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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
141/477

141,魔視の習得

 部屋に置かれていた荷物はとりあえずそのままにして、私の部屋には別に何もないのでリビングに戻る。

 ウラハねえとモエギお兄ちゃんが片付けをしていて、外に行っておいでと言われたので店を通り抜けて外に出た。


 作業部屋の窓は開いていて、中で姉さまとコガネ姉さんがそれぞれ作業をしているのが見える。

 ちなみにシオンにいはガーデンテーブル傍の木陰に寝っ転がっていた。

 心地よさそうに目を閉じているけれど、あの短時間で寝落ちるわけもないので目を閉じているだけだろう。


「今日は人のままか」

「え?」

「ううん、何でもない」


 シオンにいは猫の姿に戻って昼寝をしていることも結構あるのだ。

 その日の気分らしいけれど、実際の所どうなのかは知らない。

 とりあえず起こさない様にしておこう。


「セルちゃん、私ちょっとソミュちゃんの事見てくるね」

「うん、分かった」


 ミーファが足早に客間の方に去って行き、リオンはグーっと身体を伸ばしている。

 ポケットから時計を取り出して時間を確認し、杖をクルリと回す。

 さて、何をしようか。魔視の練習はミーファが戻ってきてコガネ姉さんの作業が終わってからの方がいいだろう。


 ……ちょっと飛んでようかな。

 今日は風が気持ちよさそうなんだよね。

 うん、飛んじゃおう。


「あ、セル何してんだ?」

「ちょっと飛んでくる」

「俺も連れてけ俺も」

「えー。後でね」


 連れて飛ぶのは別にいいけれど、今はそんなに穏やかに飛ぶつもりもないのでちょっと待っていてほしい。

 杖を左手のブレスレットと連結させて落ちないようにし、一気に上空まで舞い上がる。


 学校でやったら怒られるであろう風力での急上昇。

 森の端がギリギリ見えるくらいまで上がって、ちょうど吹いて来た風に乗ってクルリと回る。

 一度だけで風の勢いは止まらないのでクルクルと回り続け、その勢いが止まってから背中を下にして姿勢を安定させ、風の上に寝転がった。


 次に吹いて来た風に身体を乗せて空中で今度は縦に回り、杖を両手で持って逆立ちの状態で止まる。

 ……うーん。楽しい。それにしても今日は風が賑やかだな。

 どこかで何かお祭りごとでもしているのだろうか。


 体勢を戻して足先に風を集め、風の上を歩くように移動しながら次の風を探していたら近くに音の魔力が上がってきた。

 何かと思ったら、その魔力玉からコガネ姉さんの声がする。


「セルリア」

「はぁい」


 もう少し飛んでいたかったけれど呼ばれてしまっては仕方ない。

 大人しく降下してコガネ姉さんの目の前に降り立つと、横からリオンが突っ込んできた。

 躱して足をかけ、転んだリオンを覗き込む。


「セルお前あんな動き出来んのか!すげぇな!」

「ありがと。学校でやると怒られそうだから家でしか出来ないんだよね」

「まあ、怒られるだろうね。ほら、魔視の練習するんでしょ?」


 足をかけられたことも転んだことも欠片も気にしていないらしいリオンはコガネ姉さんの言葉に飛び起きて、いつの間にか戻ってきていたミーファも駆け寄ってくる。

 後ろからのんびりとロイも歩いてきて、魔視は既に完璧なシャムは私の腕にくっついて来た。


「シオン、起きて」

「んえー……俺がすることないやろー」

「一対三より二対三の方がいい」

「……しゃあないなぁ……」


 木陰で寝ていたシオンにいをつついて起こしたコガネ姉さんは、そのまま木陰に腰を下ろして手招きをする。私も行った方がいいのかな?


 どうしようかと思って眺めていたら、しっかりこっちを見て手招きされた。

 行った方がいいらしい。何をするのかは知らないけれど、まあ呼ばれたなら行きましょう。

 そんなわけで腕にくっついたシャムごと木陰に移動する。


「まず確認だけど、魔力集められる?」

「出来ないっす」

「私も出来ないです」

「集まる……に入るのかな。ちょっと寄せるくらいなら出来ます」

「分かった。ロイはシオンに教えて貰って」

「分かりました」


 三人の中だとロイが一番魔力操作が出来ているようだ。

 そういえば魔法適性も一番高いんだったっけ。


「二人は魔力が集まってくる感覚を覚えるところからやろうか。セルリア、リオンの手に魔力集めてみて」

「はーい」

「ミーファは私がやるから」

「は、はい!」


 なるほど、これのために呼ばれたのか。

 ……いや、コガネ姉さんなら二人分纏めて出来ると思うんだけど……まあいいや。

 とりあえず差し出されたリオンの手の上に魔力を集めることにした。


 コガネ姉さんが横でミーファの手の上に魔力を集めているので、意識して逆側から魔力を引っ張ってくる。どのくらい集めればいいんだろうか。


 魔力が集まる感覚を覚えるって言ってたから、集める量は別に決まっていないんだろうな。

 ストップをかけられるまで集め続けて、止められたところで集めた魔力を霧散させる。

 これで終わりかな?


「どうだった?」

「なんかあんなー……とは、思う……?」

「なんでそんな疑問形なの?」

「ある気はすんだよ。でもねえんだもん」

「ミーファは?」

「うーん……?何か流れてる感じ、は、ちょっとだけ分かったかな?」

「なるほど。二人とも筋は良さそうだね」


 満足げに笑ったコガネ姉さんがそのまま次の準備を始めたので一度後ろのシオンにいに目を向ける。

 向こうは向こうでもうすでに何かしているようだし、コガネ姉さんも目線で遊んできていいよ、って言ってるしこの後は自由時間みたいだ。


「……シャム、空中散歩する?」

「するー!」

「あ、おいセル!」

「リオンはそっち優先でしょ」


 暇なら飛ぶ続きを、と思ってついでにシャムも誘ってみる。

 リオンが食いついて来たけれど、魔視の習得が優先なのは分かっているようですぐに引き下がった。

 まあ、終わったらちょっとくらい付き合ってあげるつもりはあるので今はそっちに集中してほしい。


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