女勇者の父、六大陸連盟を作る
年が明けて1月1日。
クリム王子に初めて会ったパーティーから9ヵ月が過ぎようとしていた。
あの日から六大陸連盟の設立に向けて世界が本格的に動き出した。
とは言ってもすでに水面下で十分に調整を行なっていたので俺がやることは少なかった。
クリムと一緒に傲慢の国に行き、ハザナワ商会の社長に計画のゴーサインを出す。
そして、俺とクリム、ハザナワ商会の社長の3人で傲慢の国の王、つまりクリム王子の父に六大陸連盟の設立や新大陸移住の計画について説明する。
父である王に対し、クリムが真剣に話をし、俺とハザナワ商会の社長は必要に応じて説明を加えるという形式にした。
息子が魔族の将来について熱弁する姿を見て、国王は満足そうに頷いた。
それから、ハザナワ商会の社長は水大陸と風大陸に、俺は土大陸と火大陸に計画が動き出したことを告げて回った。
傲慢の国王とクリム王子には魔大陸をまとめることをお願いしていた。
すでに憤怒の国などいくつかの国には根回しが済んでいたのでスムーズに事が進んだようだ。
最後に聖大陸で、我らが人族の王に六大陸連盟の設立と参加について説明を行った。
その際はドワーフ王国のゾゾゾゾゾゾ王と、エルフの実質的な最高権力者であるムリアーテが同伴してくれた。
ハザナワ商会経由で届いた水大陸と風大陸からの同意を示した書類も持参した。
もともと断る理由もないはずだが、外堀を埋められた上での話ということで国王は同族である俺の方を不愉快そうに見ていた。
この2年余り世界中を回ってアベル・コンサルティング社の仕事をしながら六大陸連盟設立と魔族の新大陸移住の計画の調整をしてきたので、自分の本拠地である聖大陸への根回しが遅れてしまったことを俺は反省した。
それでも、国王は六大陸連盟の設立と参加に同意してくれた。
そして、今日。
ついに六大陸連盟が始動する。
各大陸からひとりずつ常任理事と呼ばれる代表者を出し、その6人による会議により六大陸連盟は運営される。
その中のひとりが議長となるが、初代議長に魔族の王子であるクリムが選ばれた。
ちみに火大陸から選出された理事は、前国王であるゾゾゾゾゾだ。(国王でなくなったので名前がゾゾゾゾゾゾからゾゾゾゾゾに変わった。)
彼は六大陸連盟の設立が決まったあとすぐに娘のププ王女に王位を譲り、自身は六大陸連盟の設立のために尽力してくれた。
そして、自ら火大陸の、ドワーフ族の代表者として六大陸連盟に参加した。
ドワーフ族の王であった彼の協力的な行動により、火大陸はもちろん他の大陸でもこの六大陸連盟を重要視してくれる人間が増えた。
俺やクリムが彼の協力に対し礼を述べると「なあに、王位を退いて暇での。ボケ防止にちょうどいいわい」と笑っていた。
ひとり娘のププ王女が今年で19歳のはずだから、まだボケるような年齢でもないのだが、彼なりの照れ隠しなのだろう。
さらに言うと、説明が最後になってしまった聖大陸へのご機嫌取りという政治的な意味合いがあって聖大陸に近い火大陸に六大陸連盟の仮の拠点を置いたのだが、それもゾゾゾゾゾ前王への配慮という隠れ蓑を得ることができた。
本当に彼には頭が上がらない。
また、六大陸連盟の拠点には代表者6人以外にも事務を行うスタッフが数十人、また代表者たちの護衛がそれぞれに数人ずつ付いている。
スタッフのまとめ役にはエルフ族のラウールに就いてもらった。
土大陸の最大地域であるイベルクの責任者であるムリアーテの補佐として評価の高かった彼なら問題なく業務を遂行してくれるだろう。
すでにこの9ヵ月の間に六大陸連盟のルールづくりなどでその有能さを他のスタッフたちに証明しており、一目を置かれる存在になっていた。
ラウールを引き抜かれムリアーテは泣き言を口にしていたが、土大陸の方は問題ないだろう。
3年前に最大地域のイベルクが第3位のソベルタ地域を吸収したことをきっかけに土大陸の勢力図は大きく変容した。
紆余曲折あって、結局はイベルクを土大陸の政治の中心として各地域がまとまることになった。
そのため、現在では各地域から優秀な事務方スタッフがイベルクに集まり、ムリアーテをサポートしている。
ラウールの抜けた穴もきっと埋めてくれることだろう。
そのラウールが主導して準備が進められた六大陸連盟の創立記念式典が現在、行われているはずだ。
各国が表立って動き出した時点で六大陸連盟の設立や運営に口を出す立場から俺は退いた。
俺よりも優秀で経験のあるスタッフたちがクリムを支えてくれているだろう。
なので式典にも参加することなく、3年ぶりに新年を家で家族と迎えていたのだった。
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