相談をした!
「もしもし、川島か?」
「お久しぶりです。波多野さん」
私は職場の元後輩に電話をかけた。
私の勤め先は自殺率やうつ病者の割合がトップクラスだ。
彼も精神疾患を理由に職を辞したのだった。
「いきなりどうしたんです?」
「ちょっと、相談したいことがあって」
川島は辞める前に心理カウンセリングを受けていた。
だからその臨床心理士を紹介してほしかったのだ。
「なるほど、そういうことでしたか」
事情を説明し終えると、
大変ですねと同情された。
「わかりました。紹介しましょう!」
そう快諾してくれる。
「ですが、カウンセリングだけでいいんですか?
労務関連であれば法律家に依頼したほうが……」
「それでいいんだ。診断書さえもらえれば、今度は会社にも圧力がかけられる。安全配慮義務違反(労働契約法第5条)だと言ってな。待遇改善を求めても、企業はその事実を隠蔽したがるから、もしも動かなければこちらにも手があると見せてやれる」
「徹底してますね」
「そうすれば、仮に退職しても傷病手当金がもらえたり、
失業手当がすぐにもらえるなどの特典もある」
「よっぽど森杉のことが嫌いなんですね」
「そんな悲しいことを言うなよ」
私は温度のない弁舌を披露した。
「大好きだ。なんなら結婚したいくらいだよ」
だからさ、と呟くように言う。
「社会的に抹殺してあげたいんだ」
電話を通じて、相手が引いているのを感じた。
「なんなら、人生も辞めてくれないかな」
余計なことを言いすぎた。
まあ、いいや。
例の臨床心理士の連絡先はもらった。
【白根節子】
その人は女性だった。