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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
102/477

102,精霊の話と全力の遊び

「さて、何の話をしようか」

「森の魔力、ってあるんですか?」

「うーん……そもそもの話、僕らエルフも魔力の分類を確実に把握しているわけではないんだよ」


 淹れてもらったお茶を飲みつつ、庭で追いかけっこを始めたリオンとミーファを眺めつつ、ヴェローさんとのんびりお話しする。

 モエギお兄ちゃんは私の肩から移動してソミュールが寝ている椅子の背もたれに止まっていた。


 最初はヴェローさんを警戒していたのか私の肩に止まってヴェローさんをじーっと見ていたけれど、その必要もないと思ったのか少し離れたところでみんなを見守ることにしたみたいだ。

 小鳥の姿でもお兄ちゃんはお兄ちゃん。しっかり保護者をしてくれている。


「魔力って、魔視で見ると色が付いて見えるだろう?あれって個人差があると思うんだよね」

「見え方に、ですか?」

「うん。色味の違い、っていうかさ。自分以外の視界は結局分からないわけだし、他の人にどんな色で見えてるかって分かんないだろ?」

「確かに、緑って言っても濃淡の違いはあるかもしれませんね」


 私の目に風の魔力は透き通る薄い黄緑色で見えているけれど、他の人からするともっと濃い色で見えているかもしれない。

 その見え方の違いで今は分類されていない魔力を視える人もいるのかもしれないのだ。


「僕は何となく森の気配を感じることがあるくらいだけど、森が近いとか察する人もいるんだよね」

「へえ……面白いですね」

「ちなみにだけど、君は音の魔力見える?」

「はい。色が薄いから見えにくいですけど、音魔法は基本見えますよ」

「そっかそっか、何色?」

「乳白色、ですかね」

「うーんなるほど」

「ヴェローさんは違うんですか?」

「僕はスノーホワイトっぽく見えるかな」


 白系色ではあるみたいだけれど、やはり見え方の違いはあるようだ。

 個人差なのか、種族差なのか。気になる所ではあるけれど、ここに居る人数だけでは確かめることは出来なさそうだ。


「こういうのはデータ量が物を言うからね。時々魔法使いに協力してもらって見え方の違いを確認してるんだ」

「それで私のことも気にしてたんですね」

「そう。ソミュールが褒めるほどの魔法使いが気になった、っていうのもあるけど」


 そんなわけでちょっと協力して、と言われて差し出された紙に私が魔視で見ている色を書き込んでいき、そこでふと思い立ってモエギお兄ちゃんに目線を向ける。


「そういえば、お兄ちゃんは魔視って出来るの?」

「おや、お兄さんなのかい?君の使い魔かと思ったけれど」

「姉の契約獣です」

「チュン、チュッチュン」

「ごめんモエギお兄ちゃん……私その状態での言葉分かんない……」


 姉さまは契約獣だろうがたまたま出会った動物だろうが当然のようにお話しているけれど、私にはそんな能力無いので全く分からない。

 モエギお兄ちゃんも分かってはいるはずなんだけど、人の姿にならないのはヴェローさんを気にしているからなのだろうか。


「契約獣……魔力契約か。珍しいな」

「チュン」

「そのあたり、実はよく分かってないんですよね」

「お?そうなの?」


 姉さまは当たり前のように契約獣たちと一緒に暮らしていて、私が拾われた時にはもう皆いたので私にとってもそれが当たり前になっていた。

 けれど一般的な契約獣はそうではないらしいし、その時点でもうよく分からなくなってしまって覚えることを辞めてしまったのだ。


 いい加減真面目に覚え直すべきだろうか、なんて考えながら小鳥の姿のまま机の上に降り立ったモエギお兄ちゃんを指先でモフモフする。

 人型になっておしゃべりに参加する気はないみたいなので、あまり話を振らない方が良いんだろう。


「そういえば、君はシルフィードの気配を纏っているんだな」

「分かるんですか」

「ある程度はね。僕も加護持ちだから」


 も、と言っている時点で私が風精霊の加護を貰っているのは気付いているみたいだ。

 私は他人のそれに気づいたことがないので、これはエルフ故の能力なのだろう。

 それとも年の功的なものなのか。私もそのうち出来るようになるのかもしれない。


「ヴェローさんは精霊が見えるんですか?」

「見える子も居るし、見えない子もいるよ。僕の加護はヴォルトから貰ったものだから雷と相性のいい子は見えることが多いかな」

「そうなんですね。じゃあ、闇とかはあんまりなんですか」

「そうだね。シャドウは基本見えないかな。たまに彼らの機嫌がいいと、声だけは聴かせてくれるけれど」

「そんなことがあるんですか?」

「うん。僕なんかは森に居た頃から精霊とそれなりに関わっていたからね。僕を特別気に入っているヴォルトが声をかけて回ったらしいんだ」


 精霊の加護というオリジナルスキルは、それを持って生まれる人がそもそも少ないこともありあまり研究が進んでいない。

 精霊を見ることが出来るだけでも希少なこの時代に加護まで貰える人間はなおのこと少なくなる。


 なので私は今まで私以外の加護持ちに会ったことがなかったのだが、あんまりにもサラリと現れたせいで反応出来なかったし当然のように会話を続けてしまった。

 流れで聞いてしまったけれど、個人を特に気に入っている精霊、というのは私も覚えがある。


 私の髪を嬉しそうに持っていったシルフィード。あの個体が一番私のところに遊びに来るのだ。

 そして何か物を持ってきたり、加護を置いて行ったりするのもあのシルフィードのことが他と比べて圧倒的に多い。


「やっぱり、全体からっていうより個人からの贈り物なんですかね」

「多分ね。それでも一人が愛せば周りも流れて守ってくれるだろうけど」

「それで連れ立って来るんですね」

「そういうことだろうなあと思ってるだけだがね。というか、遊びに来るってことは結構田舎に住んでる?人が多い所に精霊ってあんまり来ないけど」

「そうですねぇ。かなり田舎です」


 田舎というか、森の中の一軒家なのだけれどあまり詳しく言うのもどうかと思うので嘘ではない程度に誤魔化しておく。

 私の家である以前に最上位薬師の家でありお店だからね、あんまり言いふらすわけにはいかないのだ。


 それにしても、自分以外に精霊の加護を持っている人が居るとこんなにも話が盛り上がるのか。

 自分だけでは分からなかったことも分かるし、他の人だと分かってもらえない話も出来る。

 すごく楽しい。なんて考えていたら庭の方から何やら賑やかな声がして、足音が二人分近付いてきた。


「おいセル!話してばっかじゃなくてちょっとこっち混ざれよ!」

「セルちゃんもやろ!リオン追い込み作戦!」

「ミーファがそんなにはしゃぐのは珍しいな。行っておいでよ」

「はい。……杖のない私は結構早いぞー!」


 杖はモエギお兄ちゃんが見ていてくれるだろうし、追いかけっこならない方が身軽だ。

 普段自分より大きいサイズの杖を抱えて移動している人間の脚力を見せてやろう。

 はしゃぐ二人に当てられてノリノリで混ざった追いかけっこは最終的に本気で逃げるミーファをリオンと二人で捕まえる遊びに変わり、終わるころには三人揃って庭に座り込むほど疲れてしまった。


疲れて動けなくなるくらい全力で遊べるのって学生の頃までな気がするんですよね。

セルちゃんたちにはずっと楽しく遊んでてほしいです。

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