女勇者の父、ヨットを借りる
(帆走)ヨット=小さい帆船
という定義でお読みください。
私も船の種類にはあまり詳しくなく、間違っていたらすみません。
ハザナワ商会でカッツォーと会って2日。
リュウジンの住む龍の庵に行くための準備は順調に進んでいる。
すでに港の中にあるハザナワ商会の所有する船着き場の一角には4人が余裕で乗れる帆走ヨットと呼ばれるタイプの船が用意されている。
ピンク色のヨットの船体には『ハザナワ商会土大陸支部00号』と記載されている。
これはハザナワ商会土大陸支部の所有物で、特にハナァーコとカッツォー専用機という意味であり、『00号』は『ラブラブゴー』と呼ぶと聞いてもいないのにハナァーコが自慢気に教えてくれた。
夫婦仲がよろしいことで。
中年になっても熱々なふたりを見ていると、俺も妻のアンジェリカに会いたくなってしまう。
聖大陸で元気でやっているだろうか。
王国騎士団がそれとなく警備してくれているし、サミュエルが来た時になんの話もなかったということは平和に暮らしているのだろう。
炎天下で汗まみれになったカッツォーが出航に向けて『00号』の点検をしている。
普段からハナァーコにせがまれてふたりで海に出ているらしく、きちんと手入れはされているようだ。
本来であれば所有者である2人以外の者をこのヨットに乗せるのはあり得ないらしいが、神の住処に行くならばとハナァーコが特別に貸してくれたのだ。
俺としてはもう少し大人しい色合いの船が良かったのだが、他の選択肢は用意されていなかった。
「修理するって言ってもお金は僕に直接渡してもらえるわけじゃないんだよね。それならこのままでもいいかな。」
経費をちょろまかすことを諦めたカッツォーは、ヨットの状態に問題ないという判断をしたようだ。
「じゃあ、明日の出発に変更はないんだな?」
「うん、問題ないよ。それよりもさ、お金貸してくれない?今回の報酬をもらったら返すからさ。船を出す前の夜は安全を祈願してお酒を飲むってジンクスがあってね。」
「ははは、残念ながら俺も文無しだよ。今はパーティーの会計はリリに任せているんだ。」
そのリリはハザナワ商会で待機している。
必要な物があったらすぐに準備できるようにということと、カッツォーに直接お金を渡さないためだ。
今頃はハナァーコとサザァーエさんの3人で優雅にお茶会でもしているのだろう。
なので、カッツォーについてきたのは所持金ゼロの俺とガルウだけだ。
「しょうがないのう。喉が渇いたならこれでも飲め」
陸からガルウがヨットの上のカッツォーに向かって水筒を投げる。
港に来る前にカッツォーと合流するため(ちゃんと仕事をするか見張るためともいう)ハザナワ商会に寄った時にハナァーコが持たせてくれたもので、中身は酒でなく水だろう。
「せめて船酔いでもすれば水でもお酒を飲んだ気になれるんだけどなあ。」
水筒をキャッチしたカッツォーがぼやく。
波で緩やかにヨットが揺れているが、残念ながらこの程度では酔うことはできないだろう。
「そういえば、リュウジンってのは神様なんだろう?美味しいお酒を持ってたりするのかな?」
ハザナワ商会までの帰り道もカッツォーは酒とギャンブルと、たまにハナァーコについてしゃべり続けた。
そして、翌日。
俺たちはいよいよリュウジンの待つ龍の庵へと出発する。
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