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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
108/477

108,全力鬼ごっこ

 食堂で持ち運び用の飲み物を買って林の前に移動する。

 すでに待っていたリオン達のいる木の根元に人数分の飲み物を置いて、ついでに杖も立てかけておく。


 天気もいいので予定通り追いかけっこ開催となったのだけれど、その前に飲み物を用意することになり、なぜかじゃんけんで買い出し担当を決めることになったのだ。

 そして負けた。一回で綺麗に負けた。仕組まれたのかと疑うレベルだった。


 でもまあ負けは負けなので大人しく買い出しに行っていたというわけだ。

 一人で四本も飲み物を買いに行ったものだから、食堂のお姉さんに今日は何をするの?って楽し気に聞かれてしまった。


「さーてやるかー!」

「最初誰が鬼?」

「じゃんけん……だとセルが負けるからなぁ」

「お、何だ?しょっぱなから場外乱闘するか?」

「悪かったから杖に手を伸ばすんじゃねえ」


 売られた喧嘩はわりかし買う主義なのだけれど、今回は取り下げられてしまった。

 というか一回負けたからって次も負けるとは限らないと思うのだ。

 むしろさっき綺麗に負けたから今度は勝てるかもしれないだろうに。


「じゃあ最初私がやるー!」

「お、シャムやる気だねえ」

「元気なうちに捕まえる!」

「なるほど」


 ふんすっと気合を入れるシャムを中心にして一定の距離を取り、とりあえずその場で跳んで身体をほぐし始める。

 逃げていい範囲にはあらかじめ雑に線を引いてあるのである程度考えて逃げないといけない。


「よーし、行くよー!」

「おー!来い!」


 走り出したシャムが真っ先に狙ったのはリオンだった。

 一番近くに居たからだろうか。それとも、一番逃げにくい所に居るからだろうか。

 ……どっちにしても狙われそうな位置に居るリオンが悪いかな。


 リオンの逃げる先は私の方みたいなので早々に距離を取ることにする。

 とりあえずロイの方に寄って巻き込む準備をしていると、リオンも気付いたのか急転進してこっちに来た。


「うわ来た」

「そりゃ行くだろ!」


 左右どちらに逃げるのがいいか、なんて考えている暇もないくらいの勢いだったので考える前に逃げることにした。

 このあたりの判断は休みの間にミーファとリオン、時々ソミュールと追いかけっこを繰り広げた末に身に着いたものだろう。


 そのまま逃げ遅れたロイが餌食になり、さっそく鬼が変わった。

 流れるように擦り付けに成功したリオンが横に来たのでちょっと距離を取る。

 隣の仲間は次の敵かもしれないので押し付け以外で傍には居ない方がいいのだ。


 駆けだしたロイが向かう先はまたしてもリオンみたいだ。

 なんであんなに狙われているんだろうか。消耗させて捕まえる作戦なのかもしれない。

 ……でもこれ、リオンが捕まったら私狙ってくるだろうな。もうちょっと距離とっとこ。


「あ、セルお前」

「ちょっ、なんでこっち来るの」

「お前が一人で安全圏行こうとしてるから、だろ!」


 どうしたってリオンは私についてくるつもりらしいので、私はシャムの方に行くことにした。

 シャムも気付いて慌てて逃げていくが、こっちは既に加速しているので距離は縮まる。

 後ろから断末魔のような声が聞こえてきたのでリオンが捕まったみたいだ。


 ……こっちに来てる気配がする。

 振り返っている余裕は無さそうなので速度を上げてシャムの方に向かい、追いついたところで急転進して速度を落としたロイの方に向かう。


「逃がさねえ、ぞ!」

「あーもう!」


 そもそもの足の速さ的にリオンからは逃げられないだろうから逃げるのは難しい。

 魔法が使えるならいくらでも逃げられるけれど、魔法の使用は禁止と最初に決められてしまったので走るしかないのだ。


「っしゃ!捕まえた!」

「あー!」


 結局単純な速度の差で捕まって、息を整えつつ誰を追うか考える。

 ……ロイかな。一人浮いたところにいるし。

 私が狙いを定めたのを悟ったのかロイが走り出し、リオンの方に向かって行く。


 が、まあ日頃からやたらと走らされる戦闘職生徒と座学が基本の研究職生徒とでは鍛え方が違ったようだ。

 あっと言う間に差が縮まりロイの背中をペチンと叩いた。


「よっし!」

「セルリア早いね……」

「ふふふ」


 笑ってそのままロイを抜き去り、ある程度距離を取ってから振り返る。

 ロイはシャムを狙うことにしたようでシャムがリオンの方に逃げているところだった。

 リオンはリオンで私の方に来るし、休むことは出来なさそうだ。


 速度を上げて距離と取りつつ様子を窺い、枠の範囲を逃げ回る。

 その後もわいわい言いながら追いかけっこを続けた結果、ロイとシャムが疲れ果てたので休憩することになった。


「二人は流石に体力あるね……」

「授業中ずーっと動き続けるとかあるもんな」

「まあこのくらいならそれなりに休みながらやれるしね」


 話しながら飲み物を手に取り、私は杖を持って風を起こす。

 そよ風程度の風だけれど、疲れたから涼むだけならこれくらいがちょうどいいだろう。

 そう思って風をそよそよさせていたらこちらに近付いてくる気配を感じた。


 目を向けると白いうさ耳がぴょこぴょこしているのが見えて、手を振ると大きく振り返される。

 リオン達も気付いたようで目線がそちらに行き、駆け足で近付いてきたミーファにシャムの表情が緩む。


「やっほーミーファ」

「久しぶりセルちゃん!」

「ミーファも戻ってきたんだな」

「うん。今ソミュちゃんを部屋に送ってきたの。そしたら先生がここにセルちゃんたちが居るって」


 今日私たちがここで遊んでいるのは複数の先生が知っていることなので、ソミュールが寝て暇しているミーファを混ぜようと思ったのだろう。

 やっていたことをミーファに説明したら目を輝かせたので一緒にやる事になったのだけれど、ミーファを捕まえるのは中々難しい。


 ついでに言うとロイとシャムは既に疲れが溜まっているのでこのまま追いかけっこを続けると二人が鬼のまま誰も捕まえられないことになりかねない。

 そんなわけで少しルールを変えて、全力で逃げるミーファを四人で捕まえる遊びに変更になった。

 それでも捕まえるのが大変なのがミーファなのだけれども。


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