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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
148/477

148,屋台広場でお昼ご飯

 本屋に入ってすぐに何も言わずとも自由行動になり、シャムがそそくさと奥へ入って行った。

 私も何か面白そうなものを探してみよう、と店内をウロウロする。

 家になくて学校の図書館にもない本、だと結構あるけれど、その中から私が買える値段で私の興味がある本となると随分数が減ってしまう。


 ロイはロイで何か本を見ているようで、リオンは何も分からないという顔をしながらその横に居る。

 ぐるりと見渡してミーファの姿が見えなかったので少し探してみると、児童書の場所に白いうさ耳がピコピコしているのが見えた。


「ミーファ」

「あ、セルちゃん」

「何か探してるの?」

「えっと、これくらいならそんなに時間もかからないで読めるかなって」

「そっか」


 読み書きはもう授業に支障がないくらいには練習したミーファだけれど、読書には慣れていないから時間がかかるのだと前に言っていた。

 なのでこういった読みやすいものから慣れていこうという考えだろうか。


「いいと思うよ。私が昔読んでた本も帰ったら出してみようか」

「いいの?ありがとう!」


 私が欲しがって何冊も買ってもらったから私の部屋の本棚に入っているのだ。

 種類も色々あるから好みの物も一つくらいあるだろう。

 ミーファは勉強熱心で素晴らしいねぇ、なんて言いながらリオンの方を見たら、ロイに何か聞いて何も分からなそうな顔をしていた。


「セルちゃんとかロイ君が読む本は難しそうだよね」

「ものによるかなぁ。一ヵ月かけて読む本もあるし、一日で終わるのもあるし」


 姉さまの薬学書なんかは読ませても貰えなかったりするしね。

 何が読めるから偉いというわけでもないから、好きに読めばいいのだ。

 楽しい方が長続きするし嫌いなものを無理に見る必要はない。


「これ気になるから買ってこようかな」

「うん。私はシャムを探してくるね」


 会計に向かうミーファを見送ってシャムが消えていった店の奥に向かい、本棚の間を一つ一つ見て回る。

 途中でシャムを見つけて声をかけると、彼女は手に持っていた本を閉じて笑顔でこちらを向いた。


「探し物は見つかった?」

「残念ながらないみたい。関係ありそうな本はこれで最後だけど、書いてなかった」

「そっか。それは残念」

「まあ、そう簡単に見つかるとも思ってないからね。のんびり探すよ」


 本を棚に戻したシャムと一緒に入口の方に戻ってくると、私たち以外はもうすでに集合していた。

 ミーファの買い物は終わっていて、ロイとリオンは買うものがなかったみたいだ。

 店から出て時間を確認しているとリオンのお腹が鳴ったのでとりあえずお昼ご飯を食べることにして、食べ物の屋台が並んでいる辺りに移動する。


「テーブル確保しておくからリオン先に買いに行っておいでよ」

「おう。ありがとなー」


 屋台の並んだ広場にはテーブルと椅子が雑多に置かれていて、空いていたテーブルを確保して椅子に腰を下ろす。

 ロイとミーファもとりあえず待機するみたいなので、リオンとシャムが先に食べたい物を買いに行った。


 私は特別食べたい物も食べられない物もないから、誰かに適当に買ってきてもらおうかな。

 なんて思っていたけれど、困らせてしまいそうだし自分で買いに行った方が良さそうだ。

 考えながら二人と話してリオン達が戻ってくるのを待つ。


「リオンの分だけでテーブル埋まったりしないよね?」

「流石にしないんじゃないかな」


 テーブルが少し小さいからそんなことを考えてしまう。

 五人で座るにはちょっと狭い感じだ。

 元々三人、四人くらいで座る用みたいで椅子も空いているところから一つ持ってきたし仕方ない事かもしれない。


「うし、交代しようぜー」

「おかえりー」


 紙袋をいくつか持って戻ってきたリオンとシャムが椅子に座り、交代で私とロイ、ミーファが席を立つ。

 何を食べようかと話しながら屋台を見て回り、逸れない様に一塊になって進む。


「あ、美味しそう」

「セルリアそういうの食べるんだ」

「普通に好きだよ。……え、意外?」

「意外……だね」


 串焼きのちょっと大きい肉を買ったら二人から揃って意外だと言われてしまった。

 私そんなに軽食のイメージあるの?結構がっつり系も好きなんだけど……

 リオンが一緒に居るからそう見えないだけじゃないかな。うん、きっとそう。


「まあ、とにかくこれが私のお昼ご飯です。うん」

「それだけで足りる?」

「後はパンでも買おうかな」

「あ、じゃああの屋台行ってもいい?」


 ミーファが指さした屋台はパンに様々な具を挟んで売っている店だった。

 タレがたっぷりかかった肉を挟んだものから、葉野菜を何種類か挟んだものまで本当に様々でかなり繁盛している。


「いいね。さっぱりしたの買おー」

「私あの卵入っているのにしようかな」


 ロイは別のものにするらしいのでミーファのものと私のものだけ買って店を離れ、ロイが見ていた店に足を向ける。

 ……何のお店なんだろうここ。何か煮込んでるみたいだけど……


「ロイ、それなに?」

「さあ?よく分からないけど、公認マーク付いてたから気になったんだ」

「ロイ君結構チャレンジャーだね」


 ここの屋台広場は安全面とか色々な項目を全部クリアすると貰えるギルド公認マークのかかった屋台が幾つかあり、なくても営業は出来るけどあったら安全、ということで選ぶ基準の一つになっている。


 ロイは何か分からないけどとりあえず公認マークがついていて安全だからという事で好奇心を優先したらしい。

 ……うん、ミーファの言う通り結構チャレンジャーだ。


「あ、戻る前にお茶買ってくるね」

「はーい。そこに屋台あったよ」

「ありがとう」

「それ持ってようか?」

「いや、大丈夫」


 器を返却するタイプのお店だったから、そのまま追加で物を買うのは大変だろうと思ったけれど片手で持てるらしい。

 もしかしてロイって結構手が大きかったりするのだろうか。


 なんて考えているうちに戻ってきたので、そのままリオンとシャムの所に戻ることになった。


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