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女勇者の父、世界樹について知る

神様は最初にこの世界の土台を作りました。


次にその土台に1本の大きな木を植えました。


その木の葉には世界で起こる全ての出来事が記されます。


神様は天界にいながらそれを読み、この世界で何が起きているかを知ることができるようにしたのです。


その後、神様は5つの大陸を世界の土台に置き、海を作りました。


やがて、大陸には草木が生え、虫や鳥、動物が生まれました。


世界樹の幹は海に沈みましたが、神様の不思議な力で海水によって枯れることはありませんでした。


海面から顔を出していた枝々の間に風で運ばれた土が積もり、長い年月をかけて陸地になりました。


渡り鳥が種を運び、その陸地に様々な草木が生えます。


そして、草木の蜜や実を求めて虫や鳥が、やがて他の動物も住み着くようになりました。


最後に神様は各大陸に人間を誕生させました。


その中でもエルフ族には世界樹を守る役目を与えたのでした。




***


ムリアーテが教えてくれたごく限られた一部のエルフ族にのみ伝わる話だ。

ほとんどのエルフはバウルディールと同じように土大陸のどこかにある1本の大枝のことを世界樹の全てと信じているそうだ。


「ここで言う神は人族や魔族が信仰するものに近いのでしょうね。エルフ族はその役目から世界樹そのものを神聖化し、やがて土大陸、そして自然そのものを神として扱うようになりました。」


エルフ族は自然を、ドワーフ族は火山を崇拝している。

それに対し俺たち人族や魔族には目に見えない()を崇める宗教がある。


「世界樹の管理を神から任されたエルフ族には一世代に数人、世界樹と精神的に繋がることができる『神官』と呼ばれる者が生まれるようになりました。世界樹の状態を知り、管理しやすくすることが目的と思われますが、その副産物として世界樹の葉に書かれた情報を読むこともできるようになったのです。」


「しかし、リュウジンという存在によってエルフ族が自分たちのためにその能力を利用することは禁止された……と。」


俺たちが捕まえた犯罪者バウルディールから聞いたことだ。


「よくご存じですね。そして、自分たちが情報を利用できないなら他の種族にも使わせたくないという心理が働いて世界樹のことはエルフ族の中だけの秘密となったのです。」


そんなエルフ族を浅ましいと恥じているのか、自嘲気味にムリアーテが呟く。


「俺がエルフ族でもそうしますよ。世界樹の力は強すぎますから。」


「ありがとうございます。そう言っていただけると少しだけ気が楽になります。さて、土大陸そのものが世界樹である証として、この大陸の上ならどこにいても世界樹の神官は葉から知識を得ることができます。そして、世界樹の神官はこのナラーシャの里にもいます。」


ムリアーテは視線でラウールに合図を送る。

その場で深くお辞儀をしてラウールは扉を開ける。

扉の向こうにはムリアーテよりもさらに深い緑色の髪をした美しいエルフ族の女性が立っていた。


「アーリャ……。」


ガルウが義理の妹の名前を口にした。

アーリャと呼ばれたエルフ族の女性の陰から小さい男の子が飛び出し、ガルウに抱きつく。


「ガリューおじさん!」


ガルウの甥っ子のグルーリャだ。

彼のことは屋敷の外でガルウと遊んでいる姿を見たことがあったので知っているが、その母親であるアーリャを見るのは初めてだ。

アーリャはここナラーシャの副里長のムリアーテの娘でもある。


「すでにご理解いただいていると思いますが、先ほど申し上げたこの里にいる世界樹の神官というのが私の娘、アーリャです。すでに他界しておりますが彼女の母、つまり私の妻も神官でした。世界樹の神官の能力は長子に、男女関係なく受け継がれるようです。」


「それでアーリャさんとグルウさんの間に生まれた子がハーフエルフだった場合には帰ってくるように約束させたのですね。」


ノアの言葉にムリアーテが頷く。


「ええ、そうです。おそらくグルーリャにも神官としての才能が受け継がれていることでしょう。それが発揮されるのはもう少し先のことと思われますが。幼い頃から世界樹の近くで生活しなければ神官としての能力が目覚めないかもしれなかったので彼には風大陸からナラーシャまで来てもらいました。」


「それが父親と離れて暮らす理由として十分かはワシには分からんがのう。」


足にじゃれついていた甥っ子を抱き上げガルウが呟く。


「まあ、当のグルウが文句を言わんのじゃからワシもこれ以上は言わんが。」


「私の家の問題にあなたのご兄弟を巻き込んでしまったことは心苦しく思っております。できればこの屋敷にご招待したいところなのですが、体調が優れないということでお断りされてしまい残念です。」


ムリアーテがこうして土大陸で大きな権力を持っているのもアーリャやグルーリャの世界樹の神官としての能力が関係するのかもしれない。

家の問題という言葉に俺はそんなことを想像した。


(生まれながらに何かしらの役目を与えられているのは俺の娘と同じだな。)


俺は彼と、そして俺の娘のルナ、ノアの娘のリズの幸せを祈らずにはいられなかった。

最後まで読んでいただきありがとございます!


今日も短めです。

すみません!


明日の更新は文章のストックがないためいつもより遅くなるかもしれません。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 世界樹……大陸規模のスケールとは……デカイ。これは樹木と認識しているけれども、実は植物とかではない可能性が?星のシステム的な機関とか?そういえばケビンが予言のシステム、とか言ってたような………
2020/07/05 10:48 退会済み
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