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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
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12,一日の締めは読書で決まり

 一日の授業を終えて、いそいそと図書館に向かった。

 今日は属性ごとの魔法の総数でも調べてみようと思ったのだ。

 気になってしまったから仕方ない。調べられる場所があって使用が出来るのに調べないのは私の性格的に無理な話なのだ。


 今日も図書館に人は少なく、静かなその場所はとても落ち着く。

 カウンターの内側に座って本を読んでいる先生は昨日と同じ人だ。

 その光景に、少し見惚れてしまった。


 綺麗な金髪をゆったりとした一本の三つ編みにして、左耳に蝶の形のイヤーカフを着けている。蝶から垂れるように揺れているリボンも含めて、とても綺麗な先生である。

 姉さまとは違う綺麗さがあって、立ち止まってしまった。


 ふと目を上げた先生と視線が噛み合って、慌てて会釈をして歩き出す。

 家の中に、あんなにはっきりした金髪の人が居なかったのだ。

 ウラハねえは金髪であるのだが、あの人の髪は銀色に金色が混ざっているような色味をしているのだ。


 それはそれでとても綺麗で好きなのだが、先生の見事な金髪は昨日から綺麗だなぁと思っていたのだ。だって綺麗なんだもの。

 満月のような、姉さまが作る薬のような。


 なんて、先生の髪に思いを馳せている場合ではないのだ。

 とりあえず本を探して本棚の間を移動する。

 どこにあるのかは、まあ並んでいる本のタイトルで何となく分かるのだが何せこの図書館は本が多いのだ。


 探すのも楽しいので問題はないが、本当に入り浸りそうで心配である。

 授業に身が入らなくなるようなことにはならないと思うが、気を付けないと睡眠時間が消え去ってしまう。


「……あ、載ってそう」


 背表紙を目で撫でながら進んでいくと、魔法歴の本を見つけた。

 これに載っているだろうかと本を手に取って開き、内容を流し読む。

 魔法の並びとか、関連性とか。いろいろ書いてあるそれを読んでいる間に気付けば本棚に寄りかかっていた。


 ……よろしくないな。ちゃんと座ろう。

 知りたいことはこの本に載っていそうだから、とそれだけ持って読書スペースに移動する。

 続きを読み始めて少ししてから、目的の項目を見つけた。


 ……本当に時空の魔法って種類が多いんだな……扱えるかは別として、みたいなことが書いてあるけど。

 すごいな。熟練者になると、小さな時空の隙間から自分で作った空間を繋げて収納に出来たりするらしい。


 手ぶらで旅をして、必要があればそこから物を取り出したり……って、すごく夢が広がる。

 私も扱えればやってみたかったが、その才能には恵まれなかったようだ。

 まあ、風魔法好きだからいいけれど。飛んだり飛ばしたりするのは本当に楽しいから、別に拗ねてなどいない。


 目的は果たしたので、本をもとの位置に戻して部屋に帰ることにした。

 昨日読んでいた読みかけの本の続きを読むのと、今日の授業内容の復習と。考えてみるとやることは意外と多いのだ。


 まだ復習が必要な内容ではないが、そのうち必要になるなら早いうちから習慣にした方が後が楽なので、始めた方がいいだろう。

 カウンターの前を通ったらそこに座っている先生が目を上げたので、そっと会釈をして通り過ぎる。


 部屋に帰って棚に入れておいたノートを取り出して、ポケットからペンを引き抜く。

 ノートは新しいものだが、ペンはずっと愛用しているのでだいぶ使い込んでいて、貰った当初よりずいぶん色が褪せてしまった。


 それでも買い替える気は起きず、インクを変えペン先を交換してどうにか今日まで使っている。

 ……あまりにもボロボロになると強制的に買い換えられるような気がしたので、魔法特化種の姉に保護魔法をかけて貰っていたりもする。


 インクの色は授業で使うようにと深い青にしているが、家を出る前は好きな色をと言われて紫を淹れてみたりもしていた。

 魔法をかけたから、インクの色は気分で変えても混ざらない。なんて言われて、その頃は魔法が万能で何でもできるんだと思っていたが、今になってわかる。


 私の保護者達、私に甘すぎである。

 なんで子供に持たせるペン一本にそんな大層な魔法をかけてしまうのか。

 なんで姉さまは当然のようにそれを見守っているのか。


 私の感覚がいろいろおかしいことに危機感を持ってくれたのはトマリ兄さんくらいだ。

 トマリ兄さんが居てくれてよかった。いなかったら、私はとんだ世間知らずとして目立つ羽目になっていただろう。


「……はあ。違うんだった。復習するんだった」


 兄姉への文句を募らせてみたが、それが本題ではないんだった。

 甘やかされていたことにも一応文句を言ってはみるが嫌ではなかったし、自分からしっかり甘えていたので実のところ文句を言える立場ではないのだ。


 ふっとため息をついて開いたノートにペンを走らせる。

 今日の復習を終えて、明日の授業の教科書を開いて、適当に流し読む。

 そうしている間に夕食の時間になったらしく、鐘の音を聞いて自室を出た。


 杖を弄びながら列に加わり、夕食を入手したら空いている場所を見つけて着席する。

 淡々と食事を終えて杖を弄る行為に戻ると、意識していなくとも周りの声が聞こえてくるものだ。

 昨日よりはましな気もするし、昨日よりひどい気もする。


 どうしても嫌になったらどうにかするが、今はまだ放置でいいやと終わりの鐘の音をのんびり待つことにした。

 早く鳴らないだろうか。帰って本が読みたい。


 思わず漏れたため息を飲み込むことも無く放置して、やることも無いので天上から吊るされたシャンデリアに思いを馳せてみる。


 キラキラしいが、嫌みなほどではないな。

 見た目もだが明るさにこだわっているようだ。

 明かりは魔石を使っている、のだろう。


 なんてぼんやり考えていたら、時間を知らせる鐘が鳴る。

 いそいそと杖を抱えなおして食堂を出て、速足で部屋に戻ってきた。

 ようやく夜の読書タイムだ。


 昨日時間を忘れて読み込んだので、今日は読み切ってもそう遅くはならないだろう。

 それなら読み切ってしまうことに決めて、ルンルン気分で本を開いた。

 読み始めればその世界に沈み込んでいくまで時間はかからない。


 時々視線が上がるのは、分からなかった表記や単語をメモするときだけだ。

 ペンと同じく年季の入ったメモ帳は同じ時期に貰ったものであり、これは中身の紙を入れ替えて長々と使っている。


 本からほとんど目線を動かさずにメモを取れるのは、私が昔からこうして読書中にメモを取る癖がある故の副産物だ。

 横にいるシオンにいに聞けばその場で答えが教えて貰えるのだが、それだと何だか頼り切りな気がして自分で調べるようになった。


 意外と、便利な特技である。

 目を向けていなくてもいつもと同じ字が書けるので、授業中にそれなりに活躍してるのだ。


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