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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
146/477

146,出店の出る日

 朝日に目を細めて、ぐっと身体を起こす。

 昨日は結局ウラハねえ達が作ったデザイン案を眺めているだけで終わってしまったけれど、それも昨日のうちに終わった。


 服作りはウラハねえの部屋でやるので、流石に眺めてはいられないし今日は何をしていようか。

 考えながら着替えて一階に降り、シオンにいを見つけて髪を結んでもらう。

 自分で出来るんだけど、まあ甘えられる時に甘えておこうかなって。


「ほい、出来た」

「ありがとう」


 シオンにいも器用だから頼むと綺麗に結んでくれるのだ。

 崩さない様に触ってみた感じ、横が編み込まれてみるみたい。

 あとで鏡でも確認してみよう。


「おはようセルリア」

「おはようコガネ姉さん」

「今日はイピリアに行くけど、着いてくる?」

「あ、どうだろう。確認してこようかな」

「うん、急がなくていいからね」

「はーい」


 そういえば今日は出店リコリスが出る日だった。

 この時間ならロイとミーファはもう起きているだろうから、客間に行ってどうするか聞いてみよう。

 着いて行きたい人だけついて行けばいいからね。


「おはよー。起きてる?」

「あ、おはようセルちゃん」

「おはよう」


 扉を開けたら、予想通りロイとミーファが座っていた。

 朝二人きりになる時間があるからなのか、大分仲良くなっている。

 とりあえず中に入って空いている椅子に座り、部屋の方を窺っておく。シャムが起きるまではもう少し時間があるだろうか。


「セルちゃん髪綺麗だね」

「ありがとう。シオンにいがやってくれたの」

「見せに来たの?」

「それもあるけど、今日出店がイピリアに出るからついて行くかどうか聞こうと思って」

「イピリア……行ったことないな。ついて行ってもいいんだ?」

「うん。私も昔からよくついて行ってたし」


 ついて行ってもお店を手伝うわけではなく、結構自由に遊んでくる感じだしね。

 イピリアは魔法が使えない国だから迷子になるとちょっと面倒なのだけど、私は遊びまわっていたせいで結構道も覚えている。


「行きたいな。イピリアの金物細工見てみたかったんだよね」

「私も行きたい。ナイフ買い替えたいんだ」

「イピリアで探すの?」

「うん。このナイフもイピリアで買ったから、なんとなくイピリアで探そうって決めてたの」


 ミーファは授業でも使ってる短剣とは別にナイフを持っていて、薬草採取なんかの時にも使っているのを見かけることがある。

 かなり使い込んでいるものだとは思っていたけれど、買い替え時期だったようだ。


「ソミュールは……行かないかな?」

「今日起きるかも分からないねぇ」

「リオンは行きそうだけどね。用事は無くても冒険しに」

「確かに。皆行くならシャムも行くだろうなぁ」

「なあにぃ……?」

「あ、シャム。おはよう」


 話していたらシャムが起きてきた。

 眠そうではあるけれど、行くかどうかくらいは確認出来るだろう。

 駄目だったら朝ごはん食べながら聞けばいいしね。


「今日イピリアに出店が出る日なんだけど、付いてくる?」

「イピリア……行くー」

「お、即答。探し物でもあるの?」

「イピリアの本屋は掘り出し物が多いって先生が言ってたの」

「なるほど」


 シャムも行くなら多分リオンも行くよなぁ。

 まあ、出発前に起きるかどうかになるわけだけど。

 朝ごはんの匂いに釣られてここ数日早起きだし、今日もそうなるかな?


 なんて考えていたら窓から風が入ってきた。

 魔力が込められたこれは、朝食を運ぶお手伝いを呼ぶためのものだろう。

 一言告げてから外に出てキッチンに向かい、顔を出すとウラハねえと目が合って微笑まれた。


「朝ごはんが出来たわ。運ぶの手伝ってくれる?」

「うん。……あ、コガネ姉さん、リオンとソミュール以外は皆行くって。リオンはまだ起きてきてないけど、多分行くと思うな」

「分かった、ありがとう」


 報告も済ませて用意された朝食を浮かせて運び、扉を開けていてくれたロイに大皿を渡す。

 お茶も貰ってきたのでとりあえずシャムの前に置き、その横に腰を下ろした。

 私が朝ごはんをみんなと一緒に客間で食べることにしたから、最初からそのつもりで用意をしてくれているのだ。


「いただきまーす」

「いただきます」

「いただきます……おいし……」


 朝食を食べながらイピリアで何をするか話していたら、予想通りリオンが起きてきてロイの横に座った。イピリア行くのか、と不思議そうにしているので内容を説明し、俺も行くーと返事をもらってとりあえずご飯を食べる。


 まあ予想通りだ。出店が出発するまでまだ時間があるから急ぐ必要はないし、のんびり食べながら予定を詰めていこう。

 私はどこに行きたいとかはないので、メインはシャムの本屋巡りとミーファのナイフ探しになるだろうか。


 どこら辺にお店が集中している、とかはトマリ兄さんが詳しいから出店の中ででも聞けばいいかな。

 フォーンの大通りならみんなでウロウロしているけれど、別の国でやるのは初めてなので楽しみだ。

 話しながら朝食を食べ終えて食器を運び、コガネ姉さんにリオンも行くと報告してから部屋に向かう。


 荷物を持って降りてきたらもうすでに商品の運び込みが始まっていて、リオンとロイが近くでそれを眺めていた。

 シャムは荷物を取りに部屋に行っていて、ミーファはソミュールに書置きを残しているところらしい。


「見てて楽しい?」

「楽しい」

「トマリさんすげえなってなる」

「まあ、分かる」

「あとコガネさんがあの姿なのむしろ違和感が出てきたかな」

「それもちょっと分かる」


 数日であれ家の中で過ごしていると、コガネ姉さんを見慣れるからコガネ兄さんに違和感が出てくるんだよね。

 私も昔はなんて呼んだらいいのか分からなくなっていた。


 そんな話をしていたらコガネ兄さんと目が合って、目を逸らしたらリオンとロイも同じことをしていたらしくシオンにいの笑い声が響いて来た。


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