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学び舎の緑風  作者: 瓶覗
100/477

100,ソミュールとミーファの所へ

 昼食を済ませて食事処を出ると外は何かあったのかちょっとした騒ぎになっていた。

 このあたりでちょっとした騒ぎが起こるのはさほど珍しくないけれど、いつものそれとは違うみたいだ。


「なんだろ」

「なんだろーな。……あっちか」

「見に行く?」

「向こうに丘あるからそっち行こうぜ」


 あまり近付かない方がいいだろうけれど、気になるものは気になるのだ。

 そんなわけでここよりは見晴らしが良いだろう場所に移動することになり、そこから見えなければ諦めることになった。


 まだ遠視魔法を人に見せられるレベルには達していないので目視できなければ即撤退だ。

 私がもっとあの魔法得意なら二人分の目を飛ばせるんだけどね。まだまだ練習が足りないね。

 自分だけでも成功率百パーセントまではいかないのでこれは本当に練習するしかない。


「さーてなんか見えっかなーと」

「あれかな?なんか煙出てる」

「あれっぽいな。なんだあれ、壁崩れてんのか?」

「……なんか、魔物入ってきた感じ?」

「うわ、大型じゃん」


 遠視魔法は使えないけど魔力で視力強化は出来る私と、鬼人の血が入っているから人より目が良いリオン。

 それなりに遠くの光景だったけれど、二人とも意外と普通に見えていた。


「……あれ?なんか、見覚えのある姿が……」

「あれセルん家の兄ちゃんじゃね?」

「だよね、あれコガネ兄さんだよね?」

「チュン」

「すっげぇ切れ味のいいナイフ持ってんだな」

「あれなんだっけ、魔獣の牙加工したナイフだった気がする」

「すげぇな。ちょっと羨ましい」

「流石に大剣サイズは厳しいものがあると思うなぁ」


 コガネ兄さんと姉さまがまだお師匠さんのところに居た頃に作った短剣だったはずだ。

 見せてもらったことがあるけれど、剣の鑑定は出来ないのでなんかすごいカッコイイなあ、なんて感想しか出て来なかった。


 なんてダラダラ話しながら遠くで大型の魔物を単独討伐しているコガネ兄さんを眺めていたら、いつの間にか肩から降りていたモエギお兄ちゃんが私たちの後ろで人型に変化する音が聞こえた。

 振り返ると、いつもの可愛らしい少女……いや少年の姿をしたモエギお兄ちゃんが立っている。


「モエギお兄ちゃん?どうしたの?」

「うおっ……びっくりした……」

「コガネさんが見ていて楽しいのかって言ってますよ」

「割と楽しいかな」

「この距離でも気付くのかよ」

「まあ、コガネ兄さんなら気付くんじゃないなぁ」

「あとこのことは主には内緒だそうです」

「内緒なの?」

「また魔法特化種なの忘れられる、って」


 姉さまは昔コガネ兄さんが魔法特化種族なのを忘れかけていた時期があるんだとか。

 今日みたいにナイフで戦っていたり、なぜかドロップキックが得意技だったりするから物理の方が得意なのかと思われていたらしい。


 それからちょっと気にしているのか、あんまり物理に頼った戦いをしていることは耳に入れたくないんだとか。

 本人は魔力切れの心配もないし物理は物理で楽だから気に入ってるみたいだけどね。


「そういえば、出店は大丈夫なの?」

「人が多くて移動は危ないから早めに止めたんだそうですよ。今はトマリさんが店番みたいです」

「そっか。……あ、討伐終わった」

「後処理もあるから気にせずに遊んでおいで、だそうです」

「はーい」

「セルの兄ちゃん達って離れてても会話出来んだっけ」

「そうだよ」

「便利だなー」


 話している間にモエギお兄ちゃんは小鳥の姿に戻っており、私の肩に止まって一声鳴いた。

 コガネ兄さんにも促されたし寄り道は終わりにして元々の予定だったソミュールの所に向かうことになった。


 リオンはミーファと一緒にクエストを受けたりもしているらしく、作戦会議なんかはリオンの泊っている宿ではなくソミュールのところでやっているんだそうだ。

 家主さんがミーファにも個室を用意してくれただけでなく作戦会議に使える部屋を貸してくれたらしい。


「ソミュールは一緒に行ったりしないんだもんね」

「おう。大体日の当たる所で寝てるぜ」


 まあソミュールは国外で急に寝てしまうと自分も味方も危険に晒されるから、と基本的に安全地帯から出ない様にしているようだし、冒険者登録をしているのかも分からないし。

 一応起きた時に魔力の操作なんかは練習していると言ってたから、彼女はそれでいいのだろう。


「そういえば、今日はミーファ居るのかな」

「居ると思うぜ。昨日ギルドで会ったし、今日は休んでるだろ」


 話しながら進んでいく先はフォーンの中でも住宅が多い地区。

 ここからもう少し門の方に進むと魔術素材のお店がある。

 ソミュールの知り合いの家はそちらとは反対側のようだ。


 歩きなれないと迷ってしまいそうな道を進み、家の密度が薄い場所に出て何となく辺りを見渡す。

 リオンが指さしているほうは丘なのか、緩やかな上り坂になっているようだ。

 日当たりもいいこのあたりは外でお昼寝をするのも気持ちがいいだろう。


「見えたぞーあの家だ」

「……ああ、そっか、魔法使いだって言ってたっけ」

「どうかしたか?」

「なんか魔力纏った家だなーって」

「……最初の違和感それかー」


 リオンはやっぱり魔力に敏感みたいだ。いつだったか私の杖の変化にも気付いていたし、やっぱり種族的なものなのだろうか。

 そんなことを考えながら家の前にたどり着き、ノッカーを叩いているリオンを眺める。少ししてから扉が開きソミュールがぴょっこりと顔を出した。


「わあ、セルリアだ」

「やっほーソミュール」

「連れて来いって言ってたから連れてきたぞー」

「んふふ、ありがとー。あがってあがってー」


 慣れたように家の中に入っていくリオンの後を追い、日の光が差し込む家の中を進む。

 どこへ向かうのかと思ったら庭に出られる大きなガラス扉のついた場所に通された。客間、なのだろうか。


「ミーファ呼んでくるねー」

「おう」


 リオンが慣れたようにソファに腰かけている辺り、ここが作戦会議用に貸してもらっている部屋なのかもしれない。

 なんて考えている間にソミュールがミーファを連れてきて、部屋の中が一気に賑やかになる。


 そしてその後ろから、この家の家主であろう人が顔を覗かせていた。


ついに百話に到達しました。

なんとここまで途切れずに更新を続けられているらしいです。

すごいな……え、私凄いな……などと自画自賛してみたりもするのですが、基本的にやる気は長続きしないタイプなのでブクマや評価がなければここまでペースを落とさずに書くことは出来なかったと思います。


そんなわけでブクマ、評価等ありがとうございます!欲を言うなら感想も欲しい!!(大声)

まだまだ話は続きますが、二年生になったあたりから徐々に物語内時間は加速していくはずなのでもしかしたら折り返し地点には到達したかもしれません。

このままお付き合いいただけると嬉しいです。

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