表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学び舎の緑風  作者: 瓶覗
147/477

147,質の良いナイフ

 出店の中で揺れに身を任せながらコガネ兄さんおすすめの金物細工のお店を聞いたり、トマリ兄さんおすすめの刃物職人さんの工房を聞いたりして予定を立てる。

 本屋は通りを歩いていれば見つけられるので、途中途中寄っていくことになった。


 お昼ご飯は好きに買って食べなさいとお小遣いも貰ったので、時間を見て何か食べよう。

 イピリアでは魔法が使えないので、私の杖は出店に置いて行くことになる。

 自衛手段もなくなってしまうけれど、そこはまあ、裏通りに入らなければ大丈夫だと信じたい。


 リオンがでっかい剣を背負っているからちょっとした威嚇にはなるだろうし、何かある前にミーファが気付くだろう……と、思うし。

 何かあったらトマリ兄さんとか呼べばいいんじゃないかな。イピリアの中でも闇に沈んで移動出来るらしいから多分助けてくれるよ。


「さあ、もうすぐ着くぞ」

「おー!」

「入ってすぐに降りるか?」

「うん。通りを歩きまわってくる」


 イピリアの中に入ってすぐに出店を止めて降ろしてもらい、杖を置いて出店から降りる。

 シャムが降りるのに手を貸している横で、ミーファがぴょんっと出店から飛び降りた。

 そんなことをやっている間にリオンとロイは降りていたようで、再び動き出した出店を見送って通りの端に固まる。


「ナイフのお店が一番近いかな」

「じゃあそこに向かいながら通りを見てみる感じだね」

「よっしゃ、行こうぜ」


 コガネ兄さんが書いてくれた簡易地図を持って通りを進み、出ている店を眺めながら目的の店を探す。

 途中屋台のお肉に釣られかけるリオンを引っ張ったりもしたが、大きな問題はなくトマリ兄さんが教えてくれた刃物職人さんのお店にたどり着いた。


「ここだ」

「すげえ、広ぇな」

「リオンも予備のナイフとか探したら?」

「そうするかぁ」

「便利だよ。ちょっと小さめの方が持ち運びが楽で邪魔にならない、かな」


 話しながら店内に入って、ナイフが置いてある一角に向かう。

 装飾の多いものから、飾り気のないシンプルなものまで様々だ。

 ミーファはどんなものを選ぶか決まっているようで迷いなく手を伸ばしているが、他は皆とりあえず周りを見ている感じだ。


「どんな基準で選んでるの?」

「うーん……握りやすくて刃の薄いのを選んでるよ。硬いものは短剣で斬るから切れ味優先だね」

「なるほど……」

「今使ってるのがこれ。なるべく似たのにしたいんだ」

「やっぱりその方が使いやすい?」

「いつもとおんなじように出来るからね」

「なるほど、なるほど。そういうものなのか」


 イメージとしては、モエギお兄ちゃん愛用のナイフと同じ感じだろうか。

 コガネ兄さんのは短剣だから切れ味もだけど丈夫さが必要になる。

 刃が薄くなれば切れ味が上がるが、その分脆くなってしまう。


 ちゃんと手入れすれば切れ味は保てるし、武器は丈夫さ優先なイメージがある。

 リオンの剣みたいに重さを乗せて斬るから切れ味はさほど重要じゃない、みたいなのもあるしね。

 そのうち剣も扱ってみたいなぁと思っているので普段扱っている人の話は聞いていて楽しい。


「んー……こっちかなぁ」

「ミーファ選ぶの早いね」

「買い替えも五回目くらいだからね。ここのは全部質がいいから、好みが固まってれば時間はかからないんだよ」

「なるほどね」


 普段は質の良さも見るらしいけれど、ここなら問題はないから何度か握って気に入ったものを即決で買うのだとか。

 リオンの剣選びの半分くらいの時間で終わったんじゃないかな。


「ミーファ早ぇな」

「リオンのは決まらない?」

「良さそうなのは見つけたぞ」

「私先に買ってくるから、もうちょっとゆっくり見てみたら?」

「そうするわー」


 ナイフを持って微笑まし気にこちらを見ていた店主であろうおじいさんの元に向かって行ったミーファを見送り、ミーファが見ていたものより一回りほど大きなものを見ていたリオンの手元に目を向ける。


「それが候補?」

「おう。めっちゃ握りやすいぞ」

「でも決定じゃないの?」

「買うと懐が寒くなる」

「あー……」


 買えるけどギリギリなんだね。

 それでも悩んでいる辺り欲しいは欲しいんだろう。

 刃の光の反射がすごく綺麗。切れ味良いんだろうなぁ。


「でも今買わなきゃもう買えねえよなぁ」

「まあ、そうだね」

「セルんとこ泊めてもらえてる間に買っちまうか……?」

「アリじゃない?学校再開されたらご飯食べれるわけだし」


 シャムと一緒に横からやんややんやと口を出し、揺れ動くリオンを観察する。

 というか最初から買う方向で考えてない?


「あれ?そういえばロイは?」

「剣見に行ったよ。ほら、あっち」

「あ、本当だ。ロイ剣使うっけ」

「やってみたいんだってー」


 まあ、ロイはダンジョン探索専攻してるし自衛手段は持っておくべきだよね。

 とりあえず見てるだけみたいだけど、なんか目がキラキラしてる。

 好きなのかな。憧れる気持ちは凄く分かるけれど。


「おし!買う!」

「心は決まったかい」

「決まった!」

「あ、リオン決まったの?」

「おう!」


 ちょうどミーファが戻ってきて、入れ替わるようにリオンが会計をしに行った。

 ミーファの手には鞘に納められたナイフが握られていて、リオンを待っている間に今までナイフを付けていた場所に新しいものを付け直している。


 終わったのを悟ったのかロイも歩いてきたので合流して会計をしているリオンを待つことになった。

 どうやら会計が終わると鞘を付けて貰えるらしく、何個かある鞘の中から好みの物を選べるようだ。

 ミーファは皮の鞘を選んだらしい。リオンは……木の鞘かな?


 会計が終わったリオンが歩いてきたので、店主のおじいさんにお辞儀をしてから店外に出る。

 ニコニコしながら手を振ってくれたおじいさんに見送られ、大通りに戻って次の行き先の場所を確認する。


 向かう先に本屋を見つけたので、一旦そこに寄ってから金物細工のお店に行くことになりそうだ。

 ……いや、本屋に行った後にご飯になるかな。そろそろお昼ご飯の時間だし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ