106,初めてのクエスト
「やっほーリオン。暇?」
「おう、急だな」
冒険者登録を済ませた次の日、さっそく動きやすさ重視装備に身を包んで髪もポニーテールに纏めた私は、颯爽とリオンの部屋に襲撃をかけていた。
明らかに寝起きのリオンはあくびを噛み殺しながらちょっと待ってろーと部屋の中に引っ込んでいき、数分後に着替えを終えて出てきた。……寝癖ついてるけど、教えた方がいいのかな。
「んで?なにすんだ?」
「クエスト受けようと思って」
「よーし、行くかー」
まだ寝ていただろう所を叩き起こしたのに、リオンは怒ることも無く剣を担いで歩き出した。
なんというか、面倒見がいいというか。
小さい子にモテそうだなって思う。いいお兄ちゃんになりそう。
「一番最初のクエストって、リオンはなに受けたの?」
「何だっけなー……運搬とかだったと思うぞ?」
「覚えてないんだ」
「結構前だからな」
戦闘しないでも受けられるクエストは多いから、昔からそういった細々したクエストは受けていたらしい。
鬼人の血が入っているから力は強いしもってこいだったんだとか。
「リオンって今ランク何?」
「D。多分Dが一番多いと思うぞ」
「そうなの?」
「おう。弱い小型の討伐でも上がるからな」
そんな話をしながらてくてく歩いてギルドに向かい、クエストボードを眺める。
リオンは今日付き添いだけのつもりらしいので、初めてでも問題ないだろうクエストを選んで受けることにした。
……気になるのは、リオンが昨日気にしていたクエストだけど、これはどんなものなのだろうか。
分類は採取になっているけれど、内容は運搬らしい。
運搬物が大きいのと運ぶ場所が少し行きづらい所だから誰も受けずに残っているようだ。
「……これどう思う?」
「いいんじゃねえか?セルは飛べるしな」
「魔法使って大丈夫なのかな」
「受付で聞いてみようぜ。何も書いてないなら大丈夫だと思うけどな」
促されて紙を手に取り、クエスト受注窓口に向かう。
クエスト受注窓口は四つあり、混んでいたら人の少ない所を狙って並ぶらしいけど、今はどこも空いている。
「こんにちは、こちらクエスト受注窓口です」
「これの受注をお願いします。これって、魔法使っても大丈夫ですよね?」
「はい。運搬方法は指定されていません。魔力照合を行いますので、こちらの球体に触れてください」
カウンターに置かれた球体に手を乗せると球体が光を発し、それを見て職員の人が書類に判子を押した。
……もう放しても良いんだろうか。
「これで受注完了になります。指定された場所の地図を添付しましたので、この場所に向かってください」
「はい」
「君は今日受けないの?」
「俺は今日付き添いだから」
「そうなんだ」
「おう。じゃあまたなー」
受付のお兄さんとリオンが親し気に話していた。
リオンはそれなりの頻度でクエストを受けているはずだし、顔見知りなのだろう。
「さーてと。どこ行きゃいいんだ?」
「王城の方だね。行こうか」
「おう」
地図を見て行き先を確認し、大通りを歩いて城の方に向かう。
王城付近は結構高低差のある地域なので地図をしっかり見ていかないと無駄に移動することになってしまうので、私は地図を見ることに専念する。
あの辺り、あんまり行かないからよく知らないしね。
人にぶつかりそうになったらリオンが止めてくれるだろうし、このまま行こう。
……地図で階段とか分かるようになると移動も楽だと思うんだけどなぁ。
「……ん?」
「どした?」
「ここ、どっちだろう」
「あー……上じゃね?」
「上かぁ」
こんな感じで、どう頑張っても迷いそうになるのがこのあたりだ。
王城に行くだけなら広い道があるから楽なんだけど、その付近が入り組み過ぎている。
「あ、あの家じゃねえか?」
「レンガの壁に白い屋根……うん、あそこみたい」
紙に書かれていた特徴の家を見つけて近付くと、家の門の内側にお婆さんが座っているのが見えた。
この人が依頼主だろうか。
「おやおや……お客さんかい?」
「このクエストを受けて来たんですけど、このお家で合ってますか?」
「ああ、合っているよ。受けてくれたんだねぇ、ありがとうねぇ。それじゃ、付いてきておくれ」
門の扉を開けてくれたお婆さんに家の裏に案内される。
そこには大きな箱が二つ積まれていた。これが運ぶ荷物だろう。
なるほど確かに抱えて運ぶには骨が折れそうな大きさだ。
「これを、この上の家に運んでほしいんだよ」
「この上……って、この壁の上の家か?」
「そうだよ。道はこの家を出て左にあるからね」
「お婆さん、これここから浮かせて運んでもいい?」
「うん?ああ、お前さんは魔法使いなのかい。もちろんいいよ、お願いね」
許可を取ってから上に障害物がないのを確認し、杖を構えて風を起こす。
自分が飛ぶための風と、荷物を運ぶための風を作って箱の下に差し込み浮かせて上に運んでいく。
箱は二個纏めて運んでいるけれど、中身はさほど詰まっていないのかあまり重くない。
「まあまあ、すごいわねぇ」
「すげえよな。俺も自由に飛べたらなぁ」
「お空は自由だからねえ。楽しいだろうねぇ」
私が荷物を運んでいる足元ではリオンとお婆さんが何か話していた。
リオン、飛ぶの好きだよね。飛ぶってなるとすごいはしゃぐし。
今日は付き合ってもらったし、お礼代わりに空中散歩とかしてもいいかもしれない。
「お婆さん、ここに置いて大丈夫?」
「大丈夫だよ、ありがとうねぇ」
徒歩で運ぶのは大変でも、魔法で運ぶのは一瞬だ。
依頼はこれで終わりになり、完了したという署名を貰ってギルドに戻ることになった。




