10,なぜ青空の下で座学をするのか
「うん、うん。素晴らしいです。今年の魔法使いたちは優秀ですね」
ニコニコと笑って言った先生に対して、褒められたはずの魔法使いたちはすごく微妙な顔をしていた。
……私の表情しか分からないけど、多分他の人も同じ表情をしている。はず。
「対抗魔法を選ぶ速度も、それに対する補佐と強化の選び方も大変良いです」
満足!とでも言いたげな笑顔で言った先生は、またパチパチと拍手をした。
そして、その笑顔のまま自分の杖を揺らす。
あれには意味がないのだろうが、全員が一気に身構えたのが分かって少し面白い。
「魔法使い組、私が最初に貴方たちを固まらせた理由は分かりますか?はい、サヴェール」
「……演唱が聞こえるように」
「正解です。セルリアは、演唱を聞いてから風を纏わせましたね?」
「はい」
先生は、ゆったり笑いながら誰がどこで何に気付いて何をしたかを全て見ていたらしい。
ここまでくると、正直怖い。
何なら自分の質問に対する答えを持っている生徒を選んで指名しているようなのだ。
「ソミュールは、どこで魔法の判断をしましたか」
「氷重そうだなって。先生がすごい負荷かけてたから、手伝おうかなーって」
「うん、それに気付けるのも重要なことです」
先生はあくまでもニコニコと笑う。
もうこれが真顔なのではと思ってしまうくらいだ。
「お互いを全く知らない魔法使いが連携を取る際、相手の行動を判断する材料は演唱か実際に放たれた魔法かのどちらかです。魔法使いでない人の中にも発せられた魔法を感知した人が居ましたね、リムレ、ガーンズ、ロゼッタ、アンネッタ、こちらへ」
指定された生徒たちが示された場所に移動し、残った生徒は何か不安げだ。
それを気にせず先生は少し移動して場所を作っている。
「魔法ではなく殺気に反応した人はこちらに来ましょう。リオン、ミーファ、アンナ、ザウレ、マリウス。ここへ」
これで、先生的には仕分けは終わりなのだろうか。
満足げに頷いて、ニコニコしながら動かされなかった人たちに向かっていく。
先生は笑顔だが、近付かれているほうは溜まったものじゃないだろう。
何やら怯えている生徒たちの前で笑顔を微笑みに変えて、先生は先ほどから漂わせていた不穏な気配を取っ払った。
その代わりに聖母のような雰囲気を醸し出している。
「ここに残った皆さんが、一番伸びしろの残った人たちですね。出来ないことは、これから出来るようになればいいんです」
何だか急に先生らしいことを言い始めたな、と白い眼をしているのは急に魔法を使わされた魔法使い組で、今笑顔を向けられている生徒たちは感動なのかなんなのか目を潤ませたりしている。
こちらとしては打ち合わせも何もなしに全く知らない人と合わせて魔法を使わされていつも以上に疲れているので、何をしていても白い眼でしか見れないのだが。
「さて、これで皆さん、自分の魔法対応能力について少し分かったと思います。次は属性の説明をしましょう。皆さん自分の属性は覚えていますね?その属性と相性のいいものは扱えることが多いです。今からそれを覚えましょう。天気もいいので、ここでこのままやりますね。適当に座って下さい」
適当に、と言われたのでその場に腰を下ろす。
地面は芝生で、完璧に乾いているので座り心地は中々だ。
貴族だなんだと騒いでいた気がする人がまた何か騒いでいる気がするが、私に被害はなさそうなので無視しておく。
「座りたくなければ立ったままでもいいですよ」
ずっと何か言っているからか、先生が笑顔でそんなことを言った。
そういう対応は中々好きである。
騒いでいた奴とその取り巻きは、流石に立ったままは嫌だったのか何か言いながらその場に座った。
最終的に座るならもっと素直に座ってほしかったが、それは言うべきではないのだろう。
全員が座ったのを確認して先生は杖を振った。
魔力の種類の模型、のようなものが宙に浮いて、ゆっくりと位置を変えている。
最初の並びは、授業の一番初めに確認した希少性の並びだろう。
一番左に炎、風、水、地がフヨフヨと浮かび、一番右には希少な五種が浮かんでいる。
「これは何の並びか分かりますか?はい、ルイン」
「えっと、希少性、ですか」
「その通りです。では次、これはどうでしょう」
先生が杖を振ると、並んでいた模型たちは位置を変える。
ぐるりと円を描くように並んだそれは、コガネ姉さんが魔法を教えてくれる時に最初に見せてくれたものと同じ。
「セルリア、この並びは?」
「魔法の関連性、同時に扱いやすいもの、です」
「はい、その通り。ここで隣接している属性同士は相性がいいので、自分の属性でなくとも扱えることが多いです。逆に対極に位置するものは扱えないことがほとんどですね」
先生が杖を振う。次の並びは、なんだろうか。
見たことのない並び順だった。
関連性も、よく分からない。
「これは何か分かりますかね?……ソミュール」
「んー……登場順?」
「はい、そうです。よく出来ました」
笑う先生はとても楽しそうだ。
これを理解できた人が居たのが嬉しくて仕方ない、そんな気配を漂わせている。
そんなに楽しいのだろうか、という疑問は置いておいて、今は浮いている模型の流れを考える。
登場順、と言っていたその意味は、きっとそのままだろうから。
左から無、時空、炎、地、風、水、木、音、雷……と列を成しているこれは、つまり。
「これは、この世界の始まりで魔力が現れた順番だと言われています。同時に種類の多い魔法の順、とも言われますね」
各属性の魔法の数は、ものによってまちまちだ。
そんなに多くの差がある感じはしないが、一番多いものと一番少ないものとでは数十の差がある。
……無属性の魔法は、そんなに数があっただろうか。
今まで触れることも無い属性だったので知識はそんなに持ち合わせていないのだ。
一度考えたら気になってきた。今日の放課後も図書館に行くことになるだろう。
昨日夜遅くまで読んでいた本はまだ続きがあるので、新しく借りはせずに図書館内で読むだけの方が良さそうである。
そんなことを考えている間に先生は各属性の説明をしていて、知っている内容がほとんどだからと聞き流しながらふと横を見るとソミュールが膝を抱えた体制で寝息を立てていた。
しっかり枕を抱え込んで顔を埋めている。
……そういえば、彼女が魔法を使っている時に杖が見えなかった。
タスクタイプなのかと思ったが、現状それすらどこにも見えない。
属性は時空だと言っていたし、狭間でも作ってそこにしまっているのだろうか。
……これも、気になってしまう。
彼女が起きたら聞いてみようかと思いつつ、一旦は先生の話に耳を傾けることにした。
どうもこんにちは、ここまでお読みいただきありがとうございます。
何となくであとがきを書いておりますが、特に本編に関係はないので読み飛ばしていただいて大丈夫です。騒がしくします。
更新を途切れさせない様にとストックを作って始めたお話なのですが、ふとした瞬間に今書いてるこれは十月に上がる予定だがこれ書いてる意味あるんか……?と虚無虚無タイムを発動させてしまいました。
正気はぶん殴って沈める精神があるのですが、うっかり減速しかねないのでもしよろしければブクマとか評価とか、頂けると嬉しいです。欲を言うと感想も欲しいです(大声)
それはそうとここまででもブクマと評価をいただきまして、本当にありがとうございます。ちょっと踊ったりしながら喜んでおります。




