104,早期寮帰還勢
出店の揺れに身を任せてのんびりと空を見上げ、飛んでいる鳥の種類を当てる遊びを始めてそれなりの時間が経った。
そろそろフォーンの門が見えてくる頃だろうか、と出店の窓から顔を出す。
予想通り人で賑わうフォーンの様子が見える位置まで来ていたので、座り直して立てかけてあった杖を手に取った。
コガネ兄さんが微笑まし気に見てくるのだけ気になるけれど、気付かなかったことにして荷物の最終確認を始める。
「それじゃあ、行ってらっしゃい。セルリア」
「うん。行ってきます!」
「じゃーな」
「行ってきまーす、トマリ兄さん」
フォーンの中に入って大通りで出店を一度止めてもらい、荷物を持って出店から降りる。
私が今日寮に戻ることはリオン達も知っていて、先に寮に戻ったリオンが迎えに来るとか言っていたのだけれどどこに居るのだろうか。
一応リオンが居ないか注意しつつ通りを進み、学校前の道に入ったところで向こうからのんびり歩いてくるリオンを見つけた。
ゆったり手を振ってくるので手を振り返し、合流して学校の方に向かう。
「セルお前、なんか荷物多くね?」
「色々持たされたんだよ」
「またか。前もそんなこと言ってたよな」
「うん。前も色々持たされたからね」
不要なものは持ってきていないはずなのに毎回毎回荷物が多くなるのは何故なのだろうか。
卒業するころになったら部屋の掃除が大変なことになる予感がする。
まあ、その心配は今は置いておいて今回持ってきた荷物を部屋に置いてこないといけない。
「そーいや授業始まるまでまだ時間あっけど、なんかすることあるか?」
「んー……あ、冒険者登録しようと思ってるんだよね」
「お!遂にセルも登録するのか!」
「なんか嬉しそう……」
「休みの間ミーファとクエスト行ってたんだけどよー。やっぱりセルが居ないと色々面倒なんだよ」
「魔法使いの有難みを感じたようで何よりだよ」
話しながら歩いていたらいつの間にか学校の前まで来ていた。
学校の中に入ったらまずは中央施設に行って部屋の鍵を貰い、部屋に荷物を置いて一つ息を吐いた。
寮の自室は当然ながら何の変化もないので、既に一年暮らしていることもありやけに落ち着くのだ。
とりあえず今は荷物を置くだけにして、荷解きは夜にでもやればいいだろう。
「お?早かったな」
「荷物置いただけだからね。そういえばミーファとソミュールはまだ寮に戻ってないんだ?」
「おう。二日前に戻るって言ってたぞ」
「結構ギリギリだね」
「ま、フォーンの中には居るんだし大丈夫だろ」
「それもそっか。さてと、じゃあ何する?」
私の冒険者登録は明日やる事にしたので、今日はもうやる事が無いのだ。
まだ学校の中にはあまり人もいないし、いつものように林の前で遊んでいる分には怒られないだろうけれど毎度毎度それでは芸がない。
「そーいやヴィレイせんせーがお前のこと待ってたぞ?」
「それはいいや、どうせ掃除だから」
「そもそもなんでセルがヴィレイせんせーの部屋掃除してんだ?」
「部屋じゃないよ。魔術の準備室だよ」
「そこ大事か?」
「大事。まあ、理由はその時間に色々相談とかお話とかしてるから、かなー」
何も掃除のために行っているわけではないのだ。
そもそもは研究室に所属していない私が暇を持て余していたところに声をかけてもらったわけだし、お話ししがてらヴィレイ先生のお手伝いをしている、という状況な訳で。
それが何故こんなにも掃除メインになってしまったのかは私にも分からないけれど、原因はヴィレイ先生があまりにも掃除が出来ないというその一点なので私にはどうすることも出来ない。
また一ヵ月分の掃除と整理が待っていると思うとちょっと行きたくない気持ちもある。
「とりあえず林の前行くかー」
「まあ、そうなるよねー」
色々話してみたけれど、結局はいつも通りが一番なのかもしれない。
そんなわけでいつものように林の前に移動して話しながら軽く運動をして、日暮れまで遊んで食堂で夕飯を食べて解散になった。
明日はギルドに行って冒険者登録をするので昼前には学校を出て昼食は街で食べることになるだろう。
そのままちょっとした買い物をしてきてもいいかもしれない、なんて明日の予定を立てながら寝支度を整えてベッドに入った。
荷解きは結局やらなかったので授業が始まるまでにはやらないといけないな、なんて考えながらゴロゴロしていたらいつの間にか眠ってしまっていた。
寮の部屋には朝日が入ってこないので、その代わりに一定の時間になると点く部屋の明かりを合図に起きることになる。
欠伸を噛み殺しつつ身体を起こして時計を確認し、ぼんやりした頭を起こしがてらに顔を洗う。
大分目が覚めてきたところで着替えて髪をハーフアップに纏めて杖を持ち、朝食を食べるために食堂に向かうことにした。
授業が始まることになればこうして朝食を食べているとロイが起きてきて合流し、その後にシャムが眠そうにお茶を持ってきて、リオンが居たり居なかったりするのだけれど今は二人とも居ないので一人で食事を済ませることになる。
なんだかちょっと寂しい気もする。なにせ家では皆集まって一緒にご飯食べてたし。
もそもそとパンを食べてスープを飲み干し、食器を返して部屋に戻る。
まだ出発の時間には少し早いけれど、特にすることも無くなってしまった。
とりあえず少しだけでも荷解きを進めることにして、最終調整を終えて渡された服をクローゼットに入れていく。
結局貰ってきたのは四着ほどで、数回着て動いてみた感じはすごく良かった。
今日は冒険者登録だけしてクエストを受けるつもりはないので着ているのはいつも通りの服だけれど、今後はこっちの動きやすさ重視な服を着ることが多くなるのだろう。
なんて考えながら荷物整理を終えて時間を確認し、杖を持って部屋を出た。
門まで移動したら後はリオンが起きていることを願うだけだ。
まあ何だかんだこうして街に出る予定を組んでいる日はちゃんと起きているし大丈夫だろうけれども。
「おーい、セルー」
「ん、思ったより早かった」
「俺の事なんだと思ってんだよ」
「寝坊常習犯の遅刻魔」
「うっ……」
否定できないみたいだ。
何はともあれリオンも来たので予定通りギルドに向かうことにしよう。
冒険者登録は別段難しいこともないと聞くし、終わるころにはいい具合にお腹も空いて昼食になるだろうか。
お昼ご飯の相談をしながら通りを進み、結局どこに行くか決まるまえにギルド前に到着した。
リオンはクエストボードを眺めながら待っているそうなので、ささっと受付に行くとしよう。




