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女勇者の父、リュウジンと手を組む

この世界は神々がゲームを行うボード盤で、勇者と魔王の戦いはその駒でしかないという話をリュウジンから聞く。

いや、勇者と魔王は神々の駒となった人々によって戦いの流れに導かれるだけの存在だと言うのだ。


「神々のゲーム……そんなくだらないことで、俺の娘は命の危険に晒されようとしているのですか!?」


思わず大きな声が出る。






娘のルナが生まれてすぐのことを思い出す。

ルナが勇者であることを伝えるためにケビンが俺たちの家を訪ねてきた数日後のことだ。


「ルナが……私たちの娘が勇者だなんて全く信じられないわよね。」


おっぱいを飲み、うんちをして、今は力尽きたようにゆりかごで眠るルナの顔を見ながら妻のアンジェリカが呟いた。


「ああ、本当に。正直、ルナが生まれてきてくれたこと自体、まだふわふわとして実感が湧かないっていうのにさ。いきなり『お前の娘は勇者である!』なんて言われてもな。」


その頃は、目の前で眠る赤ん坊を実際にお腹で10ヵ月育ててきた妻と違い、俺には親となった自覚が足りていなかった気がする。

娘を抱き上げれば父となった嬉しさや気恥ずかしさが生じるのが半分、あとの半分は必死に『お前はこの子の父親なんだぞ。しっかりしろ!』と自分に言い聞かせていた。


「俺はルナに英雄になってほしいなんて思ってないんだけどな。この子が健康で、いや病気や怪我をしたっていいからこの家で笑いながら育ってくれればそれで充分なのに。」


「でも、この国が魔王に狙われて、それを救えるのがルナだというのなら親としてはやっぱり胸を張って送り出すべきなのかしら?」


「そうなのかもな。勇者という運命を背負って生まれた以上、俺たちも全力でサポートしてやらないとかな。」


「なんて、意外と予言とやらが間違いだったなんてこともあるかもしれないわよね。だってこの子、まだ生後1週間なのよ。世界を救うどころか自分でゲップもできないんだから。」


「そうだな。もう少し大きくなって本当に勇者らしくなったら考えればいいか。」






「何が『勇者という運命を背負って生まれた』だよ……神のゲームのキャラクターに選ばれただけじゃねえか!」


全ての親にとって自分の子供は特別な存在だろう。

正直なところ、ルナが勇者と告げられて自分の娘がこの世界にとっても特別な子供と分かり鼻を高くした。

しかし、蓋を開ければ勇者は神が暇つぶしに行うゲームの道具でしかなかった。

娘が勇者であることに少しでも優越感を抱いていた自分をぶん殴りたい。


「こんなゲームを行っている神々は人の命を何だと思っているんですか!?」


俺は怒りの矛先をリュウジンに向けてしまう。

完全な八つ当たりだ。


「人の命も、奴らにとってはゲームのチップ程度の感覚なのかもしれんな。」


「あんたも神なんだろ!?じゃあ、あんたにとっても俺たちの命はゲームのチップなのかよ!?」


丁寧に対応してくれているリュウジンに対し、一方で行き場のない怒りをぶつけてしまっている申し訳のなさを感じている自分もいるが、それでも声が荒くなってしまう。


「……アベルよ。お前は自分の子供の命をゲームのチップと割り切ることができるか?」


「できるわけないじゃないですか!」


「私とて、そうだ。この世界の全ての生命は私の子も同然。奴らの暴挙には憤りしかない。しかし、私は神に作られし人であり神々がいる神界に対し何かをすることはできないし、この世界の管理者である神として人への過度な干渉もできない。ただ、この龍の庵の中でだけはある程度の自由が許される。例えば、勇者の父親に知識を与えることなどだな。」


「だから、こうして俺たちを招いたのですか?」


神としての制約上、世界樹を通じてではできないが、龍の庵であれば話すことができる内容もあるというこだったのか。


「ああ、そうだ。アベルよ、私も手を貸そう。そして、今回の神々のゲームは我々の手で中止に追い込んでやろうぞ。」


ドラゴンの目をまじまじと見るのは初めてだが、その瞳は至って真摯だった。

俺はリュウジンが真剣に俺に救いの手を差し出してくれていることを悟る。


「ありがとうございます。ご協力に感謝します。」


俺は取り乱したことを恥じ、リュウジンに頭を下げる。


「礼などいらぬ。先ほども言ったが、私は直接手を貸してやることはできんのだ。実際に行動するのはお前たちだからな。むしろ、礼を言いたいのはこちらの方だ。」


「必ず神をギャフンと言わせてやりましょう!」


ここから更に現在の魔王側の様子や、人族の中の誰が神から予言を受けているのか確認したいが長くなりそうなのでリリに話を振る。

リリにも聞きたいことがあるはずだ。


リュウジンの子とは何なのか?

リュウジンの子にはどんな力があって何ができるのか?

リリは本当にリュウジンの子なのか?

リリだけがリュウジンの子なのか?

『子』ということは、リュウジンは親なのか?

だとすればもう一方の親は?


俺が気になることだけでも軽くこれだけ思いつく。

当事者であるリリ本人なら尚更たくさんあるだろう。

先にそちらの話を済ましてもらうとしよう。


「この話は一度置いておいて、リリの方で聞きたいことを確認させていただきましょう。」


「うむ。リリよ、何でも聞くがよい。」


「私が、馬に嫌われるの、リュウジンの子、だから?」


「そうだ。龍の血が馬や犬のような哺乳類を怯えさせてしまうのだろうな。」


「そう。」


確かにリリの出身である火大陸でもリリは馬が言うことを聞いてくれないから馬に乗ったり、馬車を運転したりすることができないと言っていた。

オアシスの街に行った時はラクダにも恐がられていたな。

そうか、あれもリュウジンの子の性質だったのか。

前世で馬を食い過ぎたんじゃないかなんてからかってすまなかったな。


リュウジンの答えを聞いて、リリは納得した顔で頷いている。

黙っているリリに俺は次の質問を促す。


「他にも聞きたいことあるだろ?どんどん聞いていいんだぞ?」


「……別に、ない。」


(いや、あれよ!)


俺は椅子から転げ落ちそうになる。

自分の出生の秘密を知るチャンスなんだぞ。

もっと聞くことがあるだろ!

ヤキモキしている俺に、リュウジンが助け舟を出してくれる。


「ふふふ、アベルたちも気になっているだろうし、リュウジンの子についても少し話をするとしよう。」


そうして、リュウジンが『リュウジンの子』について話し始めた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


ラムネラブ様、レビューをいただきありがとうございました!

素敵なレビューで思わず「本当にこの小説のなのか?」と二度見しましたw


新たにブックマークいただいた方々もありがとうございます!

皆様のブックマーク、評価、感想、レビュー、閲覧が筆者の活力になります!

これからもよろしくお願いします。

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