁ。細かいことはやりながら好みを見つけたらええよ」

「長さとか重さとか、やろうと思えばどこまでもこだわれるからその時に使いやすい物を選ぶと良いわ。鍛えていけば扱える物も増えるし、一つにこだわる必要はないもの」

「まずはある程度筋力を鍛える所からだね。頑張れ」


 ロイの硬直が解けたので話を戻したら、しっかり考えは纏まっていたみたいだ。

 筋力に関してはその通りだと思うので、コガネ姉さんに習って頑張れーと声を出しておく。

 私は常に杖を振り回しているからこれでも結構腕力がある方なのだ。


 リオンほど、とはいかなくても鍛えて損はないからね。

 なんて話していたら、コガネ姉さんが練習用に木刀を作ってくると言って去って行った。

 どうやって作るつもりなのだろう。木を削って作るのはちょっと時間がかかる気もするけれど……


 まあ、コガネ姉さんなら木を削るのも魔法で出来るだろうし、二人分の木刀くらい簡単に作成できるんだろう。

 姉さんが戻ってくるまで休憩になったので、お茶を飲み切ってコップを置いてくることにした。


 休みが終わるまであと数日。

 色々やったけれど、まだやりたいこともあるのでダラダラしてはいられない。

 そんなことを考えながらコップを洗って戻ってきたら、コガネ姉さんが太めの木の枝を二本持って戻ってきていた。


「セルリア、長さどのくらいがいい?」

「お任せするー」

「あの状態から削り出すことには何も言わないの?」

「慣れて。これから多分凄い技術が見れるから何も言わないでおいて」


 ロイの横に腰を下ろして、木の枝を持って魔法を発動させているコガネ姉さんに目を向ける。

 ふわりと漂ったのは無属性の魔力で、その中に木の枝を浮かせて削り始めたコガネ姉さんに三人揃って何も言えなくなったのだった。


コロナワクチンの副反応に唸っていたら普段投稿している十時に間に合いませんでした。てへ。

今後も十時に間に合わなかったらコッソリ二十時に上げると思います。

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