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活動休止した!

 私はノートパソコンを起動する。

 ディスプレイを見つめながら嘆息した。


 小説投稿サイトを開いて

 活動報告の欄に文字を入力していく。

 個人や団体・企業が特定されないように気を配りつつ、

 小説が書けない心理状態を正直に明かした。


 タイトルは『パワハラ受けてます。』でいいか。


 パワハラは身近にあるのだと付記しておこう。

 ここのWebサイトは若年層が多い。

 私の想定読者層には学生も含まれていた。


 彼らが社会に出て困ったとき、

 悩んでいるのは一人じゃないと知ってほしかった。


 まあレスポンスは来ないだろう。

 もしかしたら言い訳だと思われるかもしれない。

 私だったら「甘えるな!」と一喝しただろうし。


 そんな暑苦しいコメントも

 うれしいにはうれしい。

 だけど、

 もう充分がんばったはずだ。休ませてくれよ。


 そうノートパソコンを閉じると、

 万感の思いが走馬灯のようによぎった。


 高校生時代の思い出だ。


 そのときはルーズリーフにシャーペンで書いていた。

 小説を書いてるときはひとりぼっちだが、

 私が書いた小説は必ずだれかが読んでくれていた。


 上手だから、面白いからではないと思う。

 きっと人に恵まれていたんだ。


 いつしかアドバイザーも現れた。

 そして私の進むべき方向を示してくれた。

 彼と意見を戦わせながら書いていると、

 読者の輪が少しずつ広がった。


 その先にはWeb小説の世界があった。


 だけど、物足りなかった。

 ライバルの存在がほしかったのだ。

 そこに森口が現れた。


 森口は小説を書いたことがなかったが

 読書遍歴を聞いて、私は才能を感じた。

 私はナイーブな性格の彼を巧みに誘導して小説を書かせてみた。


 あまり面白くなかったが、

 技術指導を重ねていくうちに彼は頭角を表し始めた。


 やったと思う反面、

 私は自分の真の望みに気付いてしまった。

 偉大な作家ほど夭折(ようせつ)している。

 私もそれにならいたかったのだ。


 しかし私が存在した証をだれかに残してほしい。

 だから森口を育てたのだ。

 私が尊敬する芥川賞作家の村上龍も、

 芥川賞選考役員を退いた。


 これからは私達、若い世代ががんばる番だった。

 いや、私は生きるか死ぬか決めかねているから、

 私以外の若い世代ががんばる番だ。




 翌日、私は感動していた。

『パワハラ受けてます。』の記事に反響があったのだ。

 その一つひとつのコメントには心がこもっていた。


 コメント欄には書きたくないからと、

 メッセージ機能から安否を問う連絡もきた。


 私は本当にバカだった。

 レスポンスなんて来るはずがないって勝手に決めつけて。

 やっぱり私は才能には恵まれなかったけど

 いい人達に恵まれてるな。そう再確認した。

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