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女勇者の父、会話をする

案内人のルディことバウルディールの故郷ラフティーリャまでは森の中を徒歩で2日。

移動中はずっとルディが何かしら話をしていたので退屈はしなかった。


ライトグリーンの短髪が似合う爽やかなエルフ族男子のルディはソフィアの装備を見て彼女に話を振る。


「いやあ、ソフィアさんの青い髪がミスリルの鎧の白銀に映えて美しさをより際立たせてっるすね!ご結婚はされてるんすか?えっ、まだ!?じゃあ、おれなんてどうっすか?ダメっすか。おっと、ソフィアさんの背中の剣は随分大きいっすねえ。さては、腕前の方もかなりのモノと見ましたがどうっすか?あ、でも、森の中じゃ大きい武器は扱いにくそうっすね!」


今度はノアの持つ人族の魔術師が好んで携帯する杖を見て、魔法談義を交わす。


「ノアさんは人族の魔術師っすね!人族の魔法とエルフ族の魔法って違うって聞いたんすけど、どう違うんすか?」


「人族の魔術師は自分の中の魔力というエネルギーを変換して魔法を作ります。だから、望んだ性質、火とか水とか風とかをいつでもどこでも使うことができます。一方、エルフ族の魔法は自然界に存在する精霊の力を具現化するものです。ですから、川の近くなら水の魔法、森の中なら土や植物系の魔法といったように使用する場所によって魔法の強さや使用そのものに制限がかかってしまいます。ただし、自身の魔力を使う人族の魔法と違って使用量に限度はありません。」


どこでも好きな性質で最強の強さで扱えるが、魔力が尽きると使えなくなる人族の魔法。

存在する精霊の種類によって使える種類と威力に制限がかかるが、使い放題のエルフ族の魔法。

どちらも一長一短のようだ。


「ふむふむ、人族の魔法には魔力が必要で、魔力が尽きると使えなくなっちゃうんっすね。いやあ、ノアさんって博識っすね!やっぱり眼鏡をかけている人って知的なんすかね?」


「眼鏡をかけていることが知識や思考能力と関係しているかというのは統計的なものも含めて調査をしてみないと分かりませんが僕はそこまでの相関はないと考えています。そもそも眼鏡をかけている理由というのも複数ありますからね。主に視力の低下ですがその原因ですらひとつではないのです。いいですか……」


ノアは眼鏡と頭の良さというテーマになると急に饒舌になる癖がある。

俺とソフィアはこの4ヵ月の旅の中ですでに経験して知っているが、初めて見たルディ、リリ、ガルウは呆気にとられている。

ノアは普段から質問をすれば丁寧に説明してくれるし、会話も普通に参加はしているのだが、魔術師という響きのせいかなんとなく物静かなイメージがあったのだろう。


「ちゃんと聞いていますか、ルディさん!?」


「は、はいっす~!」


さすがのしゃべり好きのルディもいきなりノアに会話の主導権を握られ困惑している。

もはやノアが一方的にしゃべっているので会話ですらないような気もするが。

ルディは助けを求めるようにリリに話を振る。


「えっと、リリさんの槍も素敵っすね!リリさんはドワーフ族っすから、やっぱり持っているモノも質が良さそうっすね!」


「別に、普通。」


「いやいや、全然普通じゃないっすよ!あ、ドワーフ族にとっては普通ってことっすか?でも、他の種族から見たらやっぱり素晴らしいっすよ!こんな素晴らしい槍を使うリリさんの腕前もやっぱり素晴らしいんすかね!?」


「別に、普通。」


「もう、リリさんってクールすぎるっすよ!それともおれのこと嫌いっすか!?」


「少し、嫌い。」


「ちょっと!そこも『別に、普通』っていうところじゃないっすか!?それが笑いってモンすよ!ね、アベルさん!?ていうか『少し嫌い』ってなんでっすか!?おれが五月蠅いからっすか!?」


「そう。分かってるなら、静かにして。」


「かーっ、リリさんクールすぎるっす!アベルさ~ん、リリさんのクールな仮面が剥がれるくらい苦手なモノとかないんすか~?」


「知らん。あったら俺が教えてもらいたいくらいだ。」


ルディは取り付く島のないリリからガルウに話し相手を変えるようだ。


「ガルウさんは体が大きいっすねえ!やっぱり鍛えてるんすか?エルフ族は筋肉がつきにくい体質らしくてトレーニングしてもガルウさんみたいにムキムキの肉体にはなれないみたいなんすよね。だから、ガルウさんの立派な肉体には憧れちゃうっすよ!」


「ガハハ!そうかそうか。しかし、ワシも特別なトレーニングなどしたことはないぞ。軍には所属しているが、この筋肉は実家で農業をしてた頃からのモンじゃ。」


「農業でその肉体っすか!?やっぱりエルフ族と他種族じゃ筋肉の付き方が違うんすねえ!」


いや、獣人族が……違うな、ガルウだけが特殊なんだと思うぞ。

聖大陸でも農業をする獣人族はいるが、ガルウのように分厚い胸板を持ち、丸太のように逞しい腕をしている者はいなかった。


「ガルウさんって獣人族っすよね?獣人族には獣化っていう能力を持ってる人がいるって聞いたことがあるっすけど、ガルウさんもできるんすか?」


「おう、できるぞ。」


「身体能力が爆発的に上がるすよね?もう、ガルウさんが獣化しちゃったら絶対に無敵じゃないっすか!おとぎ話に出てくる魔王や勇者も裸足で逃げ出すくらいの強さじゃないっすか!」


失礼な。

逃げ出すも何もウチの娘は犬にはすぐに懐かれる方だぞ。

あ、ガルウは狼か。


褒められたガルウは「大したことはないんじゃがのう」と口では照れ臭そうに言いつつも、悪い気はしていないようで尻尾をちぎれんばかりに振っている。

やっぱり犬なのか、お前。


「どうせなら常に獣化しっぱなしって訳にはいかないんっすか?その方が最強じゃないっすか!」


「ガハハ!獣化は体力の消耗が激しくてのう。あまり長いこと使えないんじゃ。」


「あ、そうなんすか。ちなみに、どれくらいなら獣化していられるんすか?」


「分からんが、1分以上は獣化したことはないのう。」


「へえ、1分ですか。」


ルディはガルウとの会話も切り上げ、今度は俺に話を振ってくる。


「みなさん、すごいメンバーっすね!でも、このメンバーを纏めるリーダーのアベルさんがいちばんすごいんすよね?」


「いや、俺は大したことないんだ。この中の誰と戦っても勝てないよ。」


「そうなんすか?じゃあ、アベルさんはこのパーティーの頭脳担当とか?」


「いや、知識ならノアやソフィアの方があるんじゃないかなあ。」


「じゃあ、人格者なんすね!分かります!アベルさんから人の好いオーラが溢れ出ているのが見えるっす!」


「ルディの目、節穴。」


「なんで、リリがここで会話に入ってくるんだよ!ルディのことあんなに嫌がってたじゃねえかよ!」


「アベルさーん、はっきり言われると傷つくっす。」


そんなこんなで俺たちはルディの故郷にして、人身売買組織のアジトがあると目されるソベルタ地域との境界に近いラフティーリャの里に到着したのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


今回は今までの話と違って会話メインの回となりました。

まあ、会話というかひとりがひたすらしゃべってましたね。

筆者は書いていて楽しかったのでどうかルディのこと嫌いにならないであげてください。


評価をくださった方、ありがとうございました。

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