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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
126/477

126,薬草採取と風の槍

 髪をまとめ直したところで兄さんたちがポーションをくれたので、それを貰って今度こそ門の外へ向かう。

 ミーファは初めて会うから緊張するかと思っていたが、コガネ兄さんのことは大丈夫だったようだ。


 色味が似てるからかな?なんて下らないことを考えつつ門を通り抜けて薬草の群生地を目指す。

 私とリオンは群生地までは知らなかったのだけれど、ミーファが知っているらしく案内してくれた。

 一人でクエストを受けるときは採取系を受けることが多いとは聞いていたけれど、本当に詳しくて感心してしまう。


「このあたりは魔獣も魔物もあんまり出ないからのんびりしてても大丈夫だと思うよ」

「お、なら薬草採取だけさっさと終わらせてセルの魔法撃とうぜ」

「そうだねぇ。リオンは薬草見分けるところからね」


 薬草を入れる袋は結構大きく、リオンの薬草見分け練習にだけ力を入れていると時間がかかりるぎるので、私は黙々と薬草を集めることにした。

 浮かせておけるから手元に袋が無くても大丈夫だし、見分け方を教えるのはミーファの方が得意だ。


 私は見分ける方法にはあまり詳しくないからね。

 何となくで見分けているから、どこがどう違うっていう説明が苦手なのだ。

 ミーファはしっかり知識として覚えているから、私より野草見分けの成績がいい。


「リオン、それ違うよ?」

「……違ぇのか……」

「色で見分けてもいいけど、裏側の方が分かりやすいかな……?これが薬草の裏側、リオンが持ってるのは葉脈の形が違うでしょ?」

「あー……言われてみれば……」


 二人が話している声を聞きながら薬草を摘んで袋の中に入れていく。

 袋に入るように風を作っておいたので、その上に薬草を乗せれば勝手に袋に入っていくという寸法だ。


 風の操作はずっと練習を続けている成果もあってかなり精度が上がったので二人の作業の邪魔はせずに風を舞い込ませられる。

 我ながら素晴らしい精度。これは自信を持って特技と言えるレベルだ。


 しばらく採取を続け、気付けば袋がいっぱいになっていた。

 やはり三人で集めると量が多くても結構な速度で集められる。

 リオンが採取していた分もミーファのチェックが入っているから問題ないだろう。


「っしゃぁ終わったー」

「とりあえず休憩にする?」

「そうだね、お腹空いたしご飯食べちゃおうか」


 薬草の群生地から少し移動して、ちょっとした木陰に座る。

 それぞれ買っていた昼食を食べ、お茶も飲みつつゆったりとした休憩時間を過ごした。

 この場所は本当に野生動物が近付かない場所のようで、のんびり休んでから元々の目的だった風の槍の強化を試してみようという流れになった。


「とりあえず一発撃ってみる?」

「そうだな」

「わあ……楽しみ」


 ミーファは本当に魔法見るの好きなんだな……

 目をキラキラさせるミーファを見てちょっと笑いが零れてしまった。

 うーん、可愛い。姉さまなら作業を投げ出して撫でに行くだろう可愛さだ。


 そんなことを考えながら魔力を練り、演唱を略式で唱えて風の槍を撃つ。

 撃った方向には特に大きなものもなかったが、生えていた草が綺麗に短くなった。

 風系は見えにくいから本当なら何か壊す物を用意した方がいいのだけど、流石にそんなものはないし草の長さで判断するしかない。


 やろうと思えば土を浮かせて固めて簡易的な的を作ることも出来るけれど、面倒だし今回はやらない。

 二人とも目がいいから見えてるみたいだしね。


「……ふう、どう思う?」

「凄いと思う」

「もう十分な威力があるんじゃねえかなって思う」

「もっと威力上げればダンジョンの壁も壊せるらしいよ」

「やべぇな……」

「魔法って凄いんだね……」


 強化すればするほど威力が上がる上限なしの魔法だから、もうそれでいいじゃない?みたいな目を二人して向けてくるのやめて欲しい。

 いいじゃん、強い魔法をさらに強くするの楽しいじゃん。


「つっても俺らは魔法の事よく分かんねえしなぁ」

「ヴィレイ先生がリオンにでも聞いてみろって言ってたんだよ」

「じゃあ、魔法に関係あること以外でも役立つのかもしれないね」


 とりあえず木陰に居る二人の所に歩いていき、しゃがんで目線を合わせる。

 一旦魔法という事は置いといて考えてもいいかなと思っていたけれど、いきなりそう言われても困るのかもしれない。


 まあどこからどう見ても魔法だから仕方ないけども。

 私も魔法の強化方法ってことで精度と魔力量だけを重視してたから、ヴィレイ先生に言われて初めてそういえばこれ槍なんだっけ、ってなったし。


「どう?なんかない?」

「って言われてもなぁ」

「あれってどうやって撃ってるの?」

「魔力練って、こう、槍っぽい感じに……」

「先端尖らせたりすんのか?」

「するよ。その方がやりやすいから」


 魔力は練り終わった後は丸いのだけれど、魔法の演唱をしながら形を整えて使いたい魔法の発動しやすい形にしていくのだ。

 意識して行うのは最初だけで、慣れてくれば無意識に成型まで終わるようになる。


 これをどれだけしっかり行えるかで魔力の消費量が変わるのだ。

 ちゃんとやれば少ない魔力で魔法を撃てる。

 私は楽しくなってくると雑に成型を終わらせてしまうので、魔力消費がどんどん増えていく。


「そういや杖って槍っぽいのもあるよな」

「そうだね。大体は職人さんの癖とか趣味で形が決まるから、槍として使えるやつもあるよ」


 私は先端の装飾が結構しっかりあるタイプの杖を使っているから槍っぽくはない。

 ステッキだと手を乗せられるように丸かったり平たかったりが多いけれど、ロングステッキは自分の背丈より長いものも多いから装飾は多くなりがちなのだ。


 ごてごてした杖が作りたいからってロングステッキ作る職人さんとか居るからね。

 タスクは短くて装飾が少ない分、掘り込みとかで飾りがちなイメージだ。

 飾られまくったタスクもあるから全部がそうってわけでもないけど。


「杖の先に風作って突くとか出来ねえの?」

「杖を槍に見立てて……?」

「おう。勢い付きそうじゃね?」

「なるほど、やってみようか」


 確かに杖を回して魔力消費誤魔化してるんだし、勢いをつけることも出来そうだ。

 初めてやるから上手くいくかは分からないがとりあえずやってみよう。

 杖を両手で持って、杖の先端に風を作っていく。


 演唱終了と共に杖を思い切り前に押し出し、その勢いを乗せて風の槍を飛ばした。

 さっき一度撃ったところにもう一度打ち込んだので、違いがあれば分かるはずだ。

 そう思って顔を上げると、草が切り揃えられるどころか地面が軽く抉れていた。


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